2022年10月6日(木)から13日(水)まで開催される第61回世界柔道選手権。その戦いの舞台となるウズベキスタンのタシケントにはおよそ90ヶ国から約580人が集まり、会場となるヒューモ・アイスドームの畳に立つ。
タシケントでは2013年から国際柔道連盟(IJF)ワールドツアーが開催されており、2021年にはグランドスラムが、2013年から2019年にかけてグランプリが開催された。IJFの世界選手権がウズベキスタンで開催されるのは初めて。
今回の大会には、東京オリンピックで兄妹で金メダルを獲得した**阿部一二三、詩兄妹など日本勢23選手のほか、カナダ出身の世界王者、ジェシカ・クリムカイト、東京2020金メダリストのラシャ・ベカウリ(ジョージア)、ルカシュ・クルパレク**(チェコ)などが登場する。
世界柔道選手権の豆知識
男子の世界選手権が初めて開催されたのは1956年で、女子の世界選手権は1980年から1986年まで別の大会として実施されていた。1987年からは男女一緒に行われるようになり、オリンピックの年を除き、毎年開催されている。2017年からは混合団体種目が加わり、2021年の東京2020ではオリンピック種目としても採用された。
世界柔道選手権でもっとも優勝回数が多い国は?
優勝選手をもっとも多く輩出しているのが日本で、全選手の優勝数を合わせると164回。表彰台に立った回数は382となる。これに続くのがフランス勢で、優勝60回、表彰台180回。その後、大韓民国の優勝29回、表彰台102回が続く。
世界柔道選手権での最多優勝数を誇る柔道家は?
これまでの歴史において、最も優勝回数が多いのはフランスのテディ・リネールでその数は10に到達する。女子では谷亮子で優勝回数は7を数える。
世界柔道選手権での最年少優勝者、最年長優勝者は?
- 最年少優勝者:テディ・リネール(18歳159日、2007年)、ダリア・ビロディド(ウクライナ/17歳345日、2018年)
- 最年長優勝者:アントン・ヘーシンク(オランダ/31歳194日、1965年)、ドリュリス・ゴンサレス(33歳358日、2007年)
世界柔道選手権2022とパリ2024オリンピック
今回行われる2022年の世界選手権で上位の選手は最大2,000ポイントを得ることができ、これがパリ2024オリンピックの出場権獲得のためのランキングにつながる。世界選手権で獲得できるポイント数は、各柔道大会の中で最大(オリンピックを除く)。
パリ2024出場権をかけたポイント獲得期間は2022年6月24日からで、すでに始まっている。2024年6月23日付のIJF世界ランキングの7階級でそれぞれ上位17選手がパリ2024の出場権を獲得する。各国最大1人までとなっているため、上位17位以内に同一の国内オリンピック委員会の選手が複数ランクインした場合、国内オリンピック委員会が誰をオリンピックに派遣するかを決定する。
世界柔道選手権2022の注目選手は?
タシケントでは、男女それぞれで7階級、混合団体が実施される。混合団体では過去4大会をすべて日本が制しており、今大会ではオリンピック初代王者のフランスと日本が熱い戦いを繰り広げることになるだろう。それぞれの階級の注目選手をみてみよう。
世界柔道選手権2022、女子の注目選手
48kg級
オリンピック王者のディストリア・クラスニキ(コソボ)が52kg級に転向したため、優勝争いはオリンピック銀メダリストの**渡名喜風南と世界王者の角田夏実の日本対決になることが予想される。だが、現在の世界ランク1位はヨーロッパ選手権2冠のシリヌ・ブクリ**(フランス)であることも忘れてはならない。
52kg級
52kg級は最も競争の激しい階級と言えるだろう。オリンピック金メダリストの阿部詩が3度目の優勝を目指すが、東京2020の銀メダリストの**アマンディーヌ・ブシャールや、ヨーロッパ選手権を制した英国のチェルシー・ジャイルズ**も表彰台の頂点を目指し、戦いに挑む。
57kg級
昨年のブダペスト大会を制した、オリンピック銅メダリストの**ジェシカ・クリムカイト(カナダ)は2連覇を目指すが、同じくカナダ代表で元世界王者の出口クリスタが手強い相手となるだろう。出口はノーシードだが、国際大会では常にクリムカイトを破っている。48kg級世界王者のダリア・ビロディド**もこの階級にエントリーしているが、東京2020後に階級を変更して以降、主要大会で予選ラウンドを突破したことがない。
日本からは23歳の舟久保遥香(ふなくぼ・はるか)がこの階級に挑む。舟久保は夏に行われたグランドスラム・ハンガリー大会でクリムカイトを破っており、自身初出場となる世界選手権での活躍が期待される。
63kg級
世界選手権を5度制した**クラリス・アグベニューが第一子を出産して休暇に入ったため、誰が表彰台の頂点に立つのかを予想するのは難しい。英国のルーシー・レンシャルとカナダのカトリーヌ・ボーシュマン=ピナールがトップシードだが、日本の堀川恵**は今年のグランドスラム・ハンガリー大会、テルアビブ大会を制しており、優勝争いに加わることになるだろう。
