新型コロナウイルス感染症対策の一環として、競技大会会場などでの声を出しての応援が禁止されていたものの、春にようやく解禁され、さまざまな大会で応援席に活気が戻ってきた2023年。野球やサッカーなど、多くのスポーツファンが観戦を楽しみ、その声援はアスリートたちにとって力となったことだろう。
2023年の「新語・流行語大賞」のトップテンにランクインした「4年ぶり 声出し応援」は今年のスポーツ界全体を表現する言葉だ。パリ2024オリンピック予選を兼ねて沖縄で開催されたバスケットボール・ワールドカップでは、「声出し応援」を受けて男子日本代表がワールドカップで3勝をあげて48年ぶりに自力でのオリンピック出場を掴み取った(※)。
※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。 各競技の出場資格に関する公式資料はこちら。
流行語大賞のトップテンの受賞者として、日本バスケットボール代表「アカツキジャパン」が選ばれたことからも、男子日本代表がスポーツファンに感動を与え、社会に与えた大きなインパクトを知ることができる。
ここではそんなバスケットボールの2023年を、多くの人の心を動かした3つの「言葉」を軸に振り返ってみたい。
渡邊雄太「代表活動は最後にしようと思っています」
2023年夏は、日本のバスケットボール・ファンにとって忘れられない夏となるだろう。男子日本代表は、フィリピン、インドネシア、日本の3カ国で共催された4年1度のFIBAバスケットボール・ワールドカップで、アジア1位となり48年ぶりに自力でのオリンピック出場を獲得した。
その牽引役となったNBAで活躍する渡邊雄太(ゆうた)のこの言葉は開幕直前のファンの心に響き、選手たちを鼓舞したことは間違いないだろう。8月19日の国際強化試合後に行われた壮行会で渡邊は、「僕はこの代表として結果を今までずっと残せていなかったので、このチームでパリに行けなかった場合、僕はもう今回で代表活動は最後にしようと思っています。それぐらい本気で僕は今回の大会に臨んでいます」と宣言し、日本のファンに応援を呼びかけた。
その言葉は多くのファンの心を揺さぶったのみならず、選手たちの心にも火をつけ、ファンを含めた日本代表チーム全体がひとつとなった。そしてその後、男子日本代表は新たな歴史を刻むこととなる。
トム・ホーバスHC「ビリーブ 信じる」
そのワールドカップでは、渡邊をはじめ、パリ2024出場枠獲得を決めたカーボベルデ戦の直後にウィニングボールを渡邊に渡しにいった22歳の河村勇輝や、2月に日本国籍を取得したジョシュ・ホーキンソン、キャプテンの富樫勇樹、馬場雄大、富永啓生、比江島慎(ひえじま・まこと)など、それぞれがチームの中で役割を果たし、競技の面白さを伝え、チームスポーツの美しさで人々を魅了した。
そのまとめ役となったヘッドコーチのトム・ホーバス氏は、「信じること」の大切さを伝え続け、その哲学が選手たち、そしてファンにまで浸透。大会前には、「やはり信じて戦わなければ、終わってしまいます。私たちは勝てると信じています。アジア1位になる目標は簡単なことではありません。ファンの皆さんからもらったエネルギーを力に変えて、がんばります」とコメントした。
日本代表は主要国際大会で長らく勝利から遠ざかっていたものの、このワールドカップでは3勝をあげた。そのうちフィンランド代表との一戦では後半に最大18点のリードを許すも第4クォーターで逆転。ベネズエラ代表との試合でも第4クォーター残り8分、15点差をひっくり返して逆転勝利。自分たちの力を信じ、決して諦めない粘り強さで見事勝利を掴み取った。
髙田真希「そこには必ずリスペクトがある」
女子バスケットボール日本代表は、2024年2月のオリンピック予選トーナメントでのパリ2024出場枠獲得に向けた道のりの真っ只中にある。
その予選トーナメントを見据えた大会として、2023年10月に中華人民共和国・杭州で行われたアジア競技大会に主力メンバーで出場した。準決勝では大韓民国代表を下し、25年ぶりに決勝進出を果たすと、決勝では夏のアジアカップ決勝で敗れた中国代表と対戦。日本代表は完全アウェーの中で粘り強く戦い抜いたものの、最後は72-74で惜敗。アジアカップでの借りを返すことはできなかった。
しかし、メダルセレモニー後には、銅メダルを獲得した韓国代表チームも加わって3チームがそれぞれ互いを讃え合い、笑顔で記念撮影。女子日本代表を長年率いてきた髙田真希はその写真を自身のソーシャルメディアに投稿し、メッセージを添えた。
「ライバルは時として憎らしく壁となって立ちはだかる。だからこそお互い切磋琢磨し成長し合える。そこには必ずリスペクトがあります。スポーツの枠を超えても世界が平和である事を望みます」。
バスケットボールの2024年の主な大会など
日本男子バスケットボール代表チームは2023年のワールドカップを通じてパリ2024オリンピック出場枠を獲得し、次は女子がその枠を掴むべく戦いに挑むことになる。
女子バスケでは2024年2月にオリンピック予選トーナメントが世界の4都市(4大会)で予定されており、各大会の上位3チームがパリ2024の出場枠を得る。日本女子はハンガリー・ショプロンで、スペイン、ハンバリー、カナダと同組で戦う。
また3x3バスケットボールでは5月に日本でのオリンピック予選トーナメントが予定され、優勝チームがパリ2024出場枠を得る。
3x3日本代表チームがこの大会でオリンピック出場枠を得られなかった場合は、5月下旬にハンガリーで予定されているFIBAオリンピック予選トーナメントで出場枠獲得(トップ3以内)を目指す。
- 2024年2月8日〜11日 FIBA女子オリンピック予選トーナメント(4都市)
- 2024年5月3日〜5日 第2回 FIBA 3x3ユニバーサリティ・オリンピック予選トーナメント(日本・宇都宮)
- 2024年5月23日〜26日 FIBA 3x3オリンピック予選トーナメント(ハンバリー)
パリ2024オリンピック、バスケットボール競技の日程・会場
パリ2024オリンピックのバスケットボール競技は、開会式翌日の2024年7月27日(土)に予選ラウンドが始まり、8月6日(火)〜8月11日(日)に決勝トーナメントがベルシー・アリーナで実施される。