パリ2024オリンピックで更新が期待される世界記録の数々
オリンピック金メダリストになること以上に素晴らしいことって何だろうか?新しい世界記録を樹立して金メダルを獲得することは、そのひとつであることに違いない。
スポーツの歴史に、誰がどのような新たな1ページを刻むのだろうか!?パリ2024オリンピック開幕が近づく中、日々、そのような話題が絶えない。プールから陸上トラック、そしてクライミングウォールまで、Olympics.comはパリで破られるかもしれない世界記録の数々を探った。
※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。各競技の出場資格に関する公式資料はこちら
背泳ぎの女王ケーリー・マキオンを超えるのは自分自身?
今年の初め、競泳背泳ぎの女王、ケーリー・マキオン(オーストラリア)は、2024年ニューサウスウェールズ州競泳選手権での女子100m背泳ぎを57秒57で泳いだ。これはマキオンが2023年に出した同種目の世界記録、57秒33秒とわずかな差だった。彼女は現在、女子100m背泳ぎの世界歴代6位までの全ての記録を持っている。
マキオンは2023年世界水泳福岡大会の女子背泳ぎ50m、100m、200mで三冠を達成しており、100mと200m背泳ぎでは東京2020オリンピックのチャンピオンでもある。また、マキオンは女子背泳ぎの3種目で世界記録を持っており、パリ2024では優勝候補の筆頭だ。果たして、この夏のパリで、再び自身の世界記録を更新することができるだろうか?
デュプランティスの連続8回世界記録更新を止めるのは誰か?
最近では、「モンド」ことアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)の名前は「世界記録」という言葉と同義語になっているようだ。陸上競技男子棒高跳のスーパースター、デュプランティスは、これまでに世界記録を8回も更新しており、最も新しいものは、今年4月のダイヤモンドリーグ初戦の中華人民共和国・アモイ大会で記録した6m24。これは、自身の持っていたそれまでの世界記録(6m23)を1cm更新したものだった。史上最高の跳躍を誇るデュプランティスは、2024年世界室内陸上競技選手権大会(スコットランド・グラスゴー)で2位以下に15cm以上の大きな差をつけ他の選手を圧倒して優勝している。
デュプランティスは、2020年2月に初めて世界記録を樹立した。彼は、それまでルノー・ラビレニ(フランス)が約6年間持っていた当時の世界記録6m16を1cm破った。しかし、そのわずか1週間後の2月15日には、デュプランティスはグラスゴーで記録をさらに1cm更新した。それ以来、デュプランティスは、他の選手をどんどん引き離し、ひとりで飛び続けているのだ。
デュプランティスの世界記録更新の履歴
- 2020年2月8日 6m17:世界室内陸上競技ツアー(トルン)
- 2020年2月15日 6m18:世界室内陸上競技ツアー(グラスゴー)
- 2022年3月7日 6m19:世界室内リハーサル大会(ベオグラード)
- 2022年3月20日 6m20:世界室内陸上競技選手権(ベオグラード)
- 2022年7月24日 6m21:世界陸上競技選手権(オレゴン)
- 2022年2月25日 6m22:室内大会(フランス・クレルモン・フェラン)
- 2023年9月17日 6m23:世界陸上競技選手権(ブダペスト)
- 2024年4月21日 6m24:ダイヤモンドリーグ第1戦(アモイ)
いつでもどの大会でもそうであるように、現役の世界チャンピオンでありオリンピック王者のデュプランティスが、パリ2024でも史上最大のライバルになるのは間違いない。ただ問題は、デュプランティス自らが最大のライバルである自分自身に勝つことができるかということになるかもしれない。
陸上女子短距離界のレジェンド、ジョイナーの世界記録を超えるのは誰?
女子200mの世界記録は、陸上競技界の伝説である「フロジョ」ことフローレンス・グリフィス・ジョイナーが21秒34を記録した1988年以来、破られていない。
しかし、2023年世界陸上選手権ブダペスト大会では、ジャマイカのシェリカ・ジャクソンが21秒41を記録し、あと少しで世界記録を更新するところだった。このタイムは女子200mで世界歴代2位の記録である。
他の女子選手たちもジャクソンに続いており、東京2020女子200mで連覇を果たしたエレイン・トンプソン=ヘラーが21秒53秒、同銅メダリストのガブリエル・トーマス21秒60をマークし、それぞれ世界歴代3位と4位の記録を出している。パリ2024では、果たしてフロジョの記録がついに破られることになるのだろうか?
20歳のハンプトン・モリスがもたらした55年ぶりの世界記録:ウエイトリフティング
2024年3月から4月にかけてタイ・プーケットで開催された国際ウエイトリフティング連盟(IWF)ワールドカップで、アメリカ合衆国の20歳、ハンプトン・モリスがクリーン&ジャークで176kgを挙げ、男子61kg級の世界記録を更新し歴史を塗り替えた。この新記録樹立は、米国男子ウエイトリフティング界にとって実に55年ぶりの快挙だった。モリスの記録は、同大会で更新された多くの世界記録と並んでワールドカップのハイライトのひとつだった。パリ2024でもこのようなパフォーマンスをファンは期待している。
スポーツクライミング界の新星サム・ワトソン、1時間に2回世界記録を更新!
