卓球・張本美和「胸を張って戦えるように」兄・智和と出場するはじめてのオリンピック
若手選手の台頭で勢いが加速する卓球ニッポン。
世界ランキングTOPを占める5人の中華人民共和国勢平均年齢(男子28.2歳、女子26.2歳)と比較しても、日本のランキング上位5人は男子が21.8歳、女子が20.8歳と低く、世界からも驚異的な存在としてマークされている。
その中でも、数々の歴代最年少記録を更新してきた兄妹、張本智和(20)と張本美和(15)の快進撃がとまらない。
オリンピックイヤー1月の全日本卓球で、兄が6年ぶり2度目の優勝を飾ると、美和は初の決勝進出で準優勝。2月は世界卓球女子団体戦で銀メダルに貢献した。4月のマカオで開催されたワールドカップ個人戦では、兄妹共に銅メダル獲得の快挙を達成し、国際卓球連盟(ITTF)が4月23日に発表した世界ランキングで、史上初となる兄妹そろってのTOP10入り。美和(8位)が初めて兄の智和(9位)をランキングで追い越した。また、6月のWTTコンテンダー・チュニスでは、智和がシングルス、混合ダブルス、男子ダブルスでWTT初の3冠を達成し、女子シングルスで優勝した美和と共に喜びを分かち合った。
智和は一足早くパリ大会で2試合を終えている。男子シングルスでは、今大会で金メダルを獲得したファン・ジェンドン(樊振東/中国)に、準々決勝で激闘の末フルゲームで敗れ、早田ひなとの混合ダブルスでは、初戦で敗退するという苦しい戦いが続いているが、3種目目の男子団体(8月5日)で悲願のメダル獲得を狙う。また、今回個人種目の出場のない美和は、同日午前中に行われる女子団体で表彰台を目指す。
2年にわたる選考レースを戦い抜き、切符を掴んだ張本兄妹の強さとは?その秘訣をOlympics.comのインタビューを通じて探った。
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「自分も早くあの地に立ちたい」
東京2020オリンピックで一足先に夢の舞台に立ったのは兄だった。シングルスでベスト16、団体戦では個人で全勝し、水谷隼、丹羽孝希と共に銅メダルを獲得した姿を、当時中学1年生の美和は両親と応援した。
「まだまだ足りないからもっと頑張らなきゃ、という気持ちでずっと見ていました」。団体戦の攻めの試合は「本当にすごく強かった」と振り返る美和は、憧れの存在である兄の活躍を見て、"必ず自分もオリンピックへ" という気持ちをより強固にさせたという。
物心つく頃からいつも兄の背中を追いかけ、卓球コーチである父と世界選手権に出場経験のある母のもと、2歳で卓球を始めた美和は、全日本選手権バンビの部で4年連続表彰台に上るなど小学生の頃から国内で実績を上げた。2018年に国際大会へ初出場すると、ITTFワールドジュニアサーキット・中国ミニカデットシングルスで優勝。東アジアホープスでは、兄・智和の当時の記録を破り、10歳でシングルスと団体戦で優勝。その後も多くのタイトルを獲得した美和は、2021年12月に行われた世界ユース卓球選手権において、U15の部で出場した全4種目で金メダルを獲得する史上初の4冠に輝き、一気に期待の新星として注目を浴びることとなった。
負けず嫌いな性格の兄妹。身近に尊敬しあえる選手がいるという環境、お互いに切磋琢磨できる兄妹の絆は、2人をさらに強くさせる。
モチベーションは、家族4人で挑む夢の大舞台
