4月17日に横浜武道館で行われる全日本女子柔道選手権大会には、日本各地域の選出選手と推薦選手ら合計38選手が参加し、体重無差別でトーナメントを行い、日本一を決定する。
4月上旬に行われた全日本選抜体重別選手権を経て、10月の世界選手権(ウズベキスタン・タシケント)の日本代表選手が発表されたが、女子78kg超級と男子100kg超級は未定。女子78kg超級の選手にとっては、今回の大会後に世界選手権の女子日本代表が決定するだけに、重要な試合となってくる。
78kg超級といえば、東京オリンピックで金メダルを獲得した**素根輝**(そね・あきら/21)の存在を忘れてはならないが、素根は3月に左膝を手術し、全日本選抜と今大会を欠場している。
ここでは2021年の世界選手権女子78kg超級を制した朝比奈沙羅(25)と、全日本選抜体重別選手権の女子78kg超級で2連覇中の冨田若春(わかば/25)に注目してみたい。
世界選手権、代表の座を狙う朝比奈と冨田
柔道に励む傍ら、2020年から医学部にも通うなど文武両道を貫くのが、ジュニア時代から注目を集めてきた25歳の朝比奈沙羅。2021年に行われた東京2020の代表争いを素根と繰り広げ、軍配は素根に上がったが、それでもしっかりを前を見つめ、昨年は3年ぶりに世界王者に輝いた。
先月には自身のインスタグラムで、「パリオリンピックに向けて、まずは今年の世界選手権の代表権を掴むべく、4月の試合に向け、今日からまた頑張ります」と、決意表明。4月最初の大会となった全日本選抜は、新型コロナウイルスの陽性反応により欠場しただけに、今大会は気合十分に臨むことだろう。
一方、遅咲きながらもパリ2024に向けてやる気をみなぎらせているのが、25歳の冨田若春。昨年両膝を手術し、リハビリを乗り越えて術後初の実戦となった2月のグランドスラムパリでは見事優勝。4月の全日本選抜では、78kg超級で2連覇を果たし、自身のインスタグラムで「来週の皇后杯も頑張りたいと思います!」と意気込みをつづった。実績では朝比奈に劣るものの、全日本選抜との連続制覇で世界選手権の代表入りを狙う。
両選手が順当にトーナメントを勝ち上がれば、決勝で対戦することとなる。ふたりが最後に対戦したのは、2021年6月にブダペストで行われた世界選手権で、日本人対決となった78kg超級の決勝で、延長の末に、指導3の反則勝ちで朝比奈が冨田を下し、2大会ぶり2度目の優勝を飾った。
冨田は試合中に膝を負傷した。勝敗が決まったあと、歩くこともままならない様子だった冨田。朝比奈は歩み寄ってひと言ふた言声をかけると、冨田をおんぶして畳をおり、畳をおりる際には振り返って2人そろって一礼をした。
IJF(国際柔道連盟)はこの行為を称え、同団体が選ぶモーメント・オブ・ザ・イヤーが与えられた。朝比奈は「"素晴らしいことをした" とは思ってないけれど、それでも自分の行いで誰かの心に感動を届けられたなら幸いです」と、自身のインスタグラムに投稿した。
今回の全日本女子柔道選手権でふたりがどんな戦いを見せるのか。まずはそれぞれトーナメントを勝ち上がっていくことになるが、決勝で対戦することになれば、気迫のこもった試合が繰り広げられることだろう。