宇野昌磨、グランプリファイナル2023連覇に向けて

12月7日開幕のGPファイナル2023で連覇を目指す現王者の宇野昌磨が、2週間前に行われたNHK杯の翌日、Olympics.comの独占インタビューで演技判定のこと、そして今大会での抱負について語った。

1 執筆者 Shintaro Kano
Uno Shoma
(International Skating Union (ISU))

宇野昌磨は理解できなかった。

フィギュアスケートグランプリ(GP)ファイナルの昨年の覇者であり、2度の世界チャンピオンである彼は、11月25日に大阪で開催されたNHK杯男子フリープログラムを滑り終えた後、スケート靴を脱ぎながら、ショートプログラムで先行していた鍵山優真を抜いて男子タイトルを獲得するには十分な出来栄えだったと確信していた。

しかし、宇野が見せた4度の4回転ジャンプがいずれも回転不足と評価され、結果、鍵山に追いつくことができず1.84点の僅差で2位に終わった。この評価に彼は驚きを隠せなかった。

その翌日、宇野はいつものように誠実で率直な語り口で前日の出来事についてOlympics.comとの独占インタビューに応じた。

「(今日の)朝起きて、悲しい気持ちではありました。夢にも出てきましたから」NHK杯エキシビションの行われた11月26日、宇野はそう話し始めた。

「昨日の(自分自身の)演技は本当に素晴らしかったので、その素晴らしい演技と思ったものが点数的に評価されなかったということがすごく悲しかったと今そう思います」

「僕がどういう発言をして、どういう気持ちでいるべきなのか、僕には正解はわからないですけれど、今までもその時思った正直な気持ちを伝えてきましたし、それしか僕にはできないので今後もそうするとは思います。ただ、昨日の演技はよかったものとされないのは、すごくもったいないという気持ちはあります」

「昨日の映像を見ましたが、あれ以上は僕には無理です。だから対策しようがないので、このままやっていこうと思います。それで同じ評価を与えてくださるなら僕はそこが限界だって素直に思います」

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「ピークに近い状態に今あるっていうのは間違いない」

12月7日に開幕した北京GPファイナル2023が始まる前日(6日)、宇野は北京国家体育館のリンクで他の出場選手と共に練習を行っていた。

それらの選手の中には、鍵山と三浦佳生(かお)、フランスのペア、アダム・シャオ・イム・ファケビィン・エイモズ、そして「4回転の神」と呼ばれるイリア・マリニンら5選手が顔を見せていた。

宇野はプログラムの練習に励み、NHK杯からの演技を維持すると語っていた通りにジャンプを繰り返し行っていた。しかし、その彼をして今の調子は「びっくりするぐらい」だったと言う。

「ステファン(ステファン・ランビエールコーチ)に何だろうって聞いたら、『氷なのか、あなた自身なのか、両方じゃないか』と言われました」

「明日どうなるか。守りに入らないこと」と、宇野はGPファイナル前日の練習の後のメディアのインタビューで話している。

NHK杯の後も、宇野はこれまでのキャリアの中で今が最もよい状態だと述べていた。

「点数のことを頭に入れなければ、今回、ピークに近い演技ができていたと思います」

「僕にできることは全てやり尽くして、ピークに近い状態に今あるっていうのは間違いないです」と話した。

「(ランビエールコーチが)本当に素晴らしかったと(言ってくれました)。あんなに褒められたのは2年前の世界選手権以来です」

「あの時もよかったのですが、ただ僕はあの時よりもジャンプ以外の部分もしっかりやったうえ、中国杯からの課題をこの短い期間では考えられない調整と練習をこなせたうえで、試合でもそれができました。このことにステファン自身も本当に喜んでいました」

Can Uno Shoma retain his Grand Prix Final crown?

(International Skating Union (ISU))

「変えないことの強さ」

過去2シーズンで出場した全ての国際大会で優勝し、世界選手権では2度の王座を獲得した宇野は、今シーズンに臨むにあたりモチベーションを見つけることに苦労したと認めている。

しかし、NHK杯で優勝した鍵山が自分自身に憧れているといった話を聞いた時、これからも彼のモチベーションになる存在でいたい、そして、これが自分のモチベーションになることを再発見した。

宇野は、鍵山のような若い選手の視線を負担に感じたり、目標にされていることは特に気にしていないようだ。

「追われる側も追われるなりの楽しみがありますし、追う側はもちろん挑戦するだけです。追われる側として彼らにとってモチベーションでありたいという方向に僕は考えがあるので、追う側でも追われる側でもあまり変わらないです」

「やることはいっしょです。より挑戦的になるか、より完成度を高める方向になるかの違いと思います」

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックについては、宇野が現在乗り越えようとしていることを克服するまでは、彼にとって考えるにはまだ早いと言えるかもしれない。

3度目のオリンピックに出場するかどうかはまだわからない。しかし、ひとつ確かなことは、彼がスケートを続ける限り、宇野は宇野であり、北京でも彼らしさを見せることだろう。

「ミラノまで続けるかどうかわからないですが、もし続けていると仮定するならば、 僕は今を変えないと思います。みなさんが思っているほど簡単に変えられるものでは ないのです」

「あまり長期的なプランというものは考えないですが、ただ練習することは、もし次 のオリンピックまでやったとしても同じことしか僕はやらないと思います。僕はそれが自分の理想の演技だと思っています」

「これで評価されなくなったら、それは本当にしかたないことだと思っています」

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