静水面を疾走する姿が美しいカヌー・スプリント、開催国枠のある男子カナディアン1000メートルに期待がかかる

1
静的でありながら、動的なカヌー・スプリント。カナディアンはよりダイナミックだ

人気アクティビティとして国内でも定着してきたカヌーだが、世界選手権も存在するれっきとしたスポーツとして、古くからオリンピックでも採用されている。そのカヌー種目のひとつ「スプリント」は静水面を疾走するスピード勝負の種目だ。

波もない静かな水面を鮮やかに疾走するスプリント

フラットウォーターレーシングとも呼ばれたカヌー・スプリントは、波のない水面上の直線コースをパドルで漕いで疾走する競技だ。ボート競技では漕手は背を向けて前進するが、カヌー・スプリントは漕手の正面に向かって前進する。夏季五輪には、1936年のベルリン五輪から初採用された。

五輪では、1艇に最大4人、最大8艇で同時にスタートする。フィニッシュラインを船首が通過した順が順位となる。それぞれ指定されたレーンからはみ出したり、フィニッシュ前の転覆、2度のフライングでも失格だ。また、複数人数の場合、フィニッシュラインを越えるまでクルー全員が船上に乗っていなければならない。

東京五輪では、東京五輪から男子カヤック500メートル、女子カナディアンの200、500メートルが新規採用された。以下が男女各6種目となる(すべてメートル単位)。

男子カヤックが、シングル200、1000。ペア1000、フォア500。男子カナディアンは、シングル1000、ペア2000。

女子カヤックは、シングル200、500。ペア500、フォア500。女子カナディアンは、シングル200、ペア500となる。

パドルの違いで大きく性格が変わるスラローム

カヌー・スプリントは、船の形状とパドルによって2種目に大別される。

コクピット以外を閉じたクローズドデッキの艇内に操舵ラダーがある小舟で、両端にブレード(水かき)がついたパドルで漕ぐ種目の総称を「カヤック」と呼ぶ。一方、漕手が片膝をつける形状の小舟で、片側のブレードしかないパドルで漕ぐ種目の総称が「カナディアン」だ。

カヤックは、ダブルブレードパドルでリズム良く水面を漕ぐ華麗な動きが特徴。スピードも速く、特に短距離は他の地上競技とは違う興奮が味わえる。

カナディアンは、シングルブレードであることから、よりパワフルなレースになり、カヤックよりも選手の肉体の躍動を楽しめる。

スプリント五輪代表枠の争いは8月の世界選手権からスタート

東京五輪の各国代表選考は2019年8月の世界選手権(ハンガリー・セゲド)でほとんどの枠が確定する。その後、大陸別予選を経て、各種目残り1枠を2020年5月末から6月上旬のワールドカップ第2戦(ドイツ・デュイスブルク)で争う。

日本の開催国枠は、男子カヤック1000メートル、男子カナディアン1000メートル、女子カヤック500メートル、女子カナディアン200メートルにそれぞれ1枠がある。

スプリント帝国ハンガリーを中心に強豪欧州勢がひしめく

ソビエト連邦が猛威を奮った時代が過ぎてからも、東欧諸国や北欧勢が上位を支配する状況が長く続いている。特にハンガリーは女子が強く、ダヌタ・コザックはロンドン五輪でカヤックフォア500、カヤック500メートルで金メダル。続くリオ五輪では、その2種目に加え、カヤックペア500メートルで3個の金メダルを獲得した。

そんな中、ロンドン五輪から採用された女子カヤック200メートルでは、ニュージーランドのリサ・キャリングトンが2連覇しており、東京五輪でも3連覇を狙っている。

男子カナディアンはドイツのセバスチャン・ブレンデルが、シングル1000メートルでロンドン、リオで2連覇。リオではペア2000メートルも制しており、こちらも連覇を狙ってくるだろう。

東京五輪では男子カナディアン1000メートルに大注目

日本では練習環境的に200~500メートルが主力となっていたが、男子では開催国枠が確保された1000メートルで代表入りを狙う選手もでてきている。

2018年の日本カヌー・スプリント選手権でカナディアンペア500、1000メートルを制した小梶孝行が、東京五輪ではペアに加えシングルでも代表入りを狙う。同じくカナディアンの當銘孝仁も候補だ。2016年の日本カヌー・スプリント選手権を制すなど、リオ五輪は逃したものの、長く1000メートルを軸に研鑽を積んできた。両者の代表争いにも注目だ。

男子カヤックでは、アジア大会優勝経験もあるベテラン・松下桃太郎がロンドン五輪ぶりに五輪出場を狙っている。

女子では2018年アジア大会のカヤック200、カヤックペア500メートルで銅メダルを獲得した小野祐佳が筆頭だろう。カナディアンでは、ロンドン五輪に出場した大村朱澄や、2018年アジア大会カナディアンペア4位の久保田愛夏、桐明輝子も代表候補だ。

欧州勢にどれだけ食い込めるか、日本勢の活躍に期待しよう。

もっと見る