パリ2024まで2年…日本勢の活躍を展望する

執筆者 渡辺文重
1 |
Paris2024
写真: Getty Images

Tokyo2020夏季オリンピックから1年が経過。そして世界はパリ2024まで2年を迎える。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含め、世界状況は予断を許さないが、2年後の7月26日、聖火の光がパリをともすことを祈り、日本人の活躍を中心にパリ2024の展望を記す。

2024年7月26日、パリ2024夏季オリンピックは開会式を迎える。パリでオリンピックが開催されるのは第2回(1900)、第7回(1924)に続く3回目、100年ぶりとなる。フランスが一部の競技で開催国枠を得ているものの、聖火リレーの最終ランナーはもちろん、誰が出場するかも不明。Ogre(フランス語の鬼)もあきれることを承知で、2年後の展望を記す。

■ブダペスト、オレゴン、福岡からパリへ

オリンピックの前年と翌年に開催される水泳と陸上の世界選手権は、オリンピックのメダル争いを占う上で最も参考になる情報の1つだ。パリ2024の前年である2023年、世界水泳は福岡県福岡市、世界陸上はハンガリー・ブダペストで開催されるが、ここでは2022年に開催された世界水泳ブダペストと世界陸上オレゴンから2年後を予想する。

ブダペストから福岡へ

日本競泳陣がTokyo2020で獲得したメダルは3つ。大橋悠依の女子個人メドレー2冠と、本多灯の男子200mバタフライ銀となっている。やや物足りない結果に、世界水泳ブダペストではリベンジが期待されたものの、獲得できたメダルは花車優の男子200m平泳ぎ銀、水沼尚輝の男子100mバタフライ銀、本多の男子200mバタフライ銅、瀬戸大也の男子200m個人メドレー銅の4つ。金メダルはゼロに終わった。

アーティスティックスイミングでは乾友紀子がソロ2冠、フリーコンビネーション、チームテクニカル、チームフリーでメダルを獲得。男子10m高飛込では玉井陸斗が銀メダルと健闘しているものの、今回は参加しなかった国があることを忘れてはいけない。いずれにせよ、2023年の福岡が正念場となる。

オレゴンからブダペストへ

世界陸上オレゴンにおける日本の活躍は記憶に新しい。メダル獲得が求められる「お家芸」の競泳に比べ、期待のハードルが低いことを加味しても、男子競歩2種目で金1を含むメダル3つ、そして女子やり投で銅メダルを獲得した北口榛花は快挙と言える。

一方で、参加標準記録を突破した選手が現れず、エントリーすらできなかった種目があるなど、世界との差を痛感させられる場面も目立った。マラソンや短距離は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性などの不運に見舞われたが、2023年のブダペストでは、世界との差がさらに縮まっていることを望む。

■柔道団体、日本はリベンジなるか

Tokyo2020では日本が開催国という立場だったが、パリ2024ではフランスがホストになる。そこで日本とフランスがライバルとなっている競技に注目する。

フランスでも人気の柔道は?

アルゼンチン代表リオネル・メッシ、ブラジル代表ネイマールといったサッカー界のスーパースター擁するパリ・サンジェルマンが日本ツアー中の7月21日、講道館(東京都文京区)を訪問。フランス代表キリアン・エムバペら7選手が柔道を体験したのだ。このように、柔道はフランスにおいても人気競技の1つとなっている。

フランスの英雄、テディ・リネールにとってTokyo2020は不本意なまま終わろうとしていた。柔道男子100キロ超級の絶対王者とたたえられながらも準々決勝で敗退。3位決定戦で原沢久喜を退けて銅メダルを獲得したものの、オリンピック3連覇を逃したショックは大きかったはずだ。しかし32歳のリネールに、思わぬ形でリベンジの機会が訪れる。Tokyo2020の新種目・柔道混合団体のメンバーとして金メダルを獲得したのだ。

オリンピック2連覇の大野将平もリネールも、まだパリの畳の上に立つ権利を得ていない。それでも日本にとって、パリが雪辱の舞台になることは決定している。

フェンシング、自転車、サッカーも注目

日本とフランスの対決という点では、フェンシングや自転車、サッカーも注目だ。これらの競技はフランスで人気が高く、日本勢の活躍が期待されているからだ。フェンシングはフランス発祥で、自転車トラックのケイリン(競輪)は日本発祥。自転車ロードレースにおいて「ツール・ド・フランス」は絶対的な人気を誇る。サッカーについては、パリSGが国立競技場(東京都新宿区)に6万人以上の観客を集めたことを例に挙げるまでもない。

Tokyo2020のフェンシングでは、フランスが男子エペ個人と男子フルーレ団体で金メダルを獲得。日本は男子エペ団体を制した。日本、フランスとも2021年の世界選手権カイロ大会で好成績を残しており、パリ2024でも熱戦が期待される。Tokyo2020の自転車トラックは、フランスが男子チームスプリントと男子マディソンで銅。日本は女子オムニアムの梶原悠未が銀を獲得。サッカーは、男子が大岩剛監督率いるU-21日本代表、女子は池田太監督率いる「なでしこジャパン」が、それぞれ出場を目指す。一方、エムバペはチームメイトのメッシ(北京2008金)やネイマール(リオデジャネイロ2016金)に刺激を受けており、オーバーエイジで出場したいとの意向を示している。

■サーフィンはタヒチ開催、そして新競技のブレイキン

Tokyo2020の競歩やマラソンが北海道札幌市で行われたように、開催都市以外で実施される種目があることは珍しくない。しかし、パリとタヒチでは、全く異なる印象を受けるはずだ。実際、パリ出身の画家ポール・ゴーギャンも、新たなインスピレーションを得るため、タヒチへと旅立っている。

Tokyo2020で初採用されたサーフィンはパリから1万5700キロ、フランス領ポリネシアのタヒチ島で行われる。釣ヶ崎海岸(千葉県一宮町)で銀メダルを獲得した男子の五十嵐カノア、女子銅メダリストの都筑有夢路ほか、日本勢も活躍が期待される。

パリ2024の新競技はブレイキンのみだが、この競技でも日本人が優勝候補に挙げられている。2021年の世界選手権パリ大会で、男子のSHIGEKIX(半井重幸)とTOA(俣野斗亜)がグループリーグ(トップ32)に進出。女子のAYUMI(福島あゆみ)は金メダル、AMI(湯浅亜実)が銀メダルを獲得している。

来年や来月、明日のことすらも不透明な世界情勢だが、2024年の今日、聖火がパリで燃えていることを願う。