障害馬術は人馬一体となって障害物を飛び越え、ミスの少なさと走行時間を争う
高さ160センチメートルに及ぶ障害物も
馬術競技のなかで最もアクロバティックな技術を求められるのが「障害馬術」だろう。人馬の息を合わせ、コースに設置された奥行き200センチメートル、あるいは高さ160センチメートルにも至る障害物を飛び越えていかなければならない。オリンピックのでは過去に一度しかメダルを獲得したことがない日本勢だが、2020年に向けた視界は決して悪くない。
馬術の本場とも言えるヨーロッパ勢が強豪
2020年の東京五輪で、馬術競技は、馬事公苑、東京スタジアム、海の森クロスカントリーコースが主な会場となる。「障害馬術」は1964年の東京五輪でも使用された馬事公苑がメーン会場として、8月4日(火)と5日(水)、7日(金)と8日(土)に行われる。
障害馬術は、コース上に置かれた数々の障害物を飛び越え、その際のミスの少なさと走行時間で競う。障害物を落下させたり、障害物の前で馬が止まったりすると減点される方式が基本となる。高さ160センチメートル、奥行き200センチメートルのもの大きさの障害物も用意され、他の馬術競技と同じく、人馬の連携度が高さが勝負の明暗を分ける。
競技は個人と団体に分かれる。各国の個々の選手の人馬の出来は個人成績となり、各国チーム3人馬の成績を合計したものが団体の成績となる。
2016年リオデジャネイロ五輪の団体ではフランスが金、2012年ロンドン五輪の団体ではイギリスが金、2008年北京五輪の団体ではアメリカ、2004年アテネ五輪の団体ではドイツが金を獲得。近年の結果が示すとおり、馬術の本場とも言えるヨーロッパ勢が強豪となっている。
日本勢ではベテラン杉谷泰造と若手の御護守将太に注目
日本の歴史を振り返ると、過去に一人だけこの種目で金メダルを獲得したアスリートがいる。
1932年のロサンゼルス五輪に出場した西竹一(にし・たけいち)だ。外交官であった父のもと、裕福な家庭に育った西は少年時代から乗馬に触れていた。1930年、軍務として訪れていたイタリアでウラヌス号に出合い一目ぼれ。結果、この愛馬とともにロサンゼルス五輪の「飛越競技」で世界の頂点に立ってみせた。
華族に生まれたことから「男爵」を意味する英語を冠した「バロン西」という愛称で人気を集めた西以降、日本はオリンピックの馬術競技でメダルを獲得していない。
ただし、来たる東京五輪に向けて上昇気流に乗りつつある。2018年8月にインドネシアで行われたアジア競技大会では、障害馬術団体で銀メダルを獲得した。杉谷泰造、御護守将太(おごもり・しょうた)、枡井俊樹(としき)、福島大輔という4選手が、サウジアラビアに次ぐ2位の成績を収め、2020年を目前に確かな手応えを得た。個人決勝では、リオデジャネイロ五輪までオリンピックに6大会連続で出場している杉谷が4位、2019年5月3日に20歳となる成長株の御護守が5位と上々の成績を残している。
経験豊富なベテランと勢いある若手がうまく融合すれば、さまざまな障害も乗り越えていけるはずだ。日本勢が母国開催のオリンピックの障害馬術で、軽やかに結果をつかむシーンが期待される。