【スノーボード】北京五輪・女子|日本、メダルラッシュを期待させる陣容がそろう

1 執筆者 宮本あさか
Mitsuki Ono, Sena Tomita, and Ruki Tomita
(Getty Images)

スロープスタイル/ビッグエア:あの日の衝撃を、北京でも

村瀬心椛がついにオリンピックの大舞台に上がる。平昌五輪の3カ月後。ノルウェーで行われたXゲームのビッグエアで、当時13歳で世界に衝撃を与えた。ハーフパイプの女王クロエ・キム(アメリカ合衆国)の記録を塗り替える、史上最年少優勝。なにより、平昌五輪金メダリストのアナ・ガッサー(オーストリア)が、オリンピック本番で使用した技よりもはるかに難度の高いエアを決めて。

2018年世界ジュニア選手権での村瀬はビッグエア、スロープスタイルともに金メダルを勝ち取っている。今季は両種目で念願のワールドカップ初優勝。もちろんオリンピックでも両方のメダルを取りに行く。スロープスタイルでオリンピック2連覇中の31歳、ジェイミー・アンダーソン(米国)や、今年1月のXゲームで両種目金メダルの20歳、ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)との、2種目にまたがる頂上決戦は、とてつもなく楽しみだ。

平昌五輪のビッグエアで4位だった岩渕麗楽も本命の1人。ビッグエアでのW杯6勝は、勝利数ではガッサーの7勝に次ぐ現役2位。ただ、30歳ガッサーのW杯勝利は全て平昌五輪前で、2020年Xゲーム・ノルウェー大会以来は大きな快挙から遠ざかっているのに対して、岩渕は2019年、2020年と2年連続でW杯種目別総合優勝も果たしている。さらに昨春にはスロープスタイルでも初めてのW杯勝利。両種目でのメダルを射程圏内にとらえる。

スロープスタイル、ビッグエア、ハーフパイプの3種目を合わせたパーク&パイプ部門で2018年、2019年と2年連続W杯総合優勝を達成した鬼塚雅だが、今季の滑り出しは必ずしも上々ではなかった。W杯ビッグエアの開幕2戦で、いずれも決勝に残れなかった。しかし1月中旬のXゲームでビッグエア3位に飛び込み、北京五輪に向けて準備が整っていることを証明した。ちなみに過去参戦した中国開催のW杯は優勝2回、2位2回と、非常に相性がいいことも朗報だ。

また22歳の芳家里菜は、15歳でスロープスタイル全日本チャンピオンに上り詰めてから足掛け7年。W杯本格参戦2シーズン目で、夢のオリンピック出場を叶えた。

ハーフパイプ:伸び盛りの日本女子、天下を奪え!

出場、イコール、勝利。そんなクロエ・キム(米国)の桁外れの凄さは、まるで色あせない。わずか21歳ながら、すでにありとあらゆるタイトルを手に入れた。オリンピックで金1個、世界選手権で2度、W杯総合優勝2回、Xゲームで金6個。W杯でも出場した5試合連続で当然のように優勝を持ち帰り、北京五輪でも圧倒的な金メダル候補に挙げられる。

ただし日本の女子4人は間違いなく、キムを脅かし……、頂点から追い落とせるだけのポテンシャルを持っている。キムより4歳年下の小野光希は、4年前のキムに負けないほどの実績を有している。2018年、2019年には世界ジュニアを連覇。さらに2016年のキムと同じように、2020年のユースオリンピックで金メダルを得た。

W杯での直接対決は2回。いずれもキムが優勝をさらい、小野は2位に泣いた。ただ2021年1月は大差でねじ伏せられたものの、2022年1月はわずか1.25点差。オリンピック女王になって以来、FIS(国際スキー連盟)管轄のレースで負けなしのキムを最も僅差まで追い詰めたことになる。現在進行系で成長する17歳小野が、北京五輪で立場を一気に逆転してしまうかもしれない。

男子で平野兄弟がそろって北京に飛ぶように、女子では冨田せな・るき姉妹がともにメダルへ意欲を燃やす。初出場の平昌五輪では8位入賞を果たした姉のせなは、今年1月中旬のXゲームで初優勝。その1週間前には、2歳年下の20歳るきがW杯初優勝を手に入れ、3位のせなと姉妹表彰台を実現させていた。支え合い、切磋琢磨し、成長してきた冨田姉妹は北京五輪でも一緒に表彰台に乗ることを夢見る。

日本チャンピオンの今井胡桃は、2度目のオリンピック挑戦。2019年にはユニバーシアードで優勝し、2020年にはXゲームで銀メダルを獲得した。Xゲームは過去2大会でも4位と、ハイレベルな戦いを続けている。4年前に予選通過を果たせなかった悔しさを北京五輪でぶつけたい。

パラレル大回転:ベテランから新人へ、メダルのリレー

経験と実績なら、竹内智香の右に出るものはいない。初めてのオリンピックは2002年のソルトレイク大会。以来、必ず4年に1度ずつ、大舞台へ戻ってきた。2014年ソチ五輪では、4度目の挑戦にして、ついに銀メダルを手に入れた。

平昌五輪で5位入賞を果たした後、竹内は競技の世界から遠ざかった。引退するつもりだったとも言う。しかし2シーズンの空白を破り、戦いの世界へ復帰。2021年2月には4年ぶりのW杯表彰台に上った。そして38歳になった今季、人生6度目のオリンピックに出場する。

竹内が初めてのオリンピックに出場してから約1年半後に、三木つばきは生まれた。本格的に世界を転戦して、いまだ4シーズン目でしかない。ただし18歳の三木はすでに中身の濃い経験を積んでいる。ジュニア世界選手権に3年連続で出場し、計4つのメダルを獲得した。昨年12月には初めてW杯表彰台にも乗った。

北京五輪の表彰台は間違いなく手の届く距離にある。平昌五輪3位で過去2シーズンを圧倒してきたラモナ・テレジア・ホフマイスター(ドイツ)や、ジュニア世界選手権2連覇の勢いで今季W杯種目首位を突っ走るソフィヤ・ナディルシナ(ROC)と対等に渡り合うだけの能力は間違いなく備わっている。

本人も「北京では表彰台が目標」ときっぱり宣言する。ただし、どうやら偉大なる先輩にならって、長期的な視野でキャリア計画も描いているようだ。三木にとって究極の目標は2026年大会で金を取ること。つまり2022年大会の表彰台は、4年後への重要なステップなのだ。

スノーボードクロス:4年後へのスタートライン

2021年2月、初出場の世界選手権で、左膝の前十字靱帯と半月板断裂を負傷。そこから長い時間をかけ、心身の痛みから立ち直った中村優花にとって、オリンピックこそが正真正銘の復帰戦だ。

2シーズン前にはジュニア大会で海外公式戦初優勝を飾り、昨季は国外のシニア公式戦で初めてトップ5入りも果たした。しかし、順調な成長はケガで強制的に停止させられた。一時はオリンピックの夢を諦めかけたとも言う。

幸いにも中村は、この1月で21歳になったばかり。ケガ前の実績と、高い将来性を評価され、北京五輪への切符が手渡された。全てのアスリートにとって憧れの大舞台で、キャリアを再スタートさせる。明るい未来へ向かって走り出す。

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