【テニス】3年ぶりの東レPPOに前回女王の大坂なおみが出場…奈良くるみは今大会で現役引退

WTAツアー「東レ パン パシフィック オープンテニストーナメント」本戦が9月19日、東京都江東区の有明コロシアムと有明テニスの森公園テニスコートで開幕する。3年ぶりの開催となった今大会に、前回大会を制した大坂なおみもカムバック。奈良くるみは今大会を最後に現役引退を発表している。

1 執筆者 小杉正貴
Naomi Osaka
(2019 Getty Images)

「東レ パン パシフィック オープンテニストーナメント」が3年ぶりに戻ってくる。

この大会は「東レ パン パシフィック オープンテニス」、または「東レPPO」とも呼ばれる。女子テニスの最高峰、WTA(女子テニス協会)ツアーを構成する大会の一つで、グレードはWTA500。グランドスラム(4大大会)、WTA1000に次いで、3番目に高いトーナメントだ。

世界のトッププレーヤー、次世代を担うヤングスターを日本で見られる数少ない機会でもあることから、創設当初から多くのテニスファンに愛されてきた。しかし、2020年、2021年と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止に。第1回から毎年開催されてきた流れが一度、途切れることとなってしまった。

開催を楽しみに待っていたファンにとってはもどかしい2年間だったであろう。しかし、その時間ともおさらばだ。世界は以前の姿を取り戻しつつあり、東レPPOも2019年以来となるカムバックを果たした。ディフェンディングチャンピオンの大坂なおみも、3年ぶりの開催に華を添える。

■第1回は1984年に開催

今大会の展望の前に、改めて東レPPOの歴史を振り返っていこう。

東レPPOのルーツは1973年まで遡る。当時の大会名は「東レシルックトーナメント」。日本で初めての女子プロテニスサーキットとして産声をあげた。テニス界の節目として扱われる「オープン化」が1968年であることを考えれば、その歴史の長さを感じることもできるだろう。

その後、1984年にアジア初であり最大の国際女子公式戦として「東レ パン・パシフィック・テニス」に生まれ変わった。ブルガリア出身のマヌエラ・マレーバが初代シングルスチャンピオンに輝いた1984年大会を第1回として、現在までに36回の大会が開かれた。

最多優勝者はマルチナ・ヒンギス(スイス)。数々の最年少記録を持っていることでも有名な、テニス界のレジェンドの1人だ。1997年、1999年、2000年、2002年、2007年と5回の優勝を数える。

日本人として初優勝を果たしたのは伊達公子だ。1992年にはベスト4まで勝ち上がり、1994年には日本人選手として初めて世界ランキングで9位まで駆け上がった。その翌年、日本中から期待を懸けられる中、決勝でリンゼイ・ダベンポート(米国)を撃破。地元日本での優勝に、多くの観客が熱狂した。

2018年には加藤未唯(ザイマックス)/二宮真琴(エディオン)がダブルスで日本人初優勝。そして2019年、日本人として2度目の優勝者が生まれた。後にTokyo2020で聖火ランナーを務めることとなる大坂なおみだ。

■大坂なおみは3年越しの連覇なるか

大坂は2018年にグランドスラムの全米オープンを制覇。すでにトッププレーヤーの1人としてみなされている中で、2019年の東レPPOに出場した。実力通り、順調に勝ち上がり決勝へ。2016年、2018年といずれも決勝で敗れており、これが3度目の挑戦となった。

試合はアナスタシア・パブリュチェンコワを寄せ付けず、6-2、6-3のストレートで大坂が制した。3度目の正直で、1995年以来となる日本人による優勝を達成。日本でのニューヒロインの躍動は、来年に迫ったTokyo2020に向けても大きな期待を抱かせるものとなった。

それから3年。今大会を迎える大坂の状況は当時と大きく異なっている。

2020年は新型コロナウイルス感染症の流行、Tokyo2020を含むさまざまなスポーツイベントの中止・延期という、アスリートにとって非常に難しい1年を送った。さらには2021年の全仏オープンで、うつ症状を抱えていることを告白。Tokyo2020は3回戦敗退に終わり、2022年も負傷の影響もあって思うような結果を残せていない。

今大会に出場するライバルも強力だ。世界ランキング4位のパウラ・バドーサ(スペイン)を筆頭に、同10位のカロリーヌ・ガルシア(フランス)、同20位のカロリーナ・プリスコバ(チェコ)らが優勝を伺う。

大坂にとって、3年越しの連覇を狙う今大会。4月のマイアミ・オープンで準優勝を達成したように、実力を発揮できればトップを争える選手であることは間違いない。負傷の状況も気になるところだが、Tokyo2020以来となる日本でのテニスを存分に楽しんでほしい。

■奈良くるみ、母国で有終の美を

特別な思いを持って今大会を迎える選手がいる。奈良くるみ(安藤証券)だ。

奈良は9月に入り、東レPPOを最後に現役を引退すると発表した。兵庫県出身の30歳。「3歳から始まった私のテニス人生。振り返っても、一つの悔いもなく選手生活を去れることに、私自身驚いています」と心境を綴った。

ジュニア時代に国内の数々のタイトルを獲得し、プロの世界へ。2014年にはWTA250のリオ・オープンで初優勝を果たした。この年は全豪オープンで3回戦、そのほかのグランドスラムで2回戦まで進み、世界ランキングをキャリアハイとなる32位まで押し上げた。

通算成績は384勝319敗、グランドスラムでは3度の3回戦進出が最高成績。現役引退最後となる東レPPOはシングルスで予選から、ダブルスでは土居美咲(ミキハウス)とペアを組んで本戦から出場する。「最後の1ポイントまで、自分らしく戦い抜きたい」と言う奈良のプレーも、しっかりと目に焼き付けたい。

※文中敬称略

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