2020年の東京オリンピックからバスケットボール競技は、これまでの5人制に加えて、3人制(3×3/スリーバイスリー)も行われる。日本は男女ともに、3月のFIBA理事会で5人制・3人制共に開催国枠としての出場権を獲得。暗黒時代を切り抜けた日本バスケ界では、国内での代表選手争いにステージを移している。
5人制バスケ:東京五輪出場枠争いの概要
5人制の出場枠は男女それぞれ12チーム(国)。日本は男女ともに開催国枠として出場が決まっているため、残り11枠が争われる。FIBAワールドカップ、世界最終予選によって決定される。
男子の残り出場枠については、2019年に中国で開催されるFIBAワールドカップの結果次第で7枠が埋まる(各大陸上位1~2カ国/アフリカ:1、アメリカ:2、アジア:1、欧州:2、オセアニア:1)。残り4枠は、2020年開催の世界最終予選で決まる。
女子は2018年にスペインで開催されたFIBA女子ワールドカップを制したアメリカの出場が決まっている。残り10枠は、2020年開催の世界最終予選で決定される。
東京オリンピック出場確定国(9月17日時点)
<男子>
- 日本(開催国)
- ナイジェリア(FIBAワールドカップ・アフリカ)
- アメリカ(FIBAワールドカップ・アメリカ)
- アルゼンチン(FIBAワールドカップ・アメリカ)
- イラン(FIBAワールドカップ・アジア)
- スペイン(FIBAワールドカップ・ヨーロッパ)
- フランス(FIBAワールドカップ・ヨーロッパ)
- オーストラリア(FIBAワールドカップ・オセアニア)
<女子>
- 日本(開催国)
- アメリカ(FIBAワールドカップ・優勝)
開催国枠を得ることすら難しかった暗黒時代を乗り越えて
日本バスケ界は東京五輪を迎えるまで、“暗黒時代”といえる厳しい状況が続いていた。女子は前回のリオデジャネイロ五輪で20年ぶりベスト8入りを果たしたが、リオ五輪の時点で12年ぶり4度目の出場だった。男子にいたっては、1976年のモントリオール大会以来44年ぶりの出場である。
暗黒時代にあった日本バスケ界が変わるキッカケになったのが、2014年11月26日、国際バスケットボール連盟(FIBA)から日本バスケットボール協会(JBA)の組織統治力欠如に対して下った制裁命令だ。それはFIBA傘下の競技団体としての無期限資格停止という厳しい内容だった。
後に、FIBA主導でタスクフォース会議が実施されることになり、会議を主催するチェアマンには、Jリーグ初代チェアマンの川渕三郎氏が指名された。そして、制裁解除に向けて川渕氏が陣頭指揮を執り、統一リーグの結成に動く。この統一リーグこそが現在の「Bリーグ」だ。
制裁が解除できなければ、日本代表チームは国際試合に出場することもできない。もちろん、地元開催となる2020年の東京五輪にも大きく影響し、2016年のリオ五輪出場も危ぶまれていた。しかし、川渕氏は制裁を受けてから約9か月後の2015年8月9日に、資格停止処分の解除に持ち込んだ。まさに剛腕だった。
制裁解除から1年後の2016年リオ五輪では、女子日本代表が20年ぶりにベスト8へ進んだ。秋には、男子プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」が開幕。まさにバスケ界にとっては、新たなる歴史の1ページとなった瞬間でもあった。
制裁は解除されたが、課題は残されていた。男子代表が開催国枠で五輪出場ができるかだ。ワールドカップアジア予選が始まるまでは、アジアでも実績が乏しかったため、出場も厳しい状況だった。
開催国枠として出場権を獲得する条件の目安として、2019年ワールドカップ本大会に出場することが必要になる。自力出場となると、1998年から遠ざかっていたことから、五輪出場に向けて瀬戸際に追い込まれる格好となった。
1次予選は初戦から4連敗を喫し、予選通過が危ぶまれていたが、八村塁、ニック・ファジーカスが代表に合流したオーストラリア戦で大金星をあげる。ここからは怒涛の8連勝で、21年ぶり本戦出場を果たすとともに、五輪開催国枠出場に大きく弾みをつけた。
そして2019年3月に行われたFIBAの理事会で、2020年東京大会の開催国枠適用が男女ともに承認され、晴れて五輪出場が決まった。同時に、新種目である3人制でも男女ともに開催国枠が適用された。
