パリ2024オリンピックまであと2年。眞鍋政義監督が5年ぶりに指揮を執るバレーボール女子日本代表「火の鳥NIPPON」。新体制で臨んだネーションズリーグは7位で閉幕した。
スタートは上々だった。参加16チーム中、唯一の開幕8連勝を飾り、首位をひた走る。好調の要因はいくつもあるが、まず1つ目は日本にとって最大の武器であるサーブだ。それぞれがスピードと狙うコースを細かく意識し、徹底して相手のウィークポイントを突く。
高さでは世界で劣る日本だが、サーブで崩し、相手の攻撃を限定させれば持ち前の高いディフェンス力でボールをつなぎ、勝負どころはエースで主将の古賀紗理那が決める。まさに必勝パターンともいうべき形ができ、序盤から勝ち星を重ねた。
加えて、日本代表の好調につながったのが古賀の対角に入った井上愛里沙の活躍だ。もともと攻撃力の高い選手で、相手ブロックの出方や、レシーブの位置を見て空中で打つ場所を咄嗟に判断するクレバーさを持つ。高いブロックにも正面からぶつかるばかりでなく当てて出したり、間を抜いたり、技ありのスパイクも光り、古賀に次ぐ得点を叩き出した。
前衛からの攻撃に限らず、バックアタックも得意としており、日本代表が目指す4枚攻撃も随所で見られた。相手ブロックを振ろうとして無理に打ち急ぐのではなく、複数のポジションから同時に攻撃を仕掛けることで相手の守備は分散。特にスピードを生かしたバックアタックは世界からも脅威と見られ、眞鍋監督が「日本のバックスパイクは何なんだ、と驚かれた」と明かすほどだった。
井上だけでなく、存在感が光ったのは同じアウトサイドヒッターでセッター対角のオポジットに入った林琴奈だ。サーブレシーブの範囲も広く、パスをしてから攻撃に入るスピードも速い。攻撃のバリエーションも豊富で、強打だけでなく絶妙な位置に落とすプッシュボールも有効で、バックライトからも積極的に攻撃参加する。決して派手ではないが、林の貢献度は日本の勝利に大きな影響を及ぼしていたのは間違いない。
決して目立たずも勝利に不可欠な存在といえば、守備の職人、リベロの小島満菜美とセッターの関菜々巳だ。どれだけスパイカーに得点を取らせるかは勝敗に直結する。そこまでのプレーを、高いレベルで発揮したのが彼女たちだった。
両者共にコミュニケーション力が高く、タイムアウト時には主将の古賀だけでなく、古賀を支える存在となるべく、小島が積極的に指示を出すシーンも目立った。セッターの関も、これまで日本代表候補に選出されながらも、最後のメンバーに残り切れなかった悔しさをぶつけるがごとく、多彩な攻撃を繰り出し、攻撃陣を盛り立てた。
さらに光ったのが、スターティングメンバーだけでなく、途中から投入される選手の活躍だ。象徴的だったのがアウトサイドヒッターの石川真佑だろう。韓国との開幕戦はスタメンで出場するも、翌日のドイツ戦は相手の高さに苦戦し、途中交代した。
その後はリザーブに回り出場機会も限られ、苦戦する姿も見られたが、セット終盤や試合終盤にリリーフサーバーで投入されると、必ずと言ってもいいほどポイントにつなげる好サーブを放ち、チームの勝利に貢献した。敗れはしたが、最終戦となったブラジルとの準々決勝でも途中出場し、それまでのうっ憤をはらすようなスパイクを次々決め、爪痕を残した。
予選グループリーグ敗退を喫したTokyo2020からわずか1年。崖っぷちに追い込まれた状況からの再スタートではあったが、主将の古賀が「雰囲気がいいし、チームとして戦えている実感がある」と言うように、開幕からの連勝も重なり、チームのまとまりも高く、期待を感じさせるチームになったのは確かだ。
だが、古賀が全選手の中で総得点が2位と、高い攻撃力を発揮している一方、裏を返せば古賀に攻撃が集中している「古賀頼み」ともいうべき課題も浮かび上がる。実際、カナダで行われた予選ラウンド第3週では日本の攻撃に対しても警戒が高まり、特に古賀には厳しいマークがつく中、4連敗を喫した。
武器であるサーブやバックアタックの精度を高めることはもちろんだが、今年度最大のターゲットとする世界選手権まで2カ月余り。選手選考も激化することは予想され、課題克服に向け、合宿でレベルアップすべき要素も複数ある。
だが、それもすべて世界選手権で望む結果を出すためであり、その先のパリ2024でも叶えるべき目標がある。ここからどれだけの成長を遂げるのか。伸び盛りの選手が多いだけに、浮き彫りになった課題も成長材料として、さらなる進化に期待したい。