【陸上】2022オレゴン:過去最多タイ、4つのメダル獲得した日本...幅広い種目での活躍で今後に期待

オレゴン2022世界陸上競技選手権大会が7月15日から24日に、アメリカ合衆国オレゴン州において開催された。今回は4つのメダルを獲得した日本勢の活躍を振り返ろう。

文: 児玉育美

オレゴン2022世界陸上競技選手権大会が7月15日から24日に、アメリカ合衆国オレゴン州において開催された。

世界的な観点では、男子棒高跳におけるモンド・デュプランティス(スウェーデン)の6m21、女子400mハードルでのシドニー・マクローフリン(アメリカ合衆国)の50秒68、女子100mハードル準決勝でのトビ・アムセン(ナイジェリア)マークした12秒12など、驚異的といえる世界新記録が飛び出した。

また、アメリカが誇る名スプリンター、アリソン・フェリックスが現役最後のレースとして臨んだ男女混合4×400mリレーと女子4×400mリレーでの走りなど、名シーン目白押しの大会となった。

チームジャパンは、現地入りしてから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性反応が検出されるケースが多発し、欠場を余儀なくされる選手も出るなどの事態に見舞われた。だがその中で、出場した選手たちには健闘が光る結果が出ている。

男子20km競歩で金・銀、同35km競歩で銀、女子やり投で銅メダルと、合計4つのメダルを獲得。これは2003年パリ大会に並ぶ過去最多タイ。さらに男子4×400mリレー(4位)、女子20km競歩(6位)、男子100m(7位)、男子走高跳・男子20km競歩(8位)で5つの入賞を果たしたほか、また、男子4×400mリレーでアジア新記録(日本新記録)を樹立、男子35km競歩でアジア新記録(日本最高記録)、女子100mハードルと女子4×100mリレーで日本新記録、女子35km競歩で日本最高記録が誕生している。

ここでは、パリ2024オリンピックに向けて新たなスタートを切ったチームジャパンで、特に著しい躍進を示した選手を振り返っていくことにしよう。

◆北口榛花、女子フィールド種目で史上初のメダル獲得

今大会は喜ばしいことに「日本陸上界史上初の快挙」という言葉を何度も使う場面に恵まれた。その中でも“超弩級”といえる快挙は、大会8日目の7月22日、イブニングセッションにおいて成し遂げられた。女子やり投における北口榛花の銅メダル獲得である。

前々日に行われた予選でシーズンベストの64m32を投げ、全体トップの記録で待望の決勝に進出した北口。決勝では1回目に62m07を投げてトップエイト入りを確実にする。その後はやや伸びに欠ける投てきが続いて最終6回目の試技を5位で臨むことになったが、ここで渾身の1投を繰り出して63m27で2位に浮上した。

直後にカラ・ウィンガー(アメリカ合衆国、2位)に逆転されて3位に後退したが、以降の選手は北口の記録を上回ることができず、オリンピックも含めた世界大会で日本の女子フィールド種目として史上初となるメダル獲得を達成した。この種目では、今回が初の代表選出だった武本紗栄も決勝に進出して10位の成績を残した。

女子で2選手が決勝に駒を進めるのも初めてであったうえに、やり投では男子のベテラン・ディーン元気が決勝進出。男女ともに、来年以降の世界大会での活躍の期待を、大きく高める好成績となった。

◆「お家芸」の競歩は金1、銀2、入賞2と好結果

金メダル1、銀メダル2、入賞2(6位、8位)と、日本の全入賞者の半分以上を占める結果を残したのが男女の競歩。初日に行われた男子20km競歩で、前回ドーハ大会覇者の山西利和と東京五輪銀メダルの池田向希がマッチレースを繰り広げて「ワンツー・フィニッシュ」とした。

山西は世界選手権2連覇を、池田は世界大会連続銀メダルを達成。「競歩ニッポン」の強さを知らしめると、最終日に行われた男子35km競歩でも日本勢が活躍を見せる。川野将虎が、Tokyo2020の20km金メダリストのマッシモ・スタノ(イタリア)を相手に大激戦を展開。金メダルこそ1秒差で逃したものの、2時間23分15秒のアジア新記録(日本最高記録)をマークし準優勝。自身初の世界大会でのメダルを獲得した。

競歩では若手も著しい躍進を見せており、女子20km競歩では着実な成長ぶり女子のエースへと育ってきた藤井菜々子が前回のドーハ大会から1つ順位を上げる6位に入賞。男子20km競歩では、これが初の世界大会となった住所大翔が粘りのレースで8位入賞を果たした。

このほか男子35km競歩では野田明宏が8位と8秒差の9位と入賞ラインに肉薄。女子35km競歩でも、今回が初代表の園田世玲奈が2時間45分09秒をマーク。4月に自身が出した日本最高記録を35秒塗り替える大健闘の歩きで、8位と7秒差の9位でフィニッシュしている。

