スノーボード競技の中でも、コースに旗門を設けてスピードを競い合うパラレル回転やパラレル大回転。アルペン種目と呼ばれるこれらの種目において、日本女子では**竹内智香が第一人者として自身6度目のオリンピックを迎える中、今季のワールドカップでは高校生アスリートの三木つばき**が初の表彰台に立つなど、躍進を遂げている。
**北京オリンピック**に先駆けて行われた1月22日のオンライン会見で、北京での目標を「表彰台」と力強く口にした三木。元気あふれる笑顔が印象的な18歳のこれまでを辿った。
8歳の心に火をつけた「世界の速さ」
2003年6月生まれの現在18歳。静岡県掛川出身の三木は、父親の影響で4歳からスノーボードを始めた。小学校に上がる前に出場した大会では、年上の選手らを相手に小学生女子の部で3位となり「悔しい」思いをするなど、トップアスリートとしての素質の片鱗をのぞかせる。
スノーボード少女を本気にさせたは、8歳の頃に参加したイベントだ。来日していたバンクーバー2010銅メダリストの**マチュー・ボゼット**(フランス)の滑りを見て、「世界にはこんなに速く滑れる選手がいるんだ」と感銘を受け、「私も世界で一番速く滑れる人になりたい」と心に決めた。
小学3年生から6年生までの冬の期間は、雪を求めて単身で長野県に滞在。親元を離れて練習を積み、「ただただ滑れることが嬉しかった」と振り返るほどスノーボードに没頭した。
自分の描いた階段を一歩ずつ
15歳で初めて出場したワールドカップのバドガシュタイン大会では、世界の強さを目の当たりにする。ジュニアの国際レースや国内大会では手応えが感じられる成績を残したものの、同大会のパラレル回転では39人中37位。「全てでこだわりが全く足りていなかった」(インスタグラムより)ことを実感する。
だが、それは同時に新たな学びや今後のモチベーションにもつながる。昨シーズンには、ワールドカップの各ステージで「トップ8に3回入ること」を目標にトレーニングを積み、7位が3回、4位が1回という成績を残す。さらに今季は「トップ4に3回」を掲げ、ここまでに初めての表彰台(2位)1回、4位1回とするなど、自分が描く目標を少しずつ達成している。
▼ワールドカップで初めての表彰台となったロシア・バンノエ大会決勝の様子=2021年12月12日
速く滑るための探究心は人一倍で、三木は自分の滑りを細かく振り返って課題や改善点を見つけるとともに、トップアスリートからも積極的に世界一になるためのカギを学ぶ。国際大会ではトップ選手からサインをもらう習慣があると話す三木は、サインと同時に「世界一になるためにはどうしたらいいか?」と尋ねる。その中でも、平昌オリンピック銅メダリストの**ラモナテレジア・ホフマイスター**(ドイツ)からの「Stay Strong(強くあり続けろ)」という言葉は三木の胸に響き、「そういうふうに言える選手になりたい」と目を輝かせる。
同い年のソフィア・ナディルシナ
北京オリンピックで三木の前に立ちはだかる相手といえば、アルペン種目のトップに君臨する、前大会覇者の**エステル・レデツカ(チェコ)や前述のホフマイスター、三木と誕生日が2週間ほどしか変わらないROCのソフィア・ナディルシナ**などがいる。過去2大会の世界ジュニア選手権のパラレル大回転で、ナディルシナに次いで2位となっている三木は、北京オリンピックを前に行われた1月22日のオンライン会見で「ソフィア選手は、私の中でリスペクトすべき人。彼女の今の勢いに並走できるようになりたい」とした上で、「いつかライバル言えるようになったらいいなと思います」と口にした。
まもなく北京オリンピックの舞台に立つ三木だが、その先にはミラノ・コルティナ2026もある。同会見でミラノを見据えた上での北京の位置付けについて尋ねると、「ある種のスタートライン。ミラノで金メダルをとるというのを目標にする中で、オリンピックがどういうものなのかを実際に肌で感じる機会になりますし、自分が知らない世界で自分がどれくらい力を出せるのかを知る機会になると思います」とし、それを今後のワールドカップや世界選手権、ミラノ・コルティナ2026オリンピックにつなげていきたいと、力を込めた。未来を見据えた戦いが、まもなく幕を開ける。
三木が出場予定のスノーボードのパラレル大回転(パラレルジャイアントスラローム)は、クオリフィケーションランから、1回戦、準々決勝、準決勝、3位決定戦、決勝まですべてが2月8日(火)に実施される。