パリ2024市民マラソン「Marathon Pour Tous」、オリンピックコースを走るランナーたち

オリンピックマラソンと同じ日に、同じコースで開催される市民マラソン「Marathon Pour Tous」。出身地や運動能力の異なる人たちが参加して行われるこのレースへの出場資格を獲得した選手たちが、その喜びをOlympics.comに語った。

1 執筆者 Julie Trosic
Paris 2024's Marathon Pour Tous - some of the lucky runners
(Arquivo pessoal de Barbara Humbert, Murat Onhon, Jorgelina Bernasconi e Ricardo J. Martinez Ortega)
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オリンピックに参加すること以上に、オリンピックを体験する方法があるだろうか?

5ヶ月後に迫るパリ2024オリンピックでは、「Marathon Pour Tous」(すべての人のためのマラソン)と題する市民マラソンが予定され、参加資格を得た一般市民らがオリンピックをより身近に感じることになる。

8月10日(土)に行われるこのナイトレースでは、過去4年間で行われたイベントを通じて参加資格を得た20,024人の参加者が42.195km、そして10kmのレースに挑むことになる。

参加者は最年少で16歳(10km)から最高齢で95歳と幅広く、多くのランナーたちが号砲を待ち侘びている。参加者たちはどんな思いでマラソンに取り組み、「Marathon Pour Tous」に参加するのだろうか。Olympics.comでは出場資格を得た市民ランナーたちに話を聞いた。

安らぎを求め、絆を深めるためのランニング

マラソンを始めたきっかけや、取り組む目的は人それぞれだ。心の安らぎを得るためにひとりで黙々と走り、喜びを感じる人もいれば、友人や家族と情熱を分かち合いたいランナーもいる。

49歳のイタリア人、カルラ・マンナーレさんは、子どものころから「本の虫」で時が経つのも忘れて本を読み漁ったが、スポーツとの出会いが彼女の人生を変えた。

それは10年前の出来事だ。両親が病気で重い障がいをもったことから、彼女は夫とともに家業を継ぎ、両親の面倒をみることになった。それは決して楽な時期ではなかったが、彼女は合間を見て散歩に出かけるようになり、それがランニングへと発展した。

最初のころは「走り始めるとすぐに涙が出てきて、走れば走るほど涙が溢れてきました」と振り返るマンナーレさんは、「でも、家に帰ると元気を取り戻し、幸せやエネルギーをチャージできていました」と続ける。

10年が経った今、ランニングはすっかりマンナーレさんの日常生活の一部に。走ることを通じて、どんなに困難なことでも一歩ずつ前進すれば乗り越えられると実感しているという。

アルゼンチンのジョルジェリーナ・ベルナスコーニさんが2012年にランニングを始めた理由は、フランス人の友人アンヌ・マリー・ラングレさんが自身の上達ぶりやレース、ランニングがいかに彼女を幸せにしているかを熱心に語ったからだ。

そしてラングレさんは、ベルナスコーニさんに初マラソンを走るという目標を伝えた。その場所となったのが、パリだ。

「このことは私にとって大きな刺激となりました。そして私も走り始めたのです。2013年4月、私たちは初めてパリ・マラソンで一緒に走りました」

「あれから11年。私たちは再びパリで一緒に走ることになります。今回はオリンピックのマラソンです。私たちにとって何倍も楽しいものとなるでしょう」と、興奮気味に語った。

アルゼンチン出身のジョルジェリーナ・ベルナスコーニさん(左)とフランス出身のアンヌ・マリー・ラングレさん(右)

(Courtesy of Jorgelina Bernasconi)

1月28日に80歳の誕生日を迎え、息子たちとマラケシュ・ハーフマラソンを走ったピエール・マルセナックさんにとって、ランニングは「家族の伝統」と言えるものだ。

「私は公認会計士として、また社外監査役として多忙な生活を送っていたので、家族を結びつけることができるスポーツを探していました」

長男が18歳になったとき、父にこう告げたという。「もしニューヨークに行くつもりなら、一緒にマラソンを走ろう!」。

マルセナックさんは他の息子たちともこの経験を共有し、義理の娘たちが家族の一員となったときにも一緒にマラソンを走った。

マルセナックさんはパリの10kmレースを走る予定で、そのときを待ち侘びている。

80歳の誕生日に息子3人とマラケシュ・ハーフマラソンを走ったピエール・マルセナックさん=2024年1月28日、モロッコ

(Courtesy of Pierre Marcenac)

パリ2024「Marathon Pour Tous」で忘れられない経験

「私は最高齢のランナーとなるでしょう」。そう語るのは、昨年のパリ・マラソンに93歳で出場したシャリー・バンカレルさんだ。バンカレルさんは、「信じられないことでした。驚くほどの拍手喝采を受け、胸が熱くなりました」とそのレースを振り返り、パリ2024「Marathon Pour Tous」に期待を寄せる。

一方、80歳〜84歳女性のカテゴリーで24時間以内に125.271kmを走破するという世界記録を持つバルバラ・ユンベールさんにとって、パリ2024「Marathon Pour Tous」は彼女の人生、最大のレースになるという。

「私は今、8月10日に開催されるこのオリンピックのマラソンに向けてトレーンングし、調整し、生活をしています。これはとても素晴らしいことです」と喜びを語る。

93歳のバルバラ・ユンベールさん

(Courtesy of Barbara Humbert)

メキシコ出身のリカルド・J・マルティネス・オルテガさんは、オリンピックのレジェンドたちと同じルートを走り、同じ雰囲気を感じられることへの期待をこう語る。

「オリンピックに参加できるのは光栄なことで、とても興奮しています」

彼のオリンピックへの憧れは、バルセロナ1992オリンピックの開会式から始まったが、彼の夢は実際にオリンピックに参加することだった。「そして、今まさにそれが叶おうとしているところなんだ」と続ける。

かつてオリンピックに出場した選手もその興奮を共有する。

アテネ2004オリンピックのテニス女子シングルスで銀メダルを獲得した、フランスの元テニスプレーヤー、アメリ・モレスモさんは「Marathon Pour Tousは、私のモチベーションを高めてくれるものです。このユニークなレースに参加することは夢のようです」と話す。

水泳の世界王者に5度輝いたカミーユ・ラクール(フランス)も、母国開催のレースに大きな期待を寄せている。

「Marathon Pour Tousに参加することは、普通のレースに参加する以上のものです。オリンピック閉会式の少し前に、素晴らしい環境と雰囲気の中で、世界中から集まったランナーたちと挑戦と感動を分かち合うことができるのです」。

2023年のシカゴ・マラソンを走るリカルド・J・マルティネス・オルテガさん。

(Courtesy of Ricardo J. Martinez Ortega)
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