パリ2024サーフィン観戦ガイド!注目ポイント・競技形式・試合日程
パリ2024オリンピックのサーフィン競技は、開会式翌日の7月27日から30日までの4日間にわたり実施される。
1920年にオリンピック競泳自由形金メダリストのデューク・カハナモクらハワイのサーファーたちが、サーフィンをオリンピックの正式競技に採用するよう求めてから100年の歳月を経て、東京2020で史上初めて、サーフィン競技がオリンピックに登場した。パリ2024では、伝説のサーフスポット、タヒチ島チョープーが会場に選ばれている。
オリンピック史上初開催となった東京2020では、五十嵐カノアが銀メダルを獲得した。女子は、都筑有夢路(つづき・あむろ)が銅メダルに輝いている。
パリ2024では、男女各24名のトップサーファーたちが2回目となるオリンピックでのサーフィン競技に臨む。「波乗りジャパン」こと日本代表チームは、前回大会に引き続きメダル獲得を目指したいところだ。
ここでは、パリ2024サーフィン競技の競技形式、注目の日本選手、見どころ、日程、会場などを紹介する。
パリ2024サーフィンの競技形式
サーフィン競技では、選手は波に乗りながらトリック(技)やマニューバー(技の組み立て)を行い、5人のジャッジが、それらの多様さ、タイプ、難度に基づき採点を行う。選手のスピード、パワー、フロー(ひとつの波から次の波へと流れるように動きをつなぐこと)も審査の対象だ。パリ2024ではショートボードが使用されるが、このタイプのボードはスピードが速くて、よりテクニカルな動きを行いやすいため、豪快で壮観なトリックを演出するのには最適である。
男女各24名の選手は、15~45分間のヒートを競い合う。各ヒートでは何度も波に乗ることができるが、最もよい2つのスコアの合計で勝敗が決まる。競技はラウンド1、2、3、準々決勝、準決勝、決勝の6つのラウンドで行われる。
第1ラウンドは、それぞれ3人のサーファーが競い合う8つのヒートからなり、各ヒートの勝者1人は第3ラウンドに進む。残った2人は第2ラウンドを行う。第2ラウンドでは、第1ラウンドの敗者16人が2人ずつ8つのヒートに分かれて競い、ここでの勝者は第3ラウンドに進むことができる。敗者はここで競技終了となる。
第1ラウンドの勝者8人と第2ラウンドの勝者8人、合計16人が第3ラウンドに進むが、ここからは1対1のトーナメント形式の対戦となる。勝者は準決勝、決勝へと進むことができる。準決勝の敗者2人は3位決定戦を行う。
パリ2024サーフィン競技の注目の日本選手
パリ2024サーフィン競技には、東京2020銀メダリスト、五十嵐カノア、稲葉玲王(れお)、コナー・オレアリー、松田詩野(しの)の4人が日本代表「波乗りジャパン」として出場することが内定している(*)。
2023年のオフシーズンからアメリカ合衆国の名門ハーバード・ビジネス・スクールで学業にも勤しむ五十嵐。2022年のISAワールドサーフィンゲームズ(WSG)ハンティントンビーチ大会(米カリフォルニア)では波乗りジャパンの団体優勝に貢献し、男子にパリ2024出場枠1つをもたらした。また、2023年6月のWSGエルサルバドル大会では、個人アジア勢1位となりさらに出場枠を獲得した。自身は、ワールドサーフリーグ(WSL)チャンピオンシップ・ツアーでの最終ランキングによりパリ2024出場枠を獲得している。「夢は(オリンピックの)金メダル」と、五十嵐はOlympics.comのインタビューでパリ2024に向けた思いを語っている。2大会連続のメダル獲得となるか。五十嵐の活躍に注目だ。
稲葉は、五十嵐が2023年WSGエルサルバドル大会で獲得したオリンピック出場枠をアジア勢2位として割り当てられたことで代表に内定した。今年の4月と5月にはパリ2024の会場となるタヒチ・チョープーで五十嵐、松田らとトレーニング合宿を実施。チョープーの美しいチューブに満面の笑顔で乗り、その様子をSNSで伝えている。「こんな美しい場所でサーフィンをさせてくれる現地のみなさん、ありがとう!」
オレアリーは、今年のWSGプエルトリコ大会を経て、2022年に波乗りジャパンがWSGハンティントンビーチ大会で獲得したオリンピック出場枠を得て、3人目の男子日本代表に内定している。日本人の母を持ち、オーストラリアで生まれたオレアリーは、2021年シーズンから右肩にオーストラリアの国旗、左肩に日本の国旗を掲げて世界中の波に乗った。そして、昨年11月に日本への移籍を果たしている。オレアリーは、これまで彼を支えた日本の友人や家族への感謝の気持ちを胸に全力を尽くす意気込みだ。
