オリンピックゴールが決まることは珍しく、ゴールが決まれば、目撃したサッカーファンにとってそれは特別な瞬間となる。
コーナーからのセットプレーによってゴールが決まることは日常茶飯事だが、コーナーから直接ゴールが決まることは極めて稀である。
その名前から推測できるように「オリンピックゴール」という言葉は、オリンピックと関係がある。
オリンピックゴールの起源を知るには、およそ100年前にフランスの首都で開催されたオリンピックにまで時計の針を戻さなければならない。ワールドカップを兼ねていたこの大会の男子サッカーでは、ウルグアイが金メダルを獲得した。
優勝からわずか1カ月後、彼らはアルゼンチンとの親善試合に臨んだ。ブエノスアイレスで行われたこの親善試合では2試合が行われ、その第2戦がサッカーの歴史を変えることとなる。
前半15分、アルゼンチンのセサレオ・オンザリがコーナーから放ったボールが、誰にも触れられることなく直接ウルグアイのネットを揺らしたのである。サッカー史上、初めてこのゴールが記録された瞬間だ。
当時、このゴールは「オリンピアンに対するオンザリのゴール」と名付けられたが、やがてこの名前は短縮され、「オリンピックゴール」と呼ばれるようになった。
作家のエドワルド・ガレアノは1995年に書き著した「サッカーの光と影」の中で、「オマージュとして、あるいは皮肉として、あの珍しいものが『オリンピックゴール』と呼ばれるようになった。そして、今でもそれが見られるのは数少ない機会に限られる。オンザリはゴールを決めて以降、一貫して『オリンピックゴール』は意図的なものだったと言っているが、長い年月が過ぎた今も、不信感は続いている。コーナーキックが誰も触らずにネットを揺らすたびに、人々は喝采で祝うが、彼らはそれを信じていない」と、記している。
オリンピックゴールが主要大会で決まった回数は?
ワールドカップでのオリンピックゴール
オリンピックゴールはその難しさから、ワールドカップではほとんど記録がない。
男子ワールドカップで記録された唯一のオリンピックゴールは、1962年にチリで開催された大会で、コロンビアのマルコ・コールが決めたものである。
コールはソ連との1回戦でオリンピックゴールを決め、4-4の引き分けに貢献した。特に印象的だったのは、このときのゴールキーパーが、サッカー界において最も偉大なゴールキーパーのひとりと称されるレフ・ヤシンだったということである。コールがオリンピックに出場することはなかったが、ヤシンはメルボルン1956オリンピックで金メダルを獲得した。
オリンピックでのオリンピックゴール
オリンピックゴールがその名の由来となった舞台を鮮やかに彩るまで、世界はさらに半世紀を待たねばならなかった。
オリンピックで初めてそのゴールが決まったのは、ロンドン2012のことである。ミーガン・ラピノー(アメリカ合衆国)がコーナーから放ったゴールが相手チームのゴールネットを揺らしたのだ。
女子サッカー界の大スターであるラピノーは、ワールドカップ2大会(2015年、2019年)で優勝し、オリンピック2大会(ロンドン2012金メダル、東京2020銅メダル)でメダルを獲得するなど、勝利について熟知しているプレーヤーだ。
さらに彼女は、誰にも真似できないオリンピックゴールの記録を持つ。オリンピック史において記録されている2つのオリンピックゴールは、ともにラピノーが決めたものだ。
1つ目は、オールドトラフォードで行われたロンドン2012のアメリカ合衆国対カナダ代表の戦いで、ラピノーはオリンピックゴールを決めると、試合は5-4で終了し、アメリカ合衆国チームは金メダルに向けて前進した。
東京2020の3位決定戦でラピノーは2つ目のオリンピックゴールを決め、アメリカ合衆国代表はオーストラリア代表を4-3で破り、オリンピックの表彰台に立った。