世界選手権の準決勝、アジア選手権の準々決勝で日本卓球女子のエース早田ひなの前に立ちはだかったスン・インシャ(孫穎莎/中華人民共和国)。早田が成長するのと同じようにスンも技術を高め、大きな壁として早田の前に立ちはだかった。
10月8日までの日程で中華人民共和国浙江省の杭州で行われているアジア競技大会で、卓球競技10日目を迎えた10月1日現地時間夜、女子シングルス決勝が行われ、早田ひなが世界ランキング1位のスン・インシャにゲームカウント1-4で敗れて、スンが金メダル、早田が銀メダルを獲得した。
同日午後3時頃に行われた準決勝で、世界ランキング4位のワン・イーディ(王艺迪)との激戦を制し、日本女子シングルスの選手として、29年ぶりに決勝進出を果たした早田ひな。同日夜の決勝では、同1位のスンと対戦した。
第1ゲームでは早田の表情に硬さが見られ、積極的に攻めるスンのペースで試合が展開。終盤で早田は4連続得点を許す(3-9)など、流れを掴めないまま5-11で第1ゲームが終了した。
気持ちを入れ替えて臨んだ第2ゲーム。先取点を上げた早田は声を張り上げて喜びを表すと、次のポイントも自分のものにして笑顔。さらに3点を追加して5-0とした。こうした状況の中でも一切表情を変えることがない世界王者。じわじわと早田に迫ると、9-6からはスンが連続でポイントを奪取。早田も厳しいコースを狙うなど攻める姿勢を見せるが、思い通りの球は打たせてもらえず、スンは10点目でゲームポイントを掴んで大声を張り上げると、さらに1点を重ねて、ゲームカウントを0-2とした。
この大会の早田のキーワードは何と言って粘り強さだろう。
第3ゲームではスンの動きにうまく対応し、変化のあるレシーブで応戦するなど戦い方を工夫してゲームの主導権を握った早田。8-7で一度タイムアウトを取ると、タイムアウト後に1点を重ねて9-7。早田のリードをこれ以上は許すまいと、スンも鋭いボールを放って9-9。互いに慎重さと積極性を見せる中、ゲームはデュースに持ち込まれ、最後は長いラリーを早田が抑えて、1ゲームを取り返した。
第4ゲームでも早い展開が続く。早田は5-10とリードされる中、3連続得点で8-10に迫るとすると、今度はスンのタイムアウト。ゲームが再開され、スンの息遣いも聞こえるほどの激しいぶつかり合いの中、最後はスンのサービスから続いたラリーをスンが制して11点目。
ゲームカウントは1-3。次のゲームをスンが取れば試合終了となる。
点差がほどんと開くことなく展開した第5ゲームは、早田が6点、スンが5点となったところからスンが5連続ポイントでマッチポイント。粘りの早田はここで1点を返して得点は7-10。会場中の視線がスンのサービスに注がれる中、放たれたボールを早田が返すと、スンはこれをバックハンドで中央に打ち込む。早田はうまく反応したかのように見えたが、返したボールがネットにかかって大きく外れて、スンが両腕を上げて喜びを表現。熱い戦いが終了した。
早田ひな、オリンピックまで「1日1日を大切に努力していくしかない」
試合後のインタビューで早田は、試合の中で相手の動きを見て対応したことを語ると、「相手の方がラリーでも上だったかなと思います」と分析し、「攻めても攻めてもいつのまにか反撃されたり、いつのまにか向こうのペースになって得点されたりとか、そういう部分が多かった。打つコースをもっと考えなきゃいけないですし、もっと相手を見て試合をできるようになればいいなと思います」と語った。
来年のパリ2024オリンピックに向けては、「こういうオリンピックっぽい4年に1度の試合に出させていただいて、エースとして緊張も最初はあったんですけど、その中で自分のやってきたことを試合で出すことができて結果につながったと思う。あと1年でここを越えなきゃいけないと思うと時間がない。1日1日を大切に努力していくしかないと思うので、やることだけは間違えないようにして、今の形で自信を持って練習してきたいと思います」と続けた。
両者がパリ2024オリンピックに出場することになれば、パリで激しいラリーの応酬を繰り広げることになるだろう。それまでにふたりがどれだけ成長し、早田は目標にしてきた壁を越えることができるのか。パリ2024まであと299日!