70kg級
オリンピック金メダルの**新井千鶴が引退した一方、前回大会の覇者で第1シードのバルバラ・マティッチ(クロアチア)からタイトル奪還を狙う選手は少なくない。元ヨーロッパ王者のサンネ・ファンデイケ**(オランダ)、アジア王者の新添左季、フランスのマリー・イヴ・ガイ(2019年世界王者)、マルゴー・ピノなどが有力選手としてあげられる。
78kg級
今季のグランドスラムを2度制した前回覇者の**アンナ・マリア・ヴァーグナーに注目が集まっている。ドイツ出身で26歳のヴァーグナーは、東京2020の金メダリストである濵田尚里、銀メダリストのフランスのマデリーン・マロンガ**と表彰台を争うことが予想される。
78kg超級
日本の冨田若春は今季のグランドスラム・パリ大会、ハンガリー大会で優勝し、世界選手権に乗り込んでくる。世界選手権王者の朝比奈沙羅、オリンピック金メダルの素根輝が不在となるこの大会で25歳の冨田は、自らの力を思う存分発揮することだろう。また、東京2020銀メダリストの**イダリス・オルティス(キューバ)、フランスのロマヌ・ディッコ**(フランス)が優勝争いに加わることが予想される。
世界柔道選手権2022、男子の注目選手
60kg級
Chinese Taipeiの**ヤン・ヨンウェイはこの種目の世界ランク1位の選手で、2021年の東京2020で銀メダルを獲得して以来、グランドスラムを3度制している。24歳のヨンウェイは、今大会ノーシードで東京2020金メダリストの髙藤直寿**とライバル関係を更新することになるだろう。
66kg級
柔道ファンは、東京2020の金メダリスト阿部一二三(第8シード)と世界選手権を2度制している丸山城志郎(ノーシード)の日本人対決を心待ちにしているに違いない。2019年の世界選手権・東京大会では丸山は準決勝で阿部を下すと、決勝でも勝利をおさめて優勝。たがその数ヵ月後、戦いを制してオリンピック出場権を勝ち取ったのは阿部だった。
73kg級
オリンピック金メダル2つを手にする大野将平が怪我のため日本国内選考会を欠場したため、元世界王者の橋本壮市が日本代表として世界選手権に出場する。31歳の橋本は、昨年のブダペスト大会で優勝したジョージアの**ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ**と優勝を争うことになるだろう。
81kg級
男子の中でもっとも接戦となることが予想されるのがこの階級。オリンピック王者の**永瀬貴規が優勝候補の筆頭に挙げられるが、前回大会王者のマティアス・カス**(ベルギー)や世界ランキング1位のタト・グリガラシビリ(ジョージア)と厳しい戦いを強いられるだろう。また、グランドスラム・アンタルヤ大会とハンガリー大会で優勝した21歳のギリェルメ・シュミット(ブラジル)が番狂わせを起こすかもしれない。
90kg級
オリンピック王者のラシャ・ベカウリ(ジョージア)は、東京2020で金メダルを獲得して以来、初めて主要大会の舞台に立つ。 彼の主なライバルは、4月にブルガリアのソフィアで行われたヨーロッパ選手権を制した同胞のルカ・マイスラゼだろう。 その他、世界ランキング1位でアゼルバイジャンのママダリ・メフディエフ、同2位で地元ウズベキスタンのダブラト・ボボノフなどが戦いに挑む。日本からは23歳の増山香補が世界の強者に挑戦する。
100kg級
この階級でもっとも注目を集める選手は**ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)だ。29歳のフォンセカは、東京オリンピックで銅メダルを獲得し、世界選手権では3度の優勝を誇る。ミハエル・コレル(オランダ)、シャディ・エルナハス(カナダ)、ピーター・パルチック(イスラエル)、そして元世界王者のニコロス・シェラザディシビリ**(スペイン)、グランドスラム・ブタペスト大会で優勝した飯田健太郎がライバル候補の筆頭に挙げられる。
100kg超級
オリンピック銀メダリストであり、2018年の世界王者でもあるグラム・ツシシビリ(ジョージア)はこの階級をリードする存在だ。東京2020の決勝で対戦したルカシュ・クルパレク(チェコ)と再び対戦することになることが考えられるが、クルパレクは今大会ノーシードで、オリンピック以降はグランプリ・ザグレブ大会にしか出場しておらず、同大会では7位に終わっている。オリンピックの個人種目で金メダルを2つ獲得しているテディ・リネールは怪我のため欠場する。日本からはオリンピック2連覇の斉藤仁(ロサンゼルス1984、ソウル1988)を父に持つ、斉藤立が登場する。
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