【テニス】31歳の錦織圭は、USオープンでトップ30へ再浮上のキッカケをつかめるか!?

1 執筆者 神 仁司 Hitoshi Ko
Kei Nishikori
(Getty Images)

現地時間8月30日にアメリカ合衆国のニューヨークで開幕するテニス4大メジャー、グランドスラムの今季最終戦・USオープン(全米OP)に、錦織圭(ATPランキング55位、8月23日付、以下同)が挑む。昨年の全米OPでは、開幕直前に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染してしまい、出場を断念せざるを得なかったため、2年ぶりのプレーとなる。

Tokyo 2020(東京五輪)を単複ベスト8という結果で終えた錦織は「収穫もあったオリンピックだったので、これを機に大きなステップを踏みたい」と語った後、すぐに渡米して、わずか4日後には、ATPワシントンD.C.大会(8/2~8)でプレーした。

東京とワシントンD.C.には13時間の時差があり、蒸し暑い東京でプレーした疲れをリセットしないままでのプレーは、31歳の錦織にとって決して容易なことではなかったはずだ。ただ、世界ランキングがトップ50から陥落してしまっているため、少しでもランキングを再浮上させたいという切実な状況にあり、錦織はプレーを決断したのだった。

「(東京五輪で)ベスト4に入ったら(ワシントンD.C.)大会をスキップしようと思っていました。でも負けちゃったんで。からだ的にはやめたい気持ちはありました。時差もあるし、それでダメージはあるので、きついことは分かっていました。けど、ランキング的にもというところはあります。これが(自分が)トップ10だったら別ですけど、いまはそういう訳にもいかないので出ようかなという感じでした」
「やっぱりポイントは稼ぎたいですね。良い試合を重ねるということが、いまは一番大事かなと思うので、勝ちの量は増やしていきたいですね。日本で久しぶりにいい感覚を手に入れて、このいい感覚をなくさないようにはしたいなと思う」

ワシントンD.C.では、日本からの移動が間もないのにもかかわらず、錦織の武器ともいえる細かいステップと素早いフットワークが健在で、それと併せて、東京五輪で好調だったグラウンドストロークが引き続き良かった。

「(2019年秋に手術した右)手首のケガから復帰して初めてぐらいですね。やっとフォア、バックとミスしないで、ラリーがこんなに長くできる感覚というのは。今年の初めのちょっと戻ってきたなという感覚といまは違って、吸いついてくれるというか何も考えなくても入るというか。あとすごい細かいところでいうと、相手のロブのボールとかが前にいた時に自然とすごい際どいところでもこれはアウトだなと感じられるなど、ちょっとゾーンに入ったというか、細かい感覚というのは出てきました」

特に、錦織の最大の武器であるフォアハンドストロークが好調で、トップスピンのかかり具合、ボールスピード、ボールが弾んでからの伸びなど、トップ10時代を彷彿とさせるものだった。

「フォアは変えようと思って、ウィンブルドンの後から練習でひたすら打つ、振り抜くというのを練習で意識してやるようにしました。そこから結構入るようになってくれて、それが良かったのかオリンピックで急に入り始めたのか分からないですけど、もしかしたらそれが良かったかなと。いままで手首のことがあったり、肩もあったりしていたので、それが最近なくなって練習から振り切ってみようという。たぶん見た目で違うぐらいフォアは良くなったのかなと思います」

ATPワシントンD.C.大会で力強く勝ち上がっていった錦織は、2019年ATPバルセロナ大会以来、ツアーで約2年3カ月ぶりにベスト4へ進出した。ワシントンD.C.で錦織は、2015年に優勝しており、得意の北米ハードコートと錦織の好調なテニスがマッチした形になった。

「取りあえずは満足していますね。3試合勝って次負けるみたいなのが、ずっと続いていたので、トップ10がいないこの大会で勝つのは大事なこと。なかなか連続して勝てなかったので、いつもトップ10の誰かに阻まれて。勝っても勝ち続けられないことが続いていたので、そういう意味ではうれしいっちゃ、うれしいですね」

準決勝で、錦織は、2時間45分におよんだフルセットの末惜敗した。さすがに5試合目となり疲れは隠せず、持ち前の俊敏なフットワークが最後は鈍ってしまった。また、気がかりだったのは、「ちょっと肩があれだった。昨日(準決勝の前日)から痛みがあって、サーブのスピードが出せず」と錦織が打ち明けた右肩の痛みだった。

ATPワシントン大会D.C.大会をベスト4で終えた錦織は、右肩に痛みがあるままマスターズ1000・カナダ大会(8/9~15)の1回戦に出場。フルセットで勝つには勝ったが、ウォームアップから試合の最後までサーブを恐々と打っていた。

その後錦織は、「長時間のテニスで、右肩の痛みがひどく、これ以上ケガのリスクを負いたくありません。いまは健康な状態でコートに戻れるよう集中しています」として、2回戦を前に棄権。続くマスターズ1000・シンシナティ大会(8/16~22)も欠場した。

調子が良かっただけに、できるだけ試合をして勝ち星獲得へトライしたかったのは分かるが、目に見えてサーブのスピードが落ちていたのに、カナダで強行出場したのが裏目に出てしまった。

錦織は、もっと自分の体の声を聞くべきだし、マックス・ミルニーコーチやワシントンD.Cで合流したマイケル・チャンコーチらチーム陣も、もっと錦織の体調管理にも目を配るべきだった。右肩の回復を図りながら、テニスの調整をしていかなければならない錦織だが、全米OP(8/30~9/12)までに、どこまでコンディションを整えられるのか見守らなければならない。

また、全米OPでも、錦織はノーシードで戦うため、1回戦で上位シード選手と当たらない運も必要で、大会序盤から体力を消費し過ぎないようにしたい。錦織自身も、グランドスラムでのシードを取り戻したいと考えている(グランドスラムでのシードは32)。

「取りあえずそれが第一ですかね。思ったより落ちているので、どこでもシードが付くことがなくなってしまった。取りあえずは50位、30位にはと思っていますけど、30位以内には年終わりに入っていたいかなと思っています」

2021年シーズンの中にトップ30への返り咲きとなると、全米OPでの良い結果が必要不可欠となる。もちろんケガの再発防止を心がけなければならないが、その中で錦織が、最も得意とする全米OPのコートで躍動することを楽しみにしたい。

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