左手をスッと高くあげ、「すいません! 質問の前に僕から話させていただきます」という言葉で**羽生結弦**の北京2022記者会見は始まった。
大きな拍手で迎えられ、大勢の記者の前に姿を表した羽生結弦。2月14日17:30(現地時間)に始まった会見で、冒頭ですぐに司会者が記者からの質問を呼びかけたが、それをさえぎる形で羽生が口を開いた。
「正直こんなにたくさん集まっていただけるとは思っていなくて、いまとてもびっくりしています」
こう前置きすると、金メダルを獲得した**ネイサン・チェン**への賛辞や、大会の関係者やボランティアに対する感謝の気持ちを伝え、またリンクを作った人たちに対しても、「ショートプログラムのときに氷にひっかかってしまって、不運なミスだなというか、悔しかった部分ももちろんあります。けど、本当に滑りやすくて、跳びやすくて、気持ちのいい会場で、気持ちのいいリンクでした。この場を借りて感謝したいと思います」と、改めて氷の感触を思い出し、それを愛おしむような口調で挨拶した。
羽生が挨拶を終えると会場からは拍手が沸いた。ここからの会見では、羽生が挑戦し続けてきた4回転半ジャンプをはじめ、今後のスケートについて、次回のオリンピックについても話がおよんだ。
捻挫するも、満足の4回転半
言い訳と取られるのは避けたいとした上で、羽生はフリーの前日の練習で足を捻挫したことを告白。
「捻挫の程度も思ったよりもひどくて、普通の試合だったら棄権していただろうなと思います」とし、「(今でも)ドクターの方からももう10日は安静にしてねと言われている」と話し、当日の朝の公式練習でも痛みがおさまらず、痛み止めの注射を打ってフリーへの出場を決めた。
ただ、そんな中でもフリーでは最高の4回転アクセルができたと続ける。
「(怪我の痛みやショートでの悔しさを含め)いろんな思いが渦巻いた結果としてアドレナリンがすごく出て、自分の中では最高のアクセルができたと思います」
ジャンプのための技術を習得する中で、いろいろな思いに至ったことに触れ、「あのジャンプだからこそ綺麗だって言ってもらえるし、僕はあのジャンプしかできないし。だから絶対に思いっきり跳んで、思いきり高いアクセルで、思いっきり速くしめてというのを追求してきました。その結果としての、そのジャンプとしての最高点には、僕の中では辿り着けたと思っています」と話し、自身の4回転半、そしてここまでの道のりに胸を張った。
改めて感じた自分のフィギュアスケート
フリーから4日たった14日、羽生は再びリンクに立って練習を行った。その際に生まれた感情をこう語る。
「(怪我をしていることから)本当は滑っちゃいけない期間だったんですけど、どうしても滑りたいなと思って滑らせていただきました」
「スケートのことを本当に嫌いになることはたくさんありますし、フィギュアスケートってなんだろうってよく思いますし、僕自身、目指しているものがフィギュアスケートなのかってことも考えます。ただ今日滑って、今まで習ってきたこととか、小さい頃にやっていたこととか、スケーティングに関して色々やってみて、上手くなったなと思ったり、それがすごく楽しかったり。僕は僕のフィギュアスケートが好きだなと思えた今日の練習だったと思います」
リンクに立った感想をこう語ると、「靴から感じる氷の感触を大事にしながら滑りたい」と、これからの姿勢を改めて示した。