「パリ2024まで500日」ファクト&データで比較するパリ1924とパリ2024

執筆者 Virgílio Franceschi Neto
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Paris 1924 Olympic Games Opening Ceremony (left) and a man waving the French flag during the handover ceremony on August 8, 2021 in Paris (right).
写真: Hulton Archive & Getty

パリ2024オリンピック競技大会まで500日。Olympics.comでは、パリ2024と、100年前に同じくフランスで開催されたパリ1924を比較しながら、知っておきたい情報を紹介する。前回と今回を比較して、何が新しく、何が異なるのか。2つ大会を照らし合わせて、パリオリンピックがたどってきた歴史を見ていこう。

2024年に、パリで3度目となるオリンピック競技大会が開催される。初めての開催は1900年。そして、前回は100年前の1924年。当然ながら、その後、世界は劇的に変化した。テクノロジーは発達し、記録は破られ、新しいチャンピオンが時代と共に現れた。

100年という時間の中で、いくつかの競技はオリンピックから姿を消し、いくつかの新たな競技がオリンピックに登場する。現代において、競技会場は、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮でき、また、観客が最高の体験を享受できるよう設備を充実させている。

20世紀から21世紀へ時代が推移する中、パリ1924からパリ2024までに多くの変化が見られた。しかし、これらのオリンピックを開催するフランスの首都パリが、スポーツの世界において紛れもなく重要な役割を果たしてきた事実は変わらない。

では、何が新しくなるのだろうか?何が1924年から変わらずに残っているのか?過去と現在にどんな違いが見られるのか?パリ2024の開会式まで500日と迫った今、Olympics.comでは、パリ2024とパリ1924を比較しつつ、押さえておきたい情報を紹介する。

写真: Keystone/Hulton Archive/Getty Images

2つのパリオリンピックで実施された競技

パリ1924は、5月4日から7月27日までの約3か月間にわたって開催され、17競技、126種目が実施された。パリ2024は、7月26日から8月11日まで開催され、パリ1924の約2倍の32競技、329種目が行われる予定だ。

女子種目にフェンシング(フルーレ)が初めて登場したのは1924年。パリ1924では、バスク・ペロタ、サバット(フランス式ボクシング)、カヌー、カンヌ・ド・コンバット(フェンシングのように、杖、カンヌを使って行うフランスのマーシャルアーツ)などの公開競技も行われている。

パリ1924では、テニスが実施されたが、それを最後に1988年のソウルオリンピックまで行われなかった。15人制ラグビーにとってもパリ1924が最後の大会となった。その後は、リオ2016で再登場しているが、この時から7人制に変更となっている。

パリ2024では、新しくブレイキンがデビューを飾る予定だ。

アスリート数とオリンピック選手村

パリ1924は、3,089名(女子135名、男子2,954名)のアスリートを受け入れ、ほとんどのアスリートは、オリンピック史上初の選手村に滞在した。選手村は、パリの中心から北西にあるコロンブのスタッド・イヴ・デュ・マノワール(イヴ・デュ・マノワール・スタジアム)の近くにあった。

パリ2024では、10,500名のアスリートの出場が見込まれており、女子と男子の数は同じになる。パリ2024のオリンピック選手村は、パリの中心から7kmの距離にあり、サン・ドニにあるオリンピック・スタジアム(国内最大のスタジアム、スタッド・ド・フランス)から5分の場所に位置する。

写真: Topical Press/Hulton Archive

パリオリンピックの参加国

パリ1924には、44の国内オリンピック委員会(NOC)が選手を派遣した。エクアドル、アイルランド、リトアニア、フィリピン、ウルグアイは、初めて選手代表団を送り込んだ。ラトビアとポーランドも夏季オリンピック初出場となったが、それより先に開催されたシャモニーの冬季オリンピックにすでに選手を派遣している。

パリ2024では、オリンピック難民選手団に加え、参加するNOCの数が200を超えると予想されている。

1924年の記録と2024年の期待される記録

パリ1924の陸上競技男子1500mでは、パーヴォ・ヌルミ(フィンランド)がオリンピック記録(3分53秒6)を樹立。男子5000mでも同様に、オリンピック記録(14分31秒2)を出している。これら2つの種目は1時間にも満たない短時間の中で行われた。

