鍵山優真: 父の名に恥じぬよう

北京2022フィギュアスケート日本代表の鍵山優真は、急成長を遂げている。過去に2度の冬季オリンピック出場経験のある偉大な父の背中を追うように、開幕した冬のオリンピックの銀盤で、18歳のホープは新たな扉を開く

1 執筆者 Shintaro Kano
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(2021 Getty Images)

息子として、父のように。父の名に恥じぬよう。

**鍵山優真**にとって、これほどに重たい言葉はない。

なぜなら、鍵山のコーチは、2度の冬のオリンピック(アルベールビル1992・リレハンメル1994)に出場経験のある鍵山正和という自身の父親なのだから。そして、いよいよふたりで共に目指してきた**北京2022**冬季オリンピックの舞台へ、父の足跡を辿るように、鍵山はオリンピック初出場を果たす。

昨年末の全日本フィギュアスケート選手権での演技終了後、弱冠18歳の鍵山は、初となるオリンピック出場権を手に入れた瞬間、人目もはばからず大粒の涙を流した。

「『ようやくここまで来たな、いつも通り頑張るぞ』と、(父に)声をかけてもらいました」

北京2022フィギュアスケートの会場である首都体育館で、初の練習を終えて、鍵山がインタビューに答えた。

「この場所に立っていることが、今でも夢のように思っています」

鍵山が本格的にスケートに取り組み始めたのが、5歳の時。父から息子へ、オリンピックの夢のバトンが引き継がれていく。コーチの正和氏は、出場したオリンピックで13位と12位という成績で、表彰台には及ばなかった。

鍵山は、国内のジュニア大会やランキングで上位に立ち、ローザンヌ2020冬季ユースオリンピックでは金メダルに輝く。さらに、世界ジュニア選手権では銀メダルで国際大会の表彰台に連続して上る。

そして、シニアデビューを果たしたばかりの四大陸選手権では、いきなりの銅メダル獲得など、快進撃が止まらない。

COVID−19の世界的な感染拡大が始まったシーズン(2020/2021)、鍵山はNHK杯に出場し、銀メダルを首にかける。さらに、北京2022を控えた今シーズン(2021/2022)では、グランプリシリーズのイタリア大会とフランス大会で共に優勝し、総合成績1位の頂点に立つ。

北京2022フィギュアスケート男子シングル代表は、オリンピック2連覇中の**羽生結弦と平昌2018銀メダルの宇野昌磨**、そして鍵山の3名という史上最強の布陣だ。鍵山は偉大なオリンピックメダリストの先輩スケーターと共に、団体戦と個人戦の両種目でメダルを狙っている。

そして、オリンピックではまだ成功されていない4回転ループに挑戦する。

鍵山は、準備万端だ。

「(4回転ループの仕上がりは)なかなか良くて(笑)。曲かけでも取り入れるようにして、降りられるようになってきたので、少し自信がついた」

「でも(4回転の)サルコウやトゥループのように、完全に自信がついているわけではないし、(成功の)確率もまだまだなので、今は全力で決めるというのが目標です」

「(ループを入れないという)代わりの練習をしていないので。色々ハイリスクの構成で挑むんですけど、練習してきたので問題ないと思います」

急成長を遂げている鍵山なら、心配なさそうだ。なぜなら、インタビューの間もリラックスした表情で、時折笑顔も見せた。

「ここまでたくさん練習してきたので、まずはショート(プログラム)で、自分を信じて、全力を尽くせるように頑張りたいと思います」

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