5人制バスケ日本代表メンバー争いの行方
5人制日本代表は、『AKATSUKI FIVE(アカツキファイブ)』の愛称で国際試合に挑んでいる。東京五輪代表はまだ確定していない状況だが、まずは男子から検証する。ワールドカップアジア2次予選Window6のメンバーをここに挙げてみる。
男子代表候補
- 富樫勇樹
- 辻 直人
- 比江島慎
- 篠山竜青
- 太田敦也
- ベンドラメ礼生
- 竹内公輔
- 馬場雄大
- ニック・ファジーカス
- 田中大貴
- 張本天傑
Window6には選ばれなかったが、代表に大きく貢献した八村塁と、日本人として田臥勇太以来、史上2人目のNBA出場という快挙を達成した渡邊雄太は、ケガさえなければ代表に選ばれるだろう。他にも、海外を拠点としている若手選手がいる。
女子代表候補
女子においては、2019年度バスケットボール女子日本代表候補選手が発表された。
- 藤高(栗原)三佳
- 高田真希
- 水島沙紀
- 渡嘉敷来夢
- 本川紗奈生
- 石原愛子
- 内野智香英
- 町田瑠唯
- 宮澤夕貴
- 谷村里佳
- 本橋菜子
- 三好南穂
- 長岡萌映子
- 藤岡麻菜美
- 林 咲希
- 根本葉瑠乃
- 馬瓜エブリン
- 川井麻衣
- 赤穂さくら
- 佐藤奈々美
- 中田珠未
- 梅沢カディシャ樹奈
- 赤穂ひまわり
- 馬瓜ステファニー
- オコエ桃仁花
- 奥山理々嘉
これから迎える国際親善試合の出場選手は、この中から選抜される。五輪本戦でもここから多くの最終メンバー12名が選ばれるだろう。
3×3バスケ:東京五輪出場枠争いの概要
2019年3月に行われたFIBAの理事会で、新種目である3人制の3×3(スリーバイスリー)バスケットボールでも2020年東京五輪の開催国枠適用が男女ともに承認され、日本代表の五輪出場が決まった。3×3の出場枠は、男女それぞれ8チーム(国)だ。
開催国の日本を除いた残り7枠については、FIBA国別ランキングによって左右される。2019年11月11日時点のFIBA国別ランキングで上位3か国が選出される。ここで選出されなかった国・地域は1次予選に回り、20か国で3枠を決める。残り1枠は最終予選枠として、6か国により争われる。
男子日本代表候補選手には以前から3×3で戦っていた選手に加えて、Bリーグ選手が多く選出された。そして、3×3東京五輪日本代表条件は、以下のとおりである。
- 代表は4名で構成
- FIBA個人ランキングより、日本人選手の中で10位以内に入っていること。ここから最低2名は選出
- FIBA個人ランキングより、日本人選手の中で50位以内に入っていること。もしくは男子54,000ポイント、女子36,000ポイントを保持すること
※その後、開催国枠は削減され、男女合わせて1枠になった。
3人制バスケ 東京オリンピックでの開催国枠削減、男女合わせて1枠に
日本代表争いにはBリーグ選手も多数参戦
2019年5月9日現在のFIBA個人ランキングは以下の通り(日本人選手のみ)
◆男子
- 1位 落合知也★
- 2位 小松昌弘★
- 3位 池田千尋
- 4位 飯島康夫
- 5位 小寺裕介
- 6位 野呂竜比人
- 7位 斎藤洋介
- 8位 鈴木慶太★
- 9位 菊池 徹
- 10位 原 慎也
◆女子
- 1位 山本麻衣
- 2位 前田有香★
- 3位 栗林未和
- 4位 石川麻衣★
- 5位 安江 舞
- 6位 名木洋子★
- 7位 桂 葵
- 8位 宮下希保
- 9位 高原春季
- 10位 大沼めぐみ
★印:FIBA3×ワールドカップ2018日本代表選手
現在、多くのBリーガーが3×3の舞台にチャレンジしている。日本人10位以内は難しいとしても、日本人選手の中で50位以内か、男子54,000ポイント、女子36,000ポイントを保持することができれば、五輪出場もあり得ない話ではない。男女ともに5人制で代表候補から漏れた選手にとっては大舞台へのチャンスとなる。
現在、様々な場所で、3×3バスケの大会は開催されている。イベントのレベルによって、ポイントの加算が変わる。条件をクリアして、代表合宿でアピールできれば、世界で活躍できる可能性は大いにある。
東京オリンピック出場確定国(11月1日時点)
<男子>
- 日本(開催国)
- セルビア
- ロシア
- 中国
<女子>
- ロシア
- 中国
- モンゴル
- ルーマニア