◆男子4×400mリレー、2003年以来の決勝進出&アジア新記録

長年、「4継」こと男子4×100mリレーが注目の的になっていた男子短距離、今大会ではロングスプリント陣の“赤丸急上昇”ぶりが目を引いた。男子4×400mリレーで世界選手権では、2003年パリ大会以来となる予選突破を達成。

最終日に行われた決勝では、佐藤風雅、川端魁人、ウォルシュジュリアン、中島佑気ジョセフのオーダーで上位入賞争いを展開。日本としては史上初の3分切りとなる、2分59秒51のアジア新記録(日本新記録)を樹立して4位でフィニッシュした。世界大会では2004年アテネ五輪以来となる入賞を果たすとともに、同大会での日本勢過去最高順位に並んだのだ。このメンバーのうち、佐藤とウォルシュは、個人種目の400mでも準決勝まで駒を進めている。

一方フレッシュな顔ぶれで臨んだ男子4×100mリレーは、残念ながらバトンパスの失敗(オーバーゾーン)により予選で失格を喫したが、男子100mではサニブラウンアブデルハキームが予選で世界大会における日本人初の9秒台となる9秒98をマーク。続く準決勝も突破して、世界大会では1932年のロサンゼルスオリンピックの吉岡隆徳(6位)以来実に90年ぶり、世界選手権ではこの種目の日本勢初の決勝に進み、10秒06で7位入賞を果たした。男子100mでは、素晴らしいスタートを見せた坂井隆一郎も準決勝に進出。男子200mでもベテランの飯塚翔太、リレーで3走を務めた上山紘輝が予選を突破して「セミファイナリスト」に名を連ねた。

このほか、「初」の快挙を成し遂げたのは、男子走高跳の真野友博。大会初日の7月15日に行われた予選で、日本チームの先陣を切る形でヘイワードフィールドのピットに立ち、安定した跳躍で初の世界大会出場ながら日本人初の決勝進出を果たす。決勝では2m27をクリアして、この種目で日本人として初の8位入賞を果たした。

一方、決勝進出や入賞にはとどかなかったものの、日本新記録の樹立を達成した者もいる。女子4×100mリレー予選では、青木益未、君嶋愛梨沙、兒玉芽生、御家瀬緑のオーダーで43秒33の日本新をマーク。最終日に行われた女子100mハードルでは青木益未と福部真子が揃って準決勝に進出を果たしたうえに、12秒12の世界記録がアナウンスされた準決勝第1組で、福部も12秒82(追い風0.9m)の日本新記録を樹立した。

◆3種目に果敢に挑戦した田中希実

そして、最後に、順位や記録としては形に残る成果を得られなかったが、見る者に強い印象を残した選手として、同一世界大会で3種目(800m・1500m・5000m)に挑戦した田中希実を挙げておきたい。

大会初日の7月15日に1500m予選を4分05秒30のシーズンベストで通過すると、2日目に行われた同準決勝はポジショニングのミスも出て、2組5着+2の進出条件のなか4分05秒59で6着となり、Tokyo2020に続く決勝進出はならず。大会6日目に行われた5000m予選は、15分00秒21をマークし、予選を通過した。

翌7日目の800m予選(2分03秒56、敗退)を挟んで、大会9日目の7月23日に最後のレースとなる5000m決勝に臨んだ。スタート直後は超スローペースとなった中、“世界と戦う”ことを意識しながらレースを展開した田中。徐々にペース上がった中盤以降では、懸命に粘ったが次第に順位を落とし入賞争いから脱落。15分19秒55の12位で、今大会5本目のレースを終えている。

すべてのレースを終えたあとは、瞳を涙でうるませながらミックスゾーンに現れた。その涙の理由を「今回の世界陸上は、目に見えてわかるタイムとか順位というものが、最後までついてこないまま終わるのではないかという恐怖があったのではないかと思う」と説明。今後の展望を問われると、「来年の世界陸上をどうするは未確定」としながらも、「“今回に懲りる”のではなくて、今回の経験があったからこそ、次につながるというふうにしたい」と述べた。「次は、逆に1つの種目に絞るかもしれないし、もう1回3種目でどこまで戦えるかやってみるかもしれない。そのときに、自分の心の向くほうに挑戦し続けたい」という言葉を残している。

◆パリ2024、2025年の東京での世界陸上へ向けて

日本にとって今回の大会は競歩や男子リレーだけでなく、新記録や上位ラウンド進出が出た種目がトラック&フィールドの各種目へと幅広く拡大した点は、今後に向けての好材料ということができるだろう。

折しも開幕前日の7月14日に同地で開催されたワールドアスレティックスのカウンシル会議において、2025年に開催される第20回世界選手権の開催地として東京が選定。Tokyo2020のメインスタジアムとなった国立競技場が、その舞台となることが決定した。

2023年のブタペスト世界選手権、2024年のパリ2024、そして2025年の東京世界選手権と毎年続いていく世界大会に向けて、選手たちがさらにどんな成長を見せていくかが一段と楽しみになる戦いぶりだった。

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