スピード感と“自転車の格闘技”とも呼ばれる迫力のあるレースで、見応え十分なBMXレーシング。2008年北京五輪から正式種目に採用され、国内での競争も年々激化してきている。ここでは世界で活躍するBMXレーサーの中でも、東京五輪での飛躍が期待されている男女5名を紹介する。
“自転車の格闘技” BMXレーシング
BMX(bicycle motocross:バイシクル・モトクロス)は1970年代のアメリカで、オートバイのモトクロスレースを子供が真似をしたことから始まった。2008年北京五輪から公式種目として採用されたBMXレーシングは、大小のコブがある1周350〜400mのトラックを8名で駆け抜ける疾走感あふれる種目。8名が一気にトラックを走るため、転倒や接触、空中でジャンプしながらぶつかることもあり、そのアグレッシブな展開から“自転車の格闘技”とも呼ばれている。
東京五輪では、男子24名、女子24名が出場する。24名の予選から8名に絞られて決勝を競う。2020年のトラックは、一般的なものよりも短い1周250mで、8mの高所にあるゲートから最大8人が一斉に坂を駆け下り、大きく起伏のあるコースで高々とジャンプを繰り返し、幾つかの傾斜の付いたコーナー(バーム)を抜けるというスピード感と迫力満点なレースが予想される。
男子注目選手:長迫吉拓、中井飛馬、吉村樹希敢
オリンピック選考に不可欠である強化指定選手に登録されている中でも、実績や最近の実力を加味すると、以下の3名が注目選手ということになるだろう。
長迫吉拓(ながさこ・よしたく)は1993年生まれ。MXインターナショナル所属。BMXレーシングとトラックの二刀流で、「日本人で最もメダルに近い」との呼び声が高い選手だ。日本選手権では、2011年から2015年まで5連覇を達成し、翌年は逃したものの、2017年に再び優勝。2018年に開催されたアジア大会では、日本史上初の金メダルを獲得した。直近のワールドカップにおいても、日本人男子最高位である総合23位と、世界的にも注目されている日本人選手だ。
中井飛馬(なかい・あすま)は2000年生まれ。日本体育大学荏原高等学校卒業。全日本ジュニアチャンピオン、アジアジュニア王者、ジュニア世界ランキング1位と、BMXジュニアで結果を残してきた若手有望株だ。昨年の全日本選手権においても、ジュニアで2連覇を達成した。長迫とともに、男子エリートの強化指定選手「A」に選出されている。
吉村樹希敢(よしむら・じゅきあ)。1993年生まれ。アジア人初のBMXオリンピック代表選手となった阪本章史が立ち上げたBMXブロチームGAN TRIGGERに所属する。14歳でカナダUCI世界選手権に出場、翌年の中国での世界選手権で6位入賞。2016年日本選手権では、長迫の6連覇を阻止し、優勝を果たす。また、同年のアジア選手権においても優勝し、全日本シリーズチャンピオンを獲得した。
女子注目選手:畠山紗英、丹野夏波
女子注目は強化指定選手「A」として登録されているのは畠山紗英、丹野夏波の2名。やはりこの2選手に注目だ。
畠山紗英(はたけやま・さえ)。1999年生まれ。日本体育大学所属。2009年にオーストラリアで行われたUCI世界選手権(10歳ガールズクラス)で、世界戦初優勝を飾ると、2011年デンマーク(12歳ガールズクラス)、2012年イギリス(13歳ガールズクラス)とUCI世界選手権を連覇。エリートに進んでも日本においてトップクラスの成績を残し続けた。昨年の世界選手権では残念ながら決勝進出は果たせなかったが、日本人最高位である15位を獲得した。
丹野夏波(たんの・かなみ)。2000年生まれ。白鵬女子高等学校卒業。8歳で出場した世界選手権で日本人女性初となる世界チャンピオンに輝いた。その後も2008年・2009年・2010年とUCI世界選手権年齢別クラスで、3年連続の優勝。昨年、ブエノスアイレスで行われた第3回ユースオリンピックでは、BMXフリースタイルで銅メダルを獲得と、2足のわらじで非凡なところを見せた。今年、女子ジュニアから女子エリートへと上がるため、畠山との直接対決にも注目が集まっている。
これまではなかなか結果が残せなかったが地元開催での飛躍に期待!
オリンピック種目として正式採用された2008年の北京五輪で、阪本章史選手が出場するも1/4決勝で敗退。2012年のロンドン五輪は男女ともに不出場、前回の2016年リオデジャネイロ五輪も長迫吉拓が1/16決勝で敗退と、なかなか世界との差を詰められていない。
東京五輪の選考条件としては、2020年6月2日付でのUCIBMX個人ランキングにおいて10ポイント以上獲得していることが掲げられており、次点条件として2019-2020年シーズンのBMXワールドカップ(2019年第1戦〜2020年第4戦)で1/4決勝に2回以上進出していることが必要となっている(次点条件を満たす選手が出場枠を超えた場合は、同ワールドカップ成績上位者)。これを踏まえても、過去のワールドカップやアジア大会の実績を考えると、男子では長迫、女子は畠山が最有力だろう。
BMXレーシングは、まだまだ認知度が低い競技。ただ、男女ともにレベルアップし、国内の競争も激化してきており、2020年東京五輪での飛躍も期待できる。あなたも代表選考となるワールドカップから2020年東京五輪まで、競技の行く末を追ってみてはいかがだろうか。