【バレーボール】女子世界選手権:火の鳥NIPPONの最終結果は5位・2年後のパリ2024へ向け確かな手応えをつかむ

女子バレー世界選手権が10月15日(日本時間16日)に、セルビアの優勝で閉幕した。女子日本代表は、ベスト8進出の目標を達成したものの、1次ラウンドで白星をあげたブラジルを相手に、フルセットの末で惜敗、準々決勝敗退に終わった。パリ2024の試金石となった激動の19日間を振り返る。

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
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(Volleyball World)

ポーランドとオランダの2カ国開催で行われた女子バレー世界選手権が15日(日本時間16日)に閉幕した。優勝はセルビア、前回大会の初優勝に続いて連覇を達成し、悲願の初制覇を目指したブラジルが準優勝、イタリアが3位で銅メダルを獲得した。大会前にベスト8進出を掲げた日本は、その目標を達成したものの、準々決勝でブラジルにフルセットの末に敗れ、最終成績5位で今大会を終えた。

■石川真佑の進化

1次ラウンドからブラジル、中国と同組となった「火の鳥NIPPON」こと、女子日本代表。

最低でも3勝2敗、2次ラウンド以降も成績が持ち越されることから4勝1敗を狙っていたが、1次ラウンド3戦目の中国に敗れ大会初黒星を喫した。さらにこの試合では主将でエースの古賀紗理那が負傷し、欠場を余儀なくされるアクシデントに見舞われてしまった。

つづく4戦目は強豪チームのブラジル。ここまで全勝で来ており、エース不在の日本の不利が予想されていたが、この危機的状況で奮起したのが古賀に代わって出場した石川真佑だ。今年5月のネーションズリーグでは不調が続き、スタメンを外れ、リリーフサーバーとしての出場が目立った石川だったが、このブラジル戦では開始早々にサービスエースで1点目をもぎ取り、その後も鉄壁の攻撃、守備力を誇るブラジルを相手に次々とスパイクを見舞うだけでなく、相手の強打も自ら拾って打つ。まさにニューヒロインと呼ぶにふさわしい、石川の力強い活躍が起爆剤となり、ブラジルに勝利した日本は4勝1敗で1次ラウンドを通過した。

■2度目のブラジル戦

2次ラウンドではベルギー、イタリア、開催国のオランダといった圧倒的な高さを誇る欧州勢との対戦が続いた。組織力の高さと圧倒的な攻撃力を誇るイタリアには敗れたが、ベルギー、プエルトリコ、オランダを撃破し、日本は3次ラウンド準々決勝へ進出。目標を達成した日本は、ベスト4をかけ、ふたたびブラジルと対戦することとなった。

ここまでの1次と2次ラウンドを通して、唯一敗れたチームが日本だけというブラジルは、「2度は負けない」とばかりに試合序盤から猛攻に転ずるも、日本のサーブ、そして大会中盤からミドルブロッカーとして攻守両面で活躍し、飛躍的な成長を遂げた山田二千華がブロックポイントを量産し、1、2セットは日本が連取する。

第3セットでも「勝利まであと1セット」と気負うことなく、石川、井上愛里沙、林琴奈といったアウトサイドヒッターをはじめ、山田のブロード攻撃、セッターの関菜々巳が多彩な攻撃を展開するなど、ブラジルを翻弄。

今大会の1次ラウンドで、実に40年ぶりとなるブラジルからの勝利を挙げたことに続いて、2010年以来となる世界選手権のメダル獲得を大きく引き寄せるかと思われた矢先、ブラジルが追い込まれてからの底力を発揮してくる。第3、第4セットをブラジルが連取して、セットカウント2対2で最終セットへと持ち込まれる。

15点先取の第5セット。ブラジルの強打、猛攻に対し日本も林や石川、リベロの福留慧美のレシーブで応戦。しかし、最後は石川のスパイクがネットにかかり、フルセットの末、日本は惜しくもブラジルに敗れてしまった。2次ラウンドまでの成績を通算した結果、火の鳥NIPPONは最終成績を5位で大会を終えた。

■いざ、パリ2024へ

目前に迫った勝利を挙げることができず、日本はあと一歩のところでメダルに届かなかった。選手たちは試合後に悔しさを述べ、涙を流す姿もあったが、昨年(2021年)の東京2020では本来の力を発揮できずに黒星が続き、ベスト8進出を果たすことができなかった。

同じく敗れて終えたとはいえ、出し切れずに負けた大会と、出し切ったけれど届かなかった敗戦の意味は違う。急遽巡ってきたチャンスを活かし、大車輪の活躍を見せた石川。大会を通して攻撃力の高さを発揮した井上。すべてのバランスに長けた林。そして急成長を遂げた山田、福留といった若手に加え、ミドルブロッカーとしても爪痕を残した宮部藍梨。さらにはセッターとして1大会を通してコートに立ち続けた関の奮闘は素晴らしく、来年行われるオリンピック予選大会に向け、大きな弾みとなったことは間違いない。

なにより、不慮のケガにより大会を通してプレーすることがかなわない状況でも、常にチームメイトを鼓舞し、声をかけ、足の状態が万全ではない中でも復帰して闘志あふれるプレーを見せた古賀も、主将としてエースとして、さらなる活躍を見せるはずだ。

眞鍋政義監督が求めるスピードを活かした攻撃と、いかなる時も攻め、なおかつ確実にターゲットも狙うサーブの効果は抜群で、世界に対しても「日本バレーは強い」と示す大会になったことは間違いない。

若手選手が多く出場し、世界選手権という19日間にも及ぶ長丁場の競技スケジュールを経験したことに加え、ブラジルと互角に戦い、勝利まであと一歩に迫った自信と、それでも勝ち切れなかった悔しさ。この経験が次にどんな形となってつながっていくのか。

その答えは来秋、日本で開催されるパリ2024の予選大会で見せてくれることだろう。

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