【フィギュアスケート】全日本選手権・女子シングル|表彰台に上った坂本花織、樋口新葉、河辺愛菜が北京五輪日本代表をつかみ取る

1 執筆者 石川千早弥
Kaori Sakamoto
(Getty Images)

全日本選手権2連覇中で北京五輪日本代表の有力候補だった紀平梨花が、大会直前に欠場を表明。女子シングルは熾烈な日本代表争いが予想された。ショートプログラム(SP)終了時点で、2位から5位までの点差がわずか2.35点。1つのミスも許されない中、坂本花織が3年ぶり2回目の優勝を果たした。2位に樋口新葉、3位に河辺愛菜という結果となり、全日本上位3名が北京五輪日本代表に選ばれた。

1位 坂本花織 234.06[SP79.23(1位)/FS154.83(1位)]

今季、坂本はNHK杯優勝、日本人女子選手で唯一ISU(国際スケート連盟)グランプリファイナル進出(開催中止)を決め、日本代表選考でほかの選手より一歩リードしていた。SPは全体の24番目に登場。映画「グラディエーター」の曲に乗せ、ジャンプを全て成功させた。特に、後半のコンビネーションジャンプはスピードが全く落ちず、幅・高さとも申し分ない完璧なジャンプ。また、スピン、ステップは全てレベル4、GOE(出来栄え点)だけで10.02点を稼ぎ、79.23点と高得点をマークし、2位樋口に4.57点の差をつけて首位に立った。

2位 樋口新葉 221.78[SP74.66(2位)/FS147.12(2位)]

4年前の平昌五輪出場がかかった全日本では、有力視されていながら4位という結果で日本代表の座を逃した。その雪辱を果たすべく、彼女が4年間で習得したのが3回転アクセルだ。シーズンを重ねるごとに自分のものにし、今季は成功率も高め、11月に行われたGPシリーズのフランス大会では3位で表彰台に上がり、全日本に向けて仕上がりの良さを見せていた。SPは19番目と代表候補の中で最初に登場。3回転アクセルを回避し、確実に点数を取ることに注力した。持ち味である力強いジャンプを全て着氷させ、「Your Song」の美しい歌声に合わせた柔らかな表現力も魅せ、74.66点で2位につけた。

FSでは予定通り3回転アクセルを投入。直前の6分間練習で成功させ、本番に臨んだ。着氷はステップアウトしたものの、「絶対に降りる!」という気迫が感じられた。その後のジャンプも全てそろえ、この大舞台で勝負強さを見せた。終盤のステップでは躍動感のあるライオンキングの世界観で観客を魅了。演技後には大きくガッツポーズをした樋口。4年前は悔し涙だったが、今年は喜びの涙に変えた。SPとの合計221.78点で最終順位も2位。見事、2年ぶりの表彰台に立った。

3位 河辺愛菜 209.65[SP74.27(3位)/FS135.38(3位)]

シニア2年目だが、昨季は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍で国際大会の中止が相次ぎ、国際試合の経験が少ない中でオリンピックシーズンを迎えた。河辺の武器も3回転アクセルだが、安定して成功させることが勝負のポイントだった。河辺はSPから、その3回転アクセルを組み込んだ。第4グループで全体の23番目滑走。同じグループには坂本、樋口、三原舞依の代表候補もおり、緊張感が漂う中での演技となった。そうした中、「『四季』より 冬」の楽曲に乗せて冒頭の3回転アクセルを完璧に着氷。勢いそのままに、ほか2つのジャンプも全て成功、スピン・ステップもレベル4をそろえた。参考記録ではあるが、11月のNHK杯でマークした73.88点を上回る74.27点で3位につけた。

そしてFSでも3回転アクセルを入れ、完璧に着氷。出場する選手の中で唯一、SP、FSともに成功させた。いくつかジャンプの着氷が乱れたものの、ミスを最小限に抑え、昨季から継続で使用している「MIRACLE」を豊かな感情表現で滑り切った。演技が終わると安堵の表情を浮かべ、何度もうなずくシーンも見られた河辺。SP同様、FSでもスピン・ステップの全てでレベル4を取り、135.38点で総合3位。17歳のニューヒロインが初の表彰台に立った。

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