20回目の開催となった世界水泳選手権2023福岡大会が7月31日(日)に幕を閉じた。
今大会では、191カ国から出場した2,361名の選手によって17日間の激戦が繰り広げられ、その中で10個の世界新記録が誕生した。22年ぶりに国内開催となった今大会では、顔なじみの強豪選手や、初出場のスター選手らの活躍もあり、有観客の大声援の中、大きな盛り上がりを見せるものとなった。
ここでは、今大会の数多くの名場面や印象的な記憶の中から、Olympics.comが厳選した最も心に残る5つの記録を紹介しよう。
フェルプスからマルシャンへ手渡された新たな光
世界水泳2023福岡大会は、レオン・マルシャン(フランス)が大会初日(7月23日)の夜、男子400m個人メドレー決勝でマイケル・フェルプス(アメリカ合衆国)がそれまで保持していた世界記録を破ったことで盛大な幕開けとなった。
21歳のマルシャンはこの種目を4分02秒50で泳ぎ切り、5,110日間もの長い間、フェルプスが保持していた記録を1秒34縮めて世界新記録を樹立した。フェルプスのこれまでの記録は、競泳史上最も長く保持されていた世界記録だった。
男子200m個人メドレーと200mバタフライでも優勝したマルシャンは、競泳男子の大会最優秀選手に選ばれている。マルシャンとフェルプスが、パリ2024に向けてさらなる改善の余地があると確信していることは多くのファンを期待させることだろう。
君臨し続ける女王レデッキー
ケイティ・レデッキーはまだまだ健在のようだ。世界戦にデビューしてから10年が経つが、レデッキーは現在も女子800m及び1,500m自由形で圧倒的な存在であり続けている。
今大会では、両種目で2位以下に大きな差をつけて貫禄を示し優勝。世界水泳個人種目で通算16個となる金メダル(加えて3個の銀メダル)を獲得し、フェルプスを抜いて歴代個人種目通算金メダル獲得数でトップに立った。
26歳のレデッキーの飽くなき挑戦は、これからも続くだろう。スポーツファンにとっては歓迎すべき話だが、彼女のライバルたちにとっては耳をふさぎたくなる話のはずだ。
カイリー・マキュオンとモリー・オキャラハンで盛り上がったオーストラリア
今大会の競泳で合計38個のメダルを獲得したアメリカ合衆国チームが最優秀チームに選ばれた。しかし、オーストラリアチームは、金メダルの獲得数では米国の7個を約2倍上回り、今回13個を獲得している。
女子最優秀選手に選ばれたカイリー・マキュオンや、5個の金メダルを獲得したモリー・オキャラハンを中心とした強豪オーストラリア代表チームは、パリ2024に向けて米国にさらに挑みかかる覚悟でいるはずだ。
来年は、2月のカタール・ドーハで開催される次回の世界水泳をはじめ、夏のパリ2024において、両国代表チームの熱い戦いが繰り広げられることは間違いない。
中華人民共和国の大黒柱:タン・カイヨウとチョウ・ウヒ
今大会の中華人民共和国は、競泳のメダル獲得数でアメリカ合衆国とオーストラリアに続き、金メダル5個を含む合計16個のメダルに輝く強さを示した。
その中でタン・カイヨウは、男子競泳史上で初めて50m、100m、200mの3つの距離の平泳ぎで金メダルを獲得した。チョウ・ウヒは、女子バタフライで金メダルと銀メダルを1ずつ含む個人種目で3つのメダルを獲得している。また2人は、男女混合メドレーリレーでチームを組み、中華人民共和国チームに金メダルをもたらしており、今や中華人民共和国の競泳をリードする存在と言える。
中華人民共和国は、アジアの中でも際立つ強さを示した。2個の銅メダルの獲得に終わった日本とは対照的だった。同国は、今秋に開催されるアジア競技大会のホスト国であることからも、競泳では同国チームのさらなる活躍が期待される。そして、パリ2024に向けて、アメリカ合衆国、オーストラリアに真っ向から挑む意気込みでいるはずだ。
オーストラリアチームの期待:カシエル・ルソー
世界水泳におけるオーストラリアチームの躍進は競泳による力だけではない。オーストラリアのカシエル・ルソーは、同国が今大会の全競技で獲得した合計15個の金メダルのうち、13個の競泳によるもの以外の1つを男子10m高飛込で獲得した。ルソーは、同種目におけるオーストラリア男子初の金メダリストになった。
中華人民共和国は、過去の世界水泳飛込競技における金メダルをほぼ独占するという世界最強国で、前回2022年の世界水泳(ハンガリー・ブダペスト)では同競技全13種目全てにおいて金メダルを獲得するという強さだ。今大会でも、中華人民共和国の全種目金メダルが予想されたが、ルソーが唯一、それを覆す結果になった。また、男子10m高飛込で過去2大会において金メダルを獲得していた中華人民共和国の連勝も阻止する結果になった。