オリンピックの最多メダル獲得国はアメリカ、個人では「水の怪物」が28個のメダルを奪取
日本は142個の金を含め計441個のメダルを獲得
過去31回開催されてきたオリンピックにおいて、最多メダル数を誇るのはアメリカだ。また、一人の選手が複数種目に出場可能な競泳や陸上、体操では、驚異的な活躍で表彰台の中央を独占し続けたスター選手が多く存在している。2020年の東京五輪ではメダル独占が果たされるのか。そして日本勢はいくつのメダルを獲得できるのか。期待に胸がふくらむ。
2522個! アメリカはメダル獲得数で他国を圧倒
第1回のアテネ五輪から第31回のリオデジャネイロ五輪までの夏季オリンピックにおいて、国別メダル獲得数で最多を誇るのはアメリカだ。金、銀、銅を合わせた総数は2522個で、平均して1大会あた87個のメダルを手にしている。同2位の旧ソ連は1010個であるため、2倍以上にあたる数字だ。金メダルの獲得数だけで見ても、アメリカは1022個で、これも同2位に位置する旧ソ連の395個の2倍以上と、他国を寄せつけない。
そのほかトップ10にはヨーロッパ勢の国名が並ぶ。総メダル数の3位はイギリス、4位はフランス、5位はでフランスで、いずれも1000個には達していない。アジア勢での最多は中国で、金メダルの数は227個。日本はアジア勢では中国に次ぐ2位で、計441個のメダルを獲得している。内訳は金メダルが142個、銀メダルが134個、銅メダルが165個となっている。
前回大会のリオデジャネイロ五輪では、アメリカが最多となる計121個のメダルを獲得。2番目に多かったのは中国の70個で、日本は7位の41個だった。そのうち金メダルは、男子体操個人総合の内村航平、競泳男子400メートル個人メドレーの萩野公介、女子レスリングの伊調馨(かおり)などが獲得した計12個を占めている。
競泳のマイケル・フェルプスは1大会で8冠の快挙
個人で見てみると、リオデジャネイロ五輪までに最多のメダルを獲得しているのは、競泳のマイケル・フェルプス(アメリカ)だ。得意とするバタフライだけでなく、自由形、個人メドレー、さらにはリレーと一大会で複数の種目にエントリーし、15歳で初出場した2000年のシドニー五輪から5大会で金メダル23個、銀メダル3個、銅メダル2個を獲得した。過密スケジュールの中で実力を遺憾なく発揮できたことこそ、「水の怪物」と世界中から称された理由だろう。2008年の北京五輪では、前人未到の1大会8冠を達成。現役最後の大会となったリオデジャネイロ五輪では、200メートルバタフライ、200メートル個人メドレーと3つのリレー種目で優勝を果たして5冠を成し遂げ、自らの水泳人生に華々しく幕を閉じた。
フェルプスのように複数の泳法で勝負できるオールラウンダータイプのスイマーは、過去にもいた。彼が登場するまで、一大会における最多金メダル獲得数の記録を保持していたのは、競泳選手のマーク・スピッツ(アメリカ)だった。1972年のミュンヘン五輪で自由形、バタフライ、リレー種目を泳ぎ、一大会7冠を達成。1968年のメキシコシティー五輪で獲得したものを合わせると、金9個、銀1個、銅1個と計11個のメダルを手にしている。また、イアン・ソープ(オリンピック)は、身長196センチという体格の良さを生かし、自由形の複数種目において当時の世界記録を樹立。オリンピックでは、シドニー五輪とアテネ五輪の2大会で金5個、銀3個、銅1個のメダルを獲得している。
女子競泳では、現役選手のケイティ・レデッキー(アメリカ)の存在が際立つ。15歳の時にアメリカ最年少の代表選手としてロンドン五輪に出場し、800メートル自由形で金メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロ五輪では、200メートル、400メートル、800メートルの自由形とリレー種目で、金4個、銀1個という5個のメダルを手にした。翌2017年に行われた世界選手権では、同大会における通算金メダル獲得数を女子歴代最多の14個に更新しており、2020年に23歳で迎える自身3度目のオリンピックに向けて期待は高まる。
