世界とつながる12歳のスケートボーダー・小野寺吟雲

パリ 2024

日本選手権を制した12歳の小野寺吟雲。ワールドスケートジャパン(WSJ)のスケートボード強化指定選手としてストリート世界選手権に挑む。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
Ginwoo

1月29日にアラブ首長国連邦シャルジャで始まったスケートボードストリートの世界選手権。開会式を前にした28日の夕方、世界中のスケーターが集まる練習場で長い前髪を後ろで結び、ボードに乗って地面をける少年の姿があった。

2010年生まれの12歳、小野寺吟雲(ぎんう)。

男子ストリートの「顔」的存在のスケーターのひとり、マニー・サンティアゴ(プエルトリコ)とともにスケートパーク内を駆け、ふたりは「ゲーム」を楽しんでいた。サンティアゴが先にトリックをして、小野寺がそれをコピーする。

25歳という歳の差や、言語の壁、国境などそこにはない。あるのはスケートボードと、スケボー愛にあふれる笑顔。スケートボードを通じてつながる瞬間だ。

「Ginwoo」の名で知られる小野寺は、2022年11月に行われた日本選手権に初めて出場し、初優勝。この世界選手権にWSJスケートボード強化指定選手として参戦する。

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スケートとの出会い

神奈川県出身の小野寺が初めてスケートボードに触れたのは、5歳のときだった。家族旅行で訪れた米ロサンゼルスのベニスビーチでスケボーを目にした幼き小野寺は、その世界に一気に魅了された。

両親がすぐに板を買い与えることはなかったが、「あの日」から半年以上が過ぎてもスケボーへの思いを募らせていた様子を目の当たりにした両親は、最初の板を息子に渡した。

それから小野寺のスケボー生活が始まった。

7歳から本格的に競技をはじめ、8歳で国際大会への出場を開始。その素質はすぐに人々の目にとまるようになり、同年、スペインのデッキブランドJARTから支援を受けるようになった。

コンペティションの舞台は主に国外。「最年少」という記録のみならず、難しいトリックに挑戦する姿が海外で注目を集めるようになると、世界のスケボー界でも話題に上がる存在へと成長した。

2022年11月にはアマチュア・スケーターにとって世界最高峰のコンテストと位置付けられるTampa AM(タンパアマ)に出場。日本勢として4連覇を達成した16歳の池田大暉(だいき)に続いて準優勝を飾った。

12歳とはいえ、インスタグラムのフォロアーは15万人を超え、世界各地のスケーターたちとつながっている。その姿は、世界選手権が行われているアラブ首長国連邦、人口第3の都市シャルジャでも見受けられる。

今回の世界選手権では3日間の練習期間を経て2月2日に男子オープン予選が行われる。1月29日の練習初日を終えた小野寺は、多くのトップアスリートが集まる状況において、「いろんな人たちと滑ることは面白くて、楽しくて、いろんな技を学習できるから嬉しいです」と元気よくコメント。

世界選手権について「自分の滑りをするだけだから、緊張とかはしてないし、しっかり全部決めたいです」と目標を定め、目を輝かせた。

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