チャ・ジュンファンが行くところには、氷の上であってもそれ以外の場所であっても、いつも独特の雰囲気がかもし出されている。彼は、世界で最も人気のあるフィギュアスケート選手のひとりであるだけでなく、最も優秀なスケーターのひとりであるという自信にみなぎっているようだ。
2023年3月の世界選手権では、チャはこれまでの自身の中で最高と言える2つのプログラムを組み立てて表彰台に上り、男子シングルでは大韓民国初となる歴史的な銀メダルを獲得した。
「自分としては、特に何も変わっていないと思います」と、チャはOlympics.comがその後の生活に何か変化があったかどうか質問したことに対して率直に答えた。「僕はただ、そして今でも幸せなスケーターです」
彼は100万ワットの笑顔を輝かせ、国内の至るところで俳優やモデルの仕事をこなしてきたが、22歳の彼には真剣に目指す大きな目標がある。それは、次のミラノコルティナ2026冬季オリンピックで成功することだ。
「昨シーズンは成功を収めることができましたが、僕はもっと自分自身に挑戦し、アスリートとして向上し続けたいと思っています」と彼は語った。「ベストを尽くし、ただ一生懸命取り組み続けるだけです」
2023年世界選手権の後、チャは彼のキャリアの中で最も重大な決断を下した。彼はトレーニングを行うために母国に戻り、また世界的なコーチであるブライアン・オーサー氏(カナダ)との8年間のコーチング契約を解消したのだった。
チャ・ジュンファン:ブライアン・オーサー氏とともに「大きく進歩した」
「僕は長い間ブライアンと一緒に取り組んできました。僕たちはお互いをよく理解していました」と、カルガリー1988冬季オリンピック銀メダリストであるオーサーコーチとのパートナーシップについてチャは話した。
「コロナ禍以来、すべてが変わりました」と、帰国して母国でトレーニングを行っていた彼は振り返った。「僕は夢のオリンピックのために厳しい練習とトレーニングを続ける必要がありました。しかし、ブライアンとトレーニングを共にすることはとても困難なものでした。僕たちは競技会のみでしか会うことができませんでしたから」
彼がジュニア時代を過ごしたカナダ・トロントでの時間は、彼自身を大きく成長させた。「(トロントのスケートクラブ)クリケットクラブでの練習とトレーニングによって、僕はジュニアの頃から大きく進歩したと思います。技術的にも芸術的にも、多くの進化がありました」
「コーチと選手の関係を終えるのはいつも残念なことです」と、オーサー氏は昨年10月にOlympics.comに語っている。「私たちは長い間一緒に過ごしましたが、チームとして彼の成功に役立てたのではないかと思います」とオーサー氏は加えた。
「彼は素晴らしいスピン技術を持っています。続けて練習すれば、いつかは最高のものとなるはずです。彼の技術を目の前で見ると本当に素晴らしく、競技に向けてよいタイミングでピークに達するよう自分をコントロールすることが上手です」
チャは、2月1日から4日まで中華人民共和国・上海で開催される四大陸選手権に照準を合わせてピークを迎えられるよう準備している。チャは2022年大会で優勝しているものの、その時期が北京2022オリンピックと重なったことから世界のトップスケーターの多くは出場していなかった。
今回の四大陸選手権でも、世界選手権2連覇中の宇野昌磨もいなければ、2023-24年グランプリファイナルのチャンピオンであるイリア・マリニンも出場しない。
しかし、チャには強力なライバルたちがたくさんいる。その中には、怪我のために不本意な昨シーズンを過ごしたが、現在はベスト近くまで復調してきている北京2022銀メダリストの鍵山優真らが含まれる。
「僕は再び強くなって戻ってくる」
オーサー氏との提携は解消されたが、チャは2018-19年シーズン以降、一緒に取り組んできた著名な振付師シェイ・リーン・ボーンとのつながりを継続している。4回転ジャンプとスピンの組み合わせ、フットワーク、プログラムの連続性などに重点を置き、チャは母国への練習拠点の移行を経て、スケートの2つの面の発展に引き続き焦点を当て練習に取り組んでいる。
「フィギュアスケートには技術的な要素と芸術的な要素があります。僕は常にそれらを一緒に取り組み、同時に進めていきたいと思っています」とチャは説明した。「僕は特にジャンプと振付にベストを尽くしています。それこそが、フィギュアスケートの中で僕が最も好きなところです」
そしてボーンの存在は、チャにとって決して小さいものではなかった。
「彼女と一緒に取り組んでいる時、僕は彼女から多くのエネルギーと力を得ることができます」と彼は説明した。「常に素晴らしいアイデアと創造性が僕にもたらされ、そこから多くを学ぶことができます」
「それがトレーニングをより楽しくしてくれます。もっとも、ある部分では厳しいのですが、それこそがチャレンジであり、僕をより高めてくれるものなのです。僕は本当にそのことを幸せに思います」
チャの才能は、16歳の時に出場した平昌2018オリンピックにおいて世界に示される前から明らかだったが、これまでに出場した2度のオリンピック(平昌2018と北京2022)での経験を未完成と捉えている。だからこそ彼は、3度目のオリンピックとなるミラノコルティナ2026冬季オリンピックに挑む。
「ミラノでの目標はこれまでと同じようにその瞬間を心から楽しむこと、そして、ベストを尽くすだけです」と彼は話した。
チャの到達しているレベルからであっても成長は続く。チャは昨年10月のスケートカナダのフリースケートで不本意な成績に終わったが、彼はそれを成長のための経験と答えた。後に、彼はその時の足首の怪我を明らかにしている。
「今回はうまくいかなかったと思いますが、とても成功した昨シーズン後の僕にとっては素晴らしい経験となりました」とチャは語った。「これはまだスタートに過ぎません。僕はこれからも強いままでいたいと思いますし、もっと強くなって再び戻りたいと思っています」