「バーを上げる」こと。それはあらゆる意味において、モンド・デュプランティスこと**アルマンド・デュプランティス**が取り組んでいることだ。
陸上競技界のスーパースター、デュプランティスの勢いはとどまるところを知らない。3月に行われた世界室内選手権の棒高跳で、彼は初めて6m19をクリアして世界記録を樹立し、そのわずか数日後に、記録を6m20まで伸ばしてみせたのだ。
これから続く今季の目標について尋ねると、彼の答えは明快だった。2022年7月にオレゴンで開催される世界選手権での初のタイトルを獲得すること、そして世界記録をさらに更新すること。
室内と屋外の両方で世界記録を保持する彼は、東京2020で金メダルを獲得。さらに世界室内選手権で優勝し、欧州選手権では、室内・屋外の両大会を制した経歴をもつ。
そしてまもなく始まるダイヤモンドリーグの連覇もかかっている。
ダイヤモンドリーグ、ドーハ、ユージーン、オスロ大会に出場
世界室内選手権を制してから2カ月後、22歳の彼は東京オリンピック金メダリスト7人のひとりとして、ドーハで開催されるダイヤモンドリーグの舞台に立つ。
2020年は参戦した16大会すべてで優勝し、インドアシーズン中に6m17と6m18の世界記録を打ち立てた。
そのハイライトはダイヤモンドリーグのローマ大会だった。この大会で彼は、**セルゲイ・ブブカ**が26年前に樹立した世界記録を破り、屋外の史上最高記録となる6m15をクリアした。
2022年の今季は、すでにベオグラードで室内記録を2度更新している。ダイヤモンドリーグは屋外での記録を更新する良い機会になるだろう。
「冬の間のトレーニングはとてもうまくいった。まだシーズンの序盤ではあるけれど、ドーハのコンディションは高く跳ぶのに適していると思う。2020年のこの大会で5m82をクリアしたので、今回は6m00に近づきたい」。5月13日の開幕に向け、ダイヤモンドリーグ主催者とのインタビューで彼はそう語った。
ドーハでは、ロンドン2012優勝者**ルノー・ラビレニ、東京で銀メダルを獲得したクリス・ニルセン(アメリカ合衆国)、世界選手権銅メダルのピオトル・リセク**(ポーランド)等と対決する。
2週間後の5月27日、28日には、生まれ故郷の米国に降り立ち、ユージーンで開催されるプレフォンテインクラシックに出場する予定だ。
そこでは、東京オリンピックのメダリスト仲間であるニルセンと**チアゴ・ブラス・ダ・シルバ、世界チャンピオンに2度輝いてるサム・ケンドリックス**、フランスのラビレニらと対戦する。
デュプランティスはその後、6月16日に開催されるオスロ・ビスレット大会で、リオ2016のチャンピオンであるブラスやラビレニ、ケンドリックスを含む豪華な選手たちと競い合い、3勝目を目指す。
ダイヤモンドリーグは、デュプランティスにとって「母国」での大会に向けた完璧な調整の場となることだろう。
デュプランティスは、米国人の父グレッグとスウェーデン人の母ヘレナのもと、ルイジアナ州で生まれた。両親は彼のトレーニングを監督している。
昨年、スウェーデンの年間最優秀アスリートに選ばれた彼は、この北欧の国を代表することを選択し、多くの注目を浴びている。
最近、母親の故郷のダーラナ県には彼の世界記録と同じ6m19の高さの看板が建てられ、彼の名前が記されたこの看板は、地元の有名なモニュメントであるダーラ馬の横に並んでいる。
デュプランティス:目の手術の後「より良いジャンパー」に
デュプランティスの父親は国際的な棒高跳選手で、兄弟のアンドレアスとアントワンもこの競技に取り組んでいた。
現在も続けているのは、4歳のときに練習を始めた年少のデュプランティスだけで、2017年にオースティンで開催されたテキサスリレーで、わずか17歳にして5m90に成功すると、彼は世界にその存在を知らしめた。
それ以来、彼は「バーを上げる」ことを続けている。
以前にも増して競技にフォーカスし、より地に足がついている彼は、現在ガールフレンドでモデルのデシレ・イングランダーとともにストックホルムで暮らしている。
そして彼は、レーザー級のフォーカスで新シーズンに挑もうとしている。
デュプランティスは、レーザーによる視力回復の手術を受けて人生が変わり、「まったく新しい世界が開けた」と語る。
「僕がいつも一番恐れていたことは、競技の最中にコンタクトレンズに問題が起こることだった。特に大きな大会ではね...。コンタクトレンズを落としてしまわないか、とか。いつもそれが頭の中にあって、ストレスになっていた。そのうちその考えが頭の中で固定されて、繰り返し蘇ってくるようになった。それにコンタクトレンズをつけると、目がかゆくなったりして不快だったんだ」と彼は、『Aftonbaldet』誌に語っている。
心配事がひとつ減り、彼はこれまで以上に高く舞い上がろうとしている。
「手術したことで、より良いジャンパーになれるような気がしている。何より、もう心配しなくてよくなった。何かあったらどうしよう、という、いつも心の中を蝕んでいた恐怖心がなくなったんだ」。