北京2022冬季パラリンピック開会式:10人の旗手について

いよいよ3月4日、北京2022パラリンピックの開会式が行われる。選手団を率いて入場する注目の旗手をピックアップして紹介しよう。

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(2018 Getty Images)

北京2022冬季パラリンピックの開会式は、人々の記憶に残る素晴らしいものになるだろう。世界46カ国から参加する選手たちの入場行進は、パラリンピックのハイライトのひとつだ。

国際パラリンピック委員会(IPC)の公式プロトコルにより、開催国の言語によって国・地域が入場する順番が決まる。今大会はベルギーが先頭となり、最後は中華人民共和国がパレードを締めくくる。

今回は、10人の旗手にスポットを当て、その知られざるエピソードを紹介したい。

アメリカ合衆国:ダネル・ウムステッド、タイラー・カーター

チームUSAは、北京2022の旗手としてアルペンスキー選手を選出した。ダネル・ウムステッドタイラー・カーターは、代表選手67人の中から多数決で選出された。

旗手のウムステッドには、夫のロブがガイド役として同行する。彼らはチーム唯一の夫婦で、2008年から共にスキーをしている。今回が4度目のパラリンピック出場となるウムステッドは、これまでにパラリンピック視覚障がい女子クラスで3度の銅メダルを獲得した。

彼女は、「本当に驚きました」とチームUSAにコメントしている。「チームの素敵な気配りによって私の夫を(旗手に同行という形で)参加させてくれました。私がしてきたことすべてにおいて、彼はそばにいてくれました。彼はとても誇りに思っています。これはとても光栄なことで、(抜擢されたことに)すごく驚きました」

2度のパラリンピックを経験したカーターは、現在米国オリンピック・パラリンピック博物館で働いている。

「ダネルと一緒に国旗を持てることは、とても光栄なことです」と、カーターはチームUSAにコメントした。

「私がアルペンスキー選手としてのキャリアにおいて未熟だったころ、彼女と数カ月間一緒に暮らしたことがあります。彼女は私を指導してくれて、私たちは親友になりました。彼女と並んで国やチームを代表して入場行進できるんです。その瞬間を共有するにおいて彼女以外に最高な人はいません」

(2018 Getty Images)

日本:川除大輝

21歳の大学生アスリート、川除大輝が旗手として日本選手団を率いて入場する。4競技に29選手が出場する日本選手団。2月に開催された北京2022オリンピックでは、日本は冬季オリンピック歴代最多となる総メダル数18個を獲得したが、その勢いをそのままパラリンピックにもつなげたいところだ。

2019年世界選手権のクロスカントリースキー20kmクラシカル王者で、同大会スプリントフリーの銅メダリストである川除も、自身2度目のパラリンピックで次世代の日本男子エースとして表彰台を狙う。

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(2018 Getty Images)

イタリア:ジャコモ・ベルタニョッリ

イタリアチームは、アルペンスキー選手のジャコモ・ベルタニョッリを旗手として選出した。ベルタニョッリは、平昌2018の男子視覚障がいで4個のメダルを獲得(金2、銀1、銅1)。ガイドで学友のファブリツィオ・カサルとともに、男子スラロームとジャイアントスラロームで優勝した。彼は技術的にとても優れたスキーヤーというだけでなく、高速系種目でもメダルを獲得するオールラウンダーだ。

23歳のベルタニョッリは、2016/2017シーズンにイタリアのタルヴィジオで初の世界タイトルを獲得。そして今は、7歳年上の新しいガイド、アンドレア・ラヴェッリとともにレースに出場している。

「アンドレアは、天性のコーチなんです。彼は怪我をするまで、ワールドカップで見るような選手たちと一緒に滑っていました。ファブリツィオが大学で忙しくなっていたため、(新しいガイドとレースすることを)私が決断しました。パラアルペンスキーのレベルが上がってきているなか、私が毎日トレーニングをしなければならないため、彼は多くのことをしてくれます」とベルタニョッリはsciaremag.itに語った。

「私はガイドと共に多くのことを勝ち取りましたが、私には変化が必要でした。私が(ファブリツィオと共に)獲得したすべてのメダルの経験の後に、この変化をすることができて満足しています」