現在までのこれらの種目のオリンピック記録は次の通り。

パリ1924の陸上競技男子10000mでは、同じくフィンランド人のビレ・リトラが、当時の世界記録(30分23秒2)を打ち立てた。現在の世界記録は、2020年にジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)が樹立した26分11秒0となっている。

パリ1924の陸上競技男子4x100mリレーでは、アメリカ合衆国チームが世界記録を出した。記録は41秒0だった。この種目の現在の世界記録は、ロンドン2012でジャマイカチームが樹立した36秒84。パリ1924では、男子4x400mリレーでも、米国チームは3分16秒0の当時の世界記録を樹立した。米国は、現在も2分54秒29のタイムで世界記録を保持しているが、これは1993年の世界陸上競技選手権で達成されたものである。

パリ1924の男子走高跳では、ハロルド・オズボーン(米国)が1m98のオリンピック記録を出した。現在のオリンピック記録は、チャールズ・オースチン(米国)が1996年のアトランタオリンピックで樹立した2m39となっている。

女子の記録を見てみると、パリ1924の競泳女子100m自由形予選で、米国のマリシェン・ウェスロウが世界記録を樹立した(1分12秒2)。現在の世界記録は、スウェーデンのサラ・ショーストレムが打ち立てた51秒71。パリ1924の女子400m自由形では、同じく米国の競泳選手、マーサ・ノレリウスが6分2秒2のオリンピック記録を出している。現在のこの種目の世界記録は、ケイティ・レデッキー(米国)の持つ3分56秒46。

パリ2024では、どんな記録が私たちを待ち受けているのだろう?スウェーデンの棒高跳選手、アルマンド・“モンド”・デュプランティスは記録破りのマシンだ。2023年2月のオールスター・ペルシュ世界陸上室内大会(フランス・クレルモンフェラン)の男子棒高跳では、6m22の世界記録でバーを跳び越えた。パリ1924の記録は、金メダリストのリー・バーンズ(米国)の3m95だった。

三段跳では、東京2020金メダリストのユリマル・ロハス(ベネズエラ)が自己の持つ室内世界記録15m74を打ち破り、フランスの首都パリでさらに歴史を築くことが期待されている。

陸上男子400mハードルも目を離すことができない種目のひとつだろう。東京2020で、しのぎを削った、カールステン・ワーホルム(ノルウェー)とライ・ベンジャミン(米国)。それぞれ、金銀のメダルを分け合ったが、この時、2人とも世界記録を上回った(45秒94でワーホルムが新記録樹立)。同種目に出場したアリソン・ドス・サントス(ブラジル)は、銅メダルに終わったが、決勝前の世界記録(ワーホルムの46秒70)とわずか0.02秒差の好記録を出すなど活躍した。それから1年も経っていない2022年、米オレゴン州で行われた世界陸上競技選手権では優勝を果たしている。

7人制ラグビーでは、フィジー男子チームがパリ2024で3度目の金メダルに輝くかもしれない。サッカーでは、ブラジル男子チームが、ハンガリー、イギリスに並ぶオリンピック通算3度目の優勝を狙う。

写真: Central Press

スタジアムと施設

パリ1924で使用された施設のひとつは、パリ2024でも使われる。コロンブのスタッド・イヴ・デュ・マノワールは、100年前に開会式と閉会式の会場となった。ラグビーとサッカーの試合も実施されている。パリ2024では、同会場はホッケーの舞台となる。ラグビーとサッカーは、スタッド・ド・フランスパルク・デ・プランスで開催されるほか、フランス全土に広がる各スタジアムで実施される。

パリ1924では、セーリングはル・アーヴルのノルマンディとムラン・アン・イヴリーヌのセーヌ河岸を会場にした。2024年は、地中海沿岸のマルセイユを舞台に開催される。フェンシングは、パリの最も象徴的な建造物のひとつ、グラン・パレで実施される。パリ1924では、パリのダウンタウンのネラトン通りにある屋根付きの競輪場、ヴェロドローム・ディヴェールで開催された。ここは、第二次世界大戦中に悲劇の大量検挙事件が起こった場所として知られる。ネラトン通りは1959年に取り壊されている。