波乗りジャパン女子代表の松田は、2023年WSGエルサルバドル大会でパリ2024の出場枠を獲得しその後内定を得た。東京2020出場を目前で逃し悔しい思いをした松田は誰よりもオリンピックにかける思いが強いだろう。昨年のOlympics.comのインタビューで、「オリンピックで活躍して、サーフィンの素晴らしさを若い世代やサーフィンをしたことがない人にも伝えられるような存在になりたい」と話している。
*オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。各競技の出場資格に関する公式資料はこちら
パリ2024サーフィン競技の注目ポイント
何と言っても見どころはチョープーの波の迫力と、それに果敢に挑むサーファーたちの壮絶な戦いだろう。トーナメントでは、選手は1対1でポイントを競い合うものの、それと同時に、一刻一刻と変化し同じものはひとつとしてない、激しく荒れ狂う波を相手に闘わなければならない。人工的な環境ではなく、あくまで自然と向き合わなければならないところに、この競技の醍醐味がある。
チョープーの波は、サーファーから見て右側から左側へと崩れていくレフトハンド・ブレイク。サーファーはパドリングで波を捉えたら、波の崩れる方向に従い左側にサーフボードを進める。このため、グーフィーフッター(進行方向に対して右足をサーフボードの前、左足を後ろに置く乗り方)は、崩れる波を目の前に見ながらフロントサイドでライドすることが可能になる。
日本代表内定の稲葉、オレアリー、松田はグーフィーフッターだ。つまり、レフトブレイクのチョープーの波は、グーフィーフッターである彼らにとって好都合かもしれない。3度の世界チャンピオンで東京2020オリンピック男子4位のガブリエウ・メジナ(ブラジル)、同じく女子4位のキャロライン・マークス(アメリカ合衆国)、そして東京2020代表のタティアナ・ウェストン・ウェブ(ブラジル)らもグーフィーフッターとしてパリ2024に臨む。
もちろん、五十嵐をはじめ、パリを目指すレギュラーフッター(進行方向に対して左足をサーフボードの前に置く乗り方)の世界のトップサーファーたちもチョープーの波を知り尽くしていることは間違いない。2023年8月にチョープーで開催されたWSLタヒチプロではレギュラーフッターのジャック・ロビンソン(オーストラリア代表内定)が優勝している。
果たして、チョープーの波は、パリ2024に出場する男女48人のサーファーたちに優しく微笑むのだろうか、それとも容赦ない過酷な試練を与えるのだろうか。
パリ2024サーフィン競技の日本代表選手
男子
- 五十嵐カノア(26歳)
- 稲葉玲王(27歳)
- コナー・オレアリー(30歳)
女子
- 松田詩野(21歳)
パリ2024サーフィン競技の日程
以下、現地時間。日本はタヒチより19時間進んでいる。
※天候や海況等の影響により日程変更がある場合は予備日に行われる。
7月27日(1日目)
- 7:00~ 男子第1ラウンド
- 11:48~ 女子第1ラウンド
7月28日(2日目)
- 7:00~ 女子第2ラウンド
- 11:48~ 男子第2ラウンド
7月29日(3日目)
- 7:00~ 男子第3ラウンド
- 11:48~ 女子第3ラウンド
7月30日(4日目)
- 7:00~ 男子準々決勝
- 9:24~ 女子準々決勝
- 11:48~ 男子準決勝
- 13:00~ 女子準決勝
- 14:12~ 男子3位決定戦
- 14:53~ 女子3位決定戦
- 15:34~ 男子決勝戦
- 16:15~ 女子決勝戦
予備日:7月31日~8月4日
パリ2024サーフィン競技の会場
タヒチ島チョープー
チョープーは、南太平洋に浮かぶフランス領ポリネシアの島(フランスの海外準県)、タヒチの南西海岸の村。島の美しさもさることながら、チョープーは世界で最も壮観な波乗りの舞台のひとつとして有名だ。
チョープーの波は、およそ400m沖合の場所で見られる世界で最も有名なリーフブレーク(海底が岩やさんご礁のサーフポイントで形成される波のこと)。ガラスのような美しいチューブ(筒状になった波のこと)を巻く。通常、2~3mの高さだが、7mの高さに達することさえある。
サーファーたちはその巨大な波に果敢に挑む。サーフィンファンだけでなく、全ての観客は世界で最も美しい波がブレイクするこの会場で繰り広げられる息をのむバトルに興奮せずにはいられないだろう。
パリに向けての準備に余念がない五十嵐は、以前、Olympics.comのインタビューに次のように話していた。
「世界の中でも、(チョープーは)僕の好きな場所のひとつです。とてもピュアな場所で、子どものころを思い出させてくれ、人生がとてもシンプルに感じられるんです。とても美しい場所です」