【カーリング】日本選手権2022:大団円のロコ・ソラーレ...新勢力の台頭、そしてミラノ・コルティナ2026へ

文: オリンピックチャンネル編集部
写真: 時事通信

北京2022のシーズンを締めくくる第39回全農日本カーリング選手権大会が閉幕した。決勝では北京2022銀メダルチームのロコ・ソラーレが中部電力に勝利。5月末まで続く異例のロングシーズンの最終戦を優勝で飾った。

終わってみればロコ・ソラーレが順当勝ちを収めた日本選手権だったが、大会の節々にはここ数年とは違う変化が見られた大会となった。

■新たな世代、新たなチームの台頭

最も大きな変化といえば、全体の勢力図が上書きされたことだ。

日本の女子カーリング界は長らくロコ・ソラーレ、中部電力、フォルティウス(旧北海道銀行フォルティウス)、富士急の4チームを中心に回ってきた。日本選手権でもこの"4強"が優勝を分け合い、世界の舞台でも日本代表チームの経験を積んできた。

しかし今大会、"新生"北海道銀行(※)が予選で中部電力や富士急を撃破。予選2位でプレーオフ進出を決めた。決勝トーナメントではロコ・ソラーレと中部電力に連敗を喫したが、「目標としていた表彰台」に上って、3位でフィニッシュ。あの"4強"に割って入る成績を残した。

田畑百葉、仁平美来、中島未琴の3人は10代、伊藤彩未も20歳。平均年齢19歳という若いメンバーながら、堂々の試合運びを見せた。ローザンヌ2020冬季ユースオリンピックで日本選手団の主将を努め、銀メダル獲得に貢献したスキップの田畑を中心とした戦略、ショットのスキル、スイープ力、そして若いチーム特有の度胸の良さも含めて、今後が楽しみなチームが台頭した格好だ。

もちろんそれぞれのスキルに伸びしろは感じられるものの、予選2位の成績が決してフロックではないことは試合を見ていた者になら確実に伝わったはずだ。

北海道銀行以外にもSC軽井沢クラブとフィロシーク青森が4勝、札幌協会が3勝をあげた。それぞれ、4強チームにも勝利を収めており、まさに全体的な競技レベルの向上を感じさせる結果となった。

※北海道銀行は2021年12月、スポンサーを務めてきたフォルティウスとの契約終了を発表。新たに北海道銀行女子カーリング部を発足

■それでもロコ・ソラーレが優勝したワケ

しかし、新勢力が台頭する大会にあっても決勝に進出したのはロコ・ソラーレと中部電力だった。前者は北京2022の銀メダル、後者は世界選手権の日本代表。力のあるチーム同士がファイナルでぶつかり、最終的にはロコ・ソラーレが優勝を勝ち取った。戦前の予想通り、極めて順当な結果だった。

両者の直接対決は、ここ数年はロコ・ソラーレに軍配が上がることが多かった。ただし、2019年に中部電力が日本選手権を制した際にはロコ・ソラーレに全勝。圧倒的な安定感と勝負強さで優勝を勝ち取っていた。今大会では松村千秋がリザーブに回ったが、石郷岡葉純、中嶋星奈、北澤育恵の3名は変わらず。セカンドを務めた鈴木みのりも世界ジュニアカーリング選手権4位の経験をもつ実力者だ。

両チームに大きな力差があるわけではなく、実際のところかなり拮抗している。

それでもロコ・ソラーレが中部電力を振り切った背景には、これまで積み重ねてきたコミュニケーションと経験にあった。

中部電力はプレーオフのフォルティウス戦、準決勝の北海道銀行戦で安定した戦いぶりを見せていた。石郷岡の安定したセットアップから始まり、スキップの北澤が確実なショットでまとめる。相手のストーンを複数個見るピンチの場面でも、最後のドローショットをひょうひょうと決めていた。世界選手権日本代表の強さを改めて示した2試合だったと言っていいだろう。

その中部電力に、決勝では乱れが生じた。アイスリーディングに苦しみ、普段なら決