国内選考レースが始まった2022年にシニアの国際大会に本格参戦するようになった美和は、同年8月にチュニジアで行われたWTTコンテンダー・チュニスで、兄・智和とペアを組み混合ダブルスで優勝、翌年は同大会で女子シングルス初優勝を果たすと、2024年は2連覇を達成。2023年のWTTスターコンテンダー・ゴア(インド)をはじめ、数々の国際大会で決勝進出を果たし、シングルスのみならず、女子ダブルスや混合ダブルス、さらには団体戦でも経験と実績を積み上げた美和は、2024年6月までの1年半で世界ランキングを44位から7位にまで上昇させた。
飛躍的な進歩で日本卓球界が期待する、伸びしろのある "逸材" と評価された美和は、2月5日に日本卓球協会が発表したパリ2024日本代表内定選手で、東京2020混合ダブルス金メダリストの伊藤美誠を抑え、女子団体メンバーとして初選出された。その時の気持ちを訪ねると、「正直自分が選ばれるとは思っていなくて。選考レースが始まった当初は10位とかすごい下位にいたので…。全然チャンスがない中で、でも諦めずにやれるところまやり切ることができて、その結果で選んでいただけたのでうれしいです」と、笑顔を見せた。豊富な練習量と努力で熾烈な日本代表争いを勝ち取った美和を支えたのは、両親と兄からの応援だったという。「本当に家族みんなで喜んでいます」と、東京2020から3年越しに夢をかなえた喜びを語ると、「自分が追う立場だったので、こうしてお兄ちゃんと一緒にオリンピックに行けるということが本当にうれしいです」と続けた。
オリンピック代表記者会見では、兄・智和からもらった「自分をもっと信じて頑張って」というアドバイスがいつも背中を押してくれたことを打ち明けた美和は、「(兄から)学べるところはすごいたくさんありましたし、普段の人間性も本当に優しくて、本当に尊敬する部分しかない。自分も強くなることができたので本当にお兄ちゃんに感謝したい」と兄への想いを話すと、パリでは「お兄ちゃんに恩返ししたいし、一緒に頑張りたい」と意気込みを語った。
ふたりの新たな未来を切り開く舞台となる、パリ2024オリンピック。8月5日に行われる団体戦で、兄妹の絆で卓球界に新たな歴史を刻むその瞬間を期待したい。
卓球日本代表、張本美和の主な戦績
2024年
- 1月 全日本卓球選手権…ジュア女子シングルス優勝、女子シングルス準優勝
- 4月 ITTF女子ワールドカップマカオ…女子シングルス3位
- 6月 WTTコンテンダー・ザグレブ(クロアチア)…女子シングルス2位
- 6月 WTTスターコンテンダー・リュブリャナ(スロベニア)…女子シングルス3位
- 6月 WTTコンテンダー・チュニス(チュニジア)…女子シングルス優勝
2023年
- 1月 全日本卓球選手権大会…ジュニア女子シングルス優勝
- 3月 WTTスターコンテンダー・ゴア(インド)…女子シングルス3位、女子ダブルス優勝(ペア:長﨑美柚)、混合ダブルス準優勝(ペア:戸上隼輔)
- 4月 WTTフィーダー・アンタルヤ(トルコ)…女子シングルス優勝、女子ダブルス優勝(ペア:安藤みなみ)
- 4月 WTTスターコンテンダー・バンコク(タイ)…混合ダブルス3位(ペア:戸上隼輔)
- 6月 WTTコンテンダー・チュニス(チュニジア)…女子シングルス優勝、女子ダブルス準優勝(ペア:木原美悠)
- 8月 WTTコンテンダー・リマ(ペルー)…女子シングルス3位
- 9月 アジア競技大会…女子ダブルス3位(ペア:木原美悠)、女子団体2位(メンバー:早田ひな、平野美宇、張本美和)
- 10月 WTTコンテンダー・アンタルヤ(トルコ)…女子シングルス3位
- 10月 WTTコンテンダー・マスカット(オマーン)…女子シングルス3位、混合ダブルス準優勝(ペア:松島輝空)
- 11月 全農CUP大阪大会…女子シングルス優勝
- 12月 ITTF混合団体ワールドカップ…日本3位(ペア:戸上隼輔)
2022年