フランス:バンジャマン・ダビエ

北京2022のフランス選手団旗手という栄誉をバンジャマン・ダビエに与えるという決定は、彼の模範的なキャリアに対する報奨だった。サヴォワ出身の32歳のダビエは、困難に立ち向かう力、忍耐力、そして分かち合いの精神というパラリンピックの価値を体現している。彼は、バイアスロンとクロスカントリースキーの2競技で世界選手権19個のメダルと、冬季パラリンピックで6度の表彰台にのぼるという素晴らしい記録を打ち立てている。

2006年7月、17歳の時に原付バイクで事故に遭い、左ひざを骨折して手術を受けることになったのが、ダビエの人生を大きく変えた。

手術後「黄色ブドウ球菌」に感染し、軟骨と関節を食い荒らされてしまったことにより、現在は左足を曲げることができない。

彼はその時すでにアルペンスキー、クロスカントリースキー、サッカーなど幅広い趣味を持つスポーツ青年だったが、2010年に叔父のスキーを履くまで、数年間スポーツから遠ざかっていた。しかし、この決断からわずか数ヵ月後、ダビエはフランスチームに入り、パラリンピックのLW2カテゴリーに出場を果たしている。

(Naomi Baker/Getty Images)

アルゼンチン:エンリケ・プランティ

11歳から車いすを使用しているエンリケ・プランテイは、アルペンスキー選手として39歳で3度目のパラリンピックに挑む。

アルゼンチンの旗手である彼は、障がいを持ちながら、デートやセックスをすることについて話をしていくというタブーを打ち破るという使命も担ってきた。10年来のガールフレンドである看護師のティアナ・セファティと共に、彼らはこれらの厄介な質問などに答えられるように、本を出版しインスタグラムのページを立ち上げた。

「性的タブーや障がい者タブーなど、タブーが溢れています」とプランテイは言う。

「17歳の男の子がふたりいて、2人とも障がいがあるのですが、どうしたら『できる』のかと聞いてきました。彼らはたくさんの質問があって。彼らは、私たちが共感してくれると思ったから、話したがったのです。彼らはまだ17歳。人生の中で、自分自身を探求し、多くの質問をし始める時期なんです。ある男の人は、『どうやったら車いすで公園に行って女の子に話しかけられるんですか』と聞いてきました」

カナダ:イナ・フォレスト、グレッグ・ウェストレイク

カナダの旗手を務めるイナ・フォレストグレッグ・ウェストレイクは、パラリンピックで大活躍し成功を収めている選手だ。フォレストは車いすカーリングで3度のパラリンピックメダルを獲得しており、ウェストレイクは、カナダで最も輝かしい功績を残したアイスホッケー選手のひとりだ。

パンデミックに見舞われた後、2人は中華人民共和国でのパラリンピックに間に合ったことに安堵していた。国家体育場で国旗を持って行進するという名誉ある大役に選ばれたことを知ったのは、コロナ禍で伝統的なコミュニケーション方法となったビデオ通話でだった。

TSNによると、「ストレスを感じました」とウェストレイクは語ったという。「ストレスなんてなかったと嘘をつくこともできたけど、そんなことはありませんでした。この大会の最大のチャレンジのひとつは、この大会にたどり着き、出場することだったんです」

「(でも、旗手に選ばれたことは)とても誇りに思います。このような名誉なことにとても恐縮しますが、チームメイトと開会式で行進することが、待ち遠しいです」

(Linnea Rheborg/Getty Images)

中華人民共和国:グオ・ユジ、ワン・チャイドン

"鳥の巣" のスタジアムに最後に入場するのは、開催国である中華人民共和国で、2選手が旗手を務める。18歳のグオ・ユジは、クロスカントリースキーのスプリント女子立位と、バイアスロン6km、10km、12.5km女子立位に出場する予定だ。

22歳のアイスホッケー(アイススレッジホッケー)選手のワン・チャイドンは、2021年世界パラアイスホッケー選手権でチームの重要な役割を果たし、トーナメントB優勝に貢献した。

(LingCheng Meng)
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