カール・ルイスは走り幅跳びで4連覇
競泳と同じく、陸上競技や体操も個人で複数の種目にエントリーできるため、多数のメダルを獲得するチャンスは大きい。陸上競技での最多メダル獲得者はパーボ・ヌルミ(フィンランド)だ。800メートルから1万メートルまでの中・長距離をこなすタフな男子ランナーで、「フライング・フィン(空飛ぶフィンランド人)」と呼ばれた。1920年のアントワープ五輪から1928年のアムステルダム五輪までの3大会において獲得したメダルは、金9個、銀3個の計12個。フィンランドではのちに紙幣に描かれるほど、国民的英雄として名を馳せた。
カール・ルイス(アメリカ)は、オリンピック4大会で計10個のメダルを獲得。金9個、銀1個を手にした伝説のスプリンターとして有名だ。短距離走と走り幅跳びを主戦場とし、走り幅跳びではオリンピック4連覇の偉業を達成している。近年では、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が北京五輪からの3大会において、男子100メートル走、200メートル走、4×100メートルリレーで計8冠を達成。彼が2009年の世界陸上競技選手権大会で残した100メートル9秒58、200メートル19秒19のタイムは、9年が経過しても破られていない。
オリンピックの体操では、ラリサ・ラチニナ(旧ソ連)がメダル数女子歴代1位を誇る。1956年のメルボルン五輪から東京五輪まで3大会に出場し、団体で3冠、個人総合で2冠を達成。また、種目別の床で3個、跳馬で1個と計9個の金メダルを手にし、銀、銅を含めると、獲得メダル数は計18個に至る。「白い妖精」ことナディア・コマネチ(ルーマニア)は、1976年のモントリオール五輪と1980年のモスクワ五輪に出場し、個人総合や平均台などで計5個の金メダルと2個の銀メダル、1個の銅メダルを獲得している。モントリオール五輪において、オリンピックで初めて10点満点を出した選手としても有名だ。
2020年東京五輪の体操競技でも、一人の選手が表彰台に何度も上がる可能性は十分にある。リオデジャネイロ五輪で4冠を達成したシモーン・バイルス(アメリカ)は、有力候補の一人だ。リオデジャネイロ五輪後に一時休養したものの、2018年の全米選手権では個人総合と種目別のすべてにおいて優勝を果たしており、2020年に照準を合わせて復調を遂げている。
日本勢は金メダル16個の記録を2020年に更新できるか
日本は男子体操競技で多くの成功を収めてきた。五輪メダル獲得数の上位も体操選手が多くを占めている。最多は小野喬(たかし)で、1952年から1964年にかけての4大会で通算13回も表彰台に上っている。内訳は金5個、銀4個、銅4個というもの。また、金メダルの獲得数が最も多いのは、メキシコ、ミュンヘン、モントリオール五輪で活躍した加藤沢男で、個人と団体における3連覇に加え、平行棒や床、あん馬、吊り輪などの種目別でも成果を残し、金8個、銀3個、銅1個で計12個のメダルを手にしている。2020年の東京五輪に向けても、前回大会で団体と個人総合を制したエース内村航平を筆頭に、メダルの複数獲得が見込める。
競泳では、萩野公介や瀬戸大也、池江璃花子など、海外選手と同レベルで戦えるオールラウンダータイプのスイマーが頭角を現している。萩野は3度目、瀬戸と池江は2度目のオリンピックとあって、それぞれ過去の大会を上回る活躍が期待される。そのほか、メダル獲得が有力視される種目の一つであるレスリングでは、個人でのオリンピック5連覇をめざす伊調馨に注目だ。
1964年に開催された東京五輪で日本が獲得したメダル数は、金が16個、銀が5個、銅が8個の計29個だった。その後、総メダル獲得数は更新されているものの、金メダルのみの数は2004年のアテネ五輪で16個に並んだまでで、新記録は出ていない。2度目の開催国となる2020年、表彰台の中央に立つ日本人選手の姿がより多く見られるか、期待が高まる。