坂本花織が語る、ミラノ・コルティナ2026への計画「オリンピックで最高の演技をするために」

世界選手権で2連覇を達成し、現・世界女王そしてオリンピック銅メダリストでもある坂本花織が、次のオリンピックに向けた計画と「自分らしくいること」の意味をOlympics.comのインタビューで語った。

1 執筆者 Nick McCarvel
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(2023 ISU)

Olympics.comのインタビューが始まり、世界選手権2連覇中のフィギュアスケーター坂本花織が質問に答え始めると、プロデューサーや通訳者が坂本の声に耳を傾け、カメラマンは機材を通じて映像や音声を確かめ、部屋はシーンと静まり返った。

すると突然、部屋の壁に取り付けられていた電話が鳴り始めたのである。

「あっ!」

坂本は答えを途中で止め、笑いながら部屋の角にある電話の方を見た。プロデューサーが電話のコードを抜いて強制的に音を止めると、坂本は驚いたように目を見開き、「ああああああ!」と声を発して大きく笑った。その笑いは波紋となって彼女のチーム、そしてプロデューサーたちにも広がった。

23歳の彼女は周囲を明るくする性格で知られている。それは彼女の数ある才能のひとつだ。

「明るさと元気と楽しくできることが自分らしさだと思っています。それはわざと作っているんじゃなくて、自分でも素でやっているので、たまに制御が効かなかったら周りに止められる(笑)」

「でも自分らしく生きていた方が楽しいし、それで周りの人が笑ってくれたら、それは自分にとってもめちゃくちゃ嬉しいことだと思います」

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坂本花織が実感する「追われる立場」

坂本はシニア1年目の年、当時17歳で迎えた平昌2018でオリンピック・デビューを果たした。以来、シニアスケーターとして多くのファンを笑顔にしてきた。

最初のシニアシーズンは学びの多いものだった。多くの選手がキャリア最大の目標に掲げるオリンピック出場は、坂本にとってはむしろ足がかりとなる瞬間であり、平昌は彼女が最高の選手になるために必要なことを学ぶ場所だった。

「平昌(オリンピック)に出た年はシニア1年目で、何もわからない、経験したことがない世界に飛び込んで、ひたすら先生に言われるがままに、流れに身を任せ、自分の意思はほぼ後回しで、とりあえず目の前のことに必死になって、気づいたら、頑張ってやってきたら、オリンピックに出ていました」

平昌オリンピックから5年以上が過ぎ、坂本は世界選手権で2度優勝を遂げるまでに成長した。最初のオリンピック体験が彼女を形成したものだと坂本は振り返る。

「自分がむしろ追われる立場になって、それが苦しかった時もあるんですけど、それを感じられるようになって、自分もちょっと成長したのかなという気持ちになりました」

追われる側の重圧

追う立場から追われる立場への移行。坂本はそれをあっという間に成し遂げたが、決して簡単なものではなかった。

「去年優勝したときも、その前オリンピックシーズンに世界選手権で優勝したときも、気持ちがそこまで良くなくて、プレッシャーの方をすごく感じていて、『良い試合だった』という感じよりも追い詰められている感じがあった」

「苦しい気持ちで今ここ2連覇中なんですけど、その両方がそういう気持ちなので、結果が出てやっとホッとできたという感じです」

坂本はそれに値するだけのものを手に入れたと言えるだろう。

世界選手権2制覇を成し遂げたのは母国・日本。埼玉の会場に詰めかけた大勢の日本のファンの前で坂本は演技を行った。ショートプログラムで首位に立っていた坂本だったが、フリースケーティングの後半で3回転フリップが1回転になるミスがあり、優勝はこぼれ落ちたかのように思われた。しかし結果は、イ・ヘイン(大韓民国)に3.67点差をつけて優勝を果たした。

日本人初の世界選手権連覇を達成(翌日、宇野昌磨も2連覇を達成)した坂本は、肩の荷が下りた思いだった。

アイスダンスの演技の合間に、坂本は主催者に促されて「ヴィクトリー・ラン」を行った。ファンたちは会場の通路で坂本を見つけると、彼女に向かって叫び、両手を広げた。彼女の顔には満面の笑みが広がっていた。

次のオリンピックに向けて「4年って結構すぐ」

2023-2024シーズンの開幕と同時に、坂本は大学の卒業証書を手にした。彼女は大学(経営学部)を卒業し、次の目標をメディアに明言した。 「全日本選手権と世界選手権で3連覇」すること。

今シーズンの世界選手権はカナダのモントリオールで予定されており、坂本は再び表彰台の頂点を目指す一方で、2026年に開催されるミラノ・コルティナ冬季オリンピックを最大の目標に掲げている。

「前回の北京が終わってから、4年後のミラノに向けて1年1年どうやってやっていくかというのを考えながらやっているところです」

北京2022以降、彼女はさまざまな振付師を試し(過去2シーズンはマリーフランス・デュブレイユ氏がフリーを担当)、またジャネット・ジャクソンやシーア、そして今シーズンはローリン・ヒルなど、自分のスタイルも試してきた。

「ミラノのオリンピックに出て最高の演技をするには4年って結構すぐだし、最初の1年はチャレンジできるシーズンだと思って、去年は今までやったことのないジャンルのショートだったりとか、やってこなかったことをできるチャンスだと思ってやって、今年もそれに近い感じ」

「来年再来年は自分が一番力を出し切れるベストな体制でいきたいと思っています」。

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