- 1月 全日本卓球選手権大会…女子カデットシングルス優勝、女子ダブルス優勝
- 3月 WTTユーススターコンテンダー(ドーハ)…U15&U19女子シングルス優勝、U15ダブルス(ペア:小塩悠菜)優勝
- 5月 WTTユースコンテンダー(ベルリン)…U17&U19女子シングルス優勝
- 5月 WTTユースコンテンダー(プラッジャ・ダロ)…U17&U19女子シングルス優勝
- 8月 WTTコンテンダー・チュニス(チュニジア) …女子シングルス2位、混合ダブルス優勝(ペア:張本智和)、女子ダブルス3位(ペア:長﨑美柚)
- 11月 WTTフィーダー デュッセルドルフⅢ(ドイツ) …女子シングルス3位
2021年
- 12月 世界ユース卓球選手権大会…U15女子シングルス優勝、女子ダブルス(ペア:ゴーダ、エジプト)、混合ダブルス優勝、女子団体(張本美和/小塩悠菜/鈴木美咲)優勝
- 8月 全国中学校大会…女子シングルス優勝
2020年
- 2月 ITTFジュニアサーキット・チェコオープン…ジュニア女子シングルス優勝、カデット女子シングルス優勝、カデット女子ダブルス優勝
- 2月 ITTFジュニアサーキット・スウェーデンオープン…カデット女子シングルス優勝、ジュニア女子ダブルス(ペア:青木咲智)優勝、ジュニア女子シングルス3位
2019年
- 2月 ITTFジュニアサーキット・チェコオープン…カデット女子シングルス準優勝
- 2月 ITTFジュニアサーキット・ホンコンオープン…カデット女子シングルス準優勝、女子ダブルス優勝、女子団体優勝
- 2月 ITTFジュニアサーキット・スウェーデンオープン…ミニカデット女子シングルス優勝、ジュニア女子ダブルス2位、カデット女子シングルス3位
- 7月 東アジアホープス大会…女子シングルス優勝、団体優勝
- 7月 全農杯全日本卓球選手権大会…ホープス女子優勝
2018年
- 7月 全農杯全日本選手権…女子シングルスカブの部優勝
- 7月 東アジアホープス…女子シングルス優勝、女子団体優勝
- 7月 ITTFワールドジュニアサーキット・中国ミニカデット…女子シングルス優勝
- 8月 ITTFジュニアサーキット・タイペイジュニア…女子シングルスベスト8(18歳以下)
卓球・張本美和プロフィール
パリ2024オリンピック、卓球の試合日程
以下すべて現地時間(日本はパリより7時間進んでいる)。日程は変更になる可能性もある
8月5日(月)
- 10:00〜13:00 男子・女子団体1回戦 第1、2試合
- 15:00〜18:00 男子・女子団体1回戦 第3、4試合
- 20:00〜23:00 男子・女子団体1回戦 第5、6試合
8月6日(火)
- 10:00〜13:00 男子・女子団体1回戦 第7、8試合
- 15:00〜18:00 男子・女子団体準々決勝 第1試合
- 20:00〜23:00 男子・女子団体準々決勝 第2試合
8月7日(水)
- 10:00〜13:00 男子・女子団体準々決勝 第3試合
- 15:00〜18:00 男子・女子団体準々決勝 第4試合
- 20:00〜23:00 男子団体準決勝 第1試合
8月8日(木)
- 10:00〜13:00 男子団体準決勝 第2試合
- 15:00〜18:00 女子団体準決勝 第1試合
- 20:00〜23:00 女子団体準決勝 第2試合
8月9日(金)
- 10:00〜13:00 男子団体3位決定戦
- 15:00〜18:00 男子団体決勝
- 18:00〜18:30 男子団体表彰式
8月10日(土)
- 10:00〜13:00 女子団体3位決定戦
- 15:00〜18:00 女子団体決勝
- 18:00〜18:30 女子団体表彰式