スポーツクライミング世界トップレベルへのサム・ワトソン(アメリカ合衆国)の登場は、彼がスピード種目で壁を駆け登るのと同じくらい衝撃的な速さだった。今年4月のワールドカップ第1戦(中華人民共和国・呉江)で、ワトソンは2回も世界記録を塗り替え、一気にパリの舞台を目指す選手から脅威と見なされるようになった。
18歳のワトソンは、第1ランで4秒85を記録し、1時間も経たない内に行われた第2ランでは4秒79秒のタイムをマークし、誰よりも早く15メートルの壁を駆け登った。それまでの世界記録は4秒90だったが、これは世界で初めて5秒の壁を破った2023年ワールドカップ覇者のヴェドリック·レオナルド(インドネシア)が持っていた。
5月のワールドカップ第2戦(ユタ州ソルトレイクシティ)では、自身の世界記録に少しだけ及ばなかったものの4秒89を記録しスピード種目で優勝している。ワトソンの活躍はまだ始まったばかりだ。彼は今、自分自身の世界記録を再び破ることを目指しているに違いない。今度はオリンピックの舞台で!
メダルの最多獲得数も更新なるか
世界記録更新への期待が大きく膨らむ一方で、この夏パリで注目されるメダル獲得の記録についても以下に触れておきたい。
パリ2024でアメリカ合衆国女子バスケットボール代表チームが金メダルを獲得した場合、アトランタ1996以来8大会連続の金メダルとなり、これはオリンピックにおけるチームスポーツでの新記録となる。また、ケビン・デュラントがメンバーとして出場する同国男子代表チームが金メダルを獲得した場合、またはニコラ・カラバティッチが所属するハンドボールフランス男子代表チームが金メダルを獲得した場合、いずれもチームスポーツで4個の金メダルを獲得する初の男子選手となる。
パリ2024に出場する最も多くのメダルを獲得した選手のひとりであるケイティ・レデッキー(アメリカ合衆国)は、すでに打ち立てている素晴らしい功績をさらに偉大なものとするかもしれない。これまでに7個のオリンピック金メダルを獲得しているレデッキーが、パリで金メダルをもう1個コレクションに加えれば、同郷のジェニー・トンプソンが持つ競泳女子最多オリンピック金メダル記録に並ぶ。もし2個の金メダルを獲得すれば、競泳界で最も多くの金メダルを獲得した女子選手ととなる。そして、3個獲得することができれば、レデッキーは全てのスポーツにおける最も多くのオリンピック金メダルを獲得した女子選手となることができる。
また、オーストラリアのエマ・マキオンも、トンプソンが持つ競泳女子での最多オリンピックメダル12個の記録にあと1個で並ぶところだ。
その他、水中のチーム競技として、次の記録にも注目だ。
アメリカ合衆国水球女子代表チームがパリ2024で金メダルを獲得し、メリッサ・シードマンがその時も代表チームに所属していた場合、34歳の彼女は4大会連続で金メダルを獲得する初めての水球選手となる。また、競泳男子4x100mメドレーリレーでオリンピック10連覇を果たしているアメリカ合衆国代表チームは、パリ2024で11回目の金メダル獲得を目指す。これまでに、出場をボイコットしたモスクワ1980を除き、同種目が行われた15大会で金メダルを獲得している。
初のメダル獲得を目指す難民選手団やその他の国々
パリ2024のIOC難民選手団も、初めてのメダル獲得を目指している。選手団は、世界中の1億人を超える難民を代表し、11か国からの36人の選手で構成されている。
また、リヒテンシュタインは、オリンピック冬季大会で複数のメダルを獲得しているが、夏季大会でのメダルをまだ1度も獲得していない唯一のNOCである。
以下の国々のNOC(まだオリンピックメダルを獲得したことがないNOC)も、初めて表彰台に立つことを目指している:アルバニア、米領サモア、アンドラ、アンゴラ共和国、アンティグア・バーブーダ、アルバ、バングラデシュ、ベリーズ、ベナン、ブータン、ボリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、英領バージン諸島、ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、カーボベルデ、ケイマン諸島、中央アフリカ共和国、チャド、コモロ、コンゴ、コンゴ民主共和国、クック諸島、ドミニカ、エルサルバドル、エスワティニ、赤道ギニア、ガンビア、グアム、ギニア、ギニアビサウ、ホンジュラス、キリバス、ラオス人民民主共和国、レソト、リベリア、リビア、マダガスカル、マラウイ、モルディブ、マリ、マルタ、マーシャル諸島、モーリタニア、ミクロネシア連邦、モナコ、ミャンマー、ナウル、ネパール、ニカラグア、オマーン、パラオ、パレスチナ、パプアニューギニア、ルワンダ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン諸島、サントメ・プリンシペ、セーシェル、シエラレオネ、ソロモン諸島、ソマリア、南スーダン、東ティモール民主共和国、ツバル、バヌアツ、イエメン。
パリ2024へのカウントダウンは続いており、世界中のファンが世界記録の破られる瞬間を楽しみに待ち望んでいる!