2024年、オリンピックでの2度目の実施となるサーフィンがヨーロッパから離れた場所で行われる。タヒチ島(フランス領ポリネシア)のチョープーの波は、オリンピックの栄光を求める世界最高のサーファーを迎え入れる。

1924年スター選手と2024年期待の選手

パリ1924のスター選手は、何と言っても、「フライング・フィン(空飛ぶフィンランド人)」の異名で知られる陸上競技のパーヴォ・ヌルミとビレ・リトラだろう。ヌルミは、現在まで、1大会で5個の金メダルを獲得したオリンピック史上唯一のアスリートだ。リトラも1大会で6個(金4個、銀2個)のメダルを手にしている。

エセル・ラッキー(米国)は、パリ1924競泳(100m自由形、4×100mフリーリレー)で2個の金メダルを獲得した。同じく米国から出場の2人のテニス選手は、パリ1924で歴史を築き上げた。ヘレン・ウィルスは、女子シングルスで金メダルを獲得。ヘイゼル・ワイトマンとの女子ダブルスでも金メダルを手にした。ヘイゼル・ワイトマンは、混合ダブルスでも金メダルに輝いている。

他には、フランスのスター選手、フェンシングで5個のメダルを獲得したロジェ・デュレク、競泳で3個の金メダル、水球で銅メダルに輝いたジョニー・ワイズミュラーらが挙げられるだろう。

パリ2024では、新たな歴史を創ることが期待される多くの名前が挙げられる。スウェーデンの棒高跳選手、アルマンド・デュプランティスがそのひとりに挙げられるだろう。彼は、東京オリンピックと世界陸上の金メダリスト、世界記録保持者である。

競泳では、オーストラリアのモリー・オキャラハンとスウェーデンのサラ・ショーストレムが昨年の世界水泳選手権で好成績を残している。パリ2024でも金メダルが期待される。オキャラハンは、東京オリンピックで2個の金メダルと1個の銅メダルに輝いている。彼女は、世界水泳選手権の100m自由形の現チャンピオンで、200m自由形では銀メダルを獲得している。ショーストレムは、東京2020の50m自由形では2位だったが、2022年の世界水泳選手権では表彰台のトップに立った。彼女が、東京2020の結果を今回のパリで上回ることは想像に難くない。

男子競泳では、若きルーマニアのダビド・ポポビッチに注目したい。最近の彼の進化は目覚ましい。2022年、世界水泳選手権及びヨーロッパ水泳選手権の100mと200m自由形で優勝し、ヨーロッパ水泳選手権の100m自由形決勝では世界記録(46秒86)を打ち立てた。

パリ1924にまつわる興味深いエピソード

パリ1924では、史上初の閉会式が実施された。今日知られるように、閉会式では次の3つの旗を掲揚している。

  • 国際オリンピック委員会(IOC)委員会旗
  • 開催国国旗
  • 次回開催国国旗

パリ1924は、1981年(日本は翌年)公開の映画「炎のランナー(邦題)」によって不朽の名声を得る。この映画は、パリ1924陸上競技に出場した実在する2人のイギリス人ランナーを描いた物語である。

1982年のアカデミー賞において、次の4部門を受賞した。

  • 作品賞
  • 脚本賞
  • 衣装デザイン賞
  • 作曲賞

パリ1924の競泳金メダリスト、水球銅メダリストである米国のジョニー・ワイズミュラーの経歴は興味深い。オリンピアンから映画俳優に転身し、シリーズ映画「ターザン」の主役を演じた。

南米のウルグアイは、初出場のオリンピック、パリ1924において、サッカー競技で優勝を果たし、ヨーロッパ以外の国で初めて金メダルに輝いた。現在のウルグアイサッカー協会のエンブレムの上に描かれる4つの星の1つは、パリ1924で獲得した金メダルを象徴していると言われている。また、1930年に第1回FIFAワールドカップが開催されたウルグアイの首都モンテビデオのセンテナリオ・スタジアムでは、その観客席のひとつが「コロンブ」と名付けられいる。これは、ウルグアイが金メダルを獲得したことを記念してこの都市をオマージュしている。

パリ1924でのウルグアイの優勝は、「オリンピックゴール」という言葉を生むことになる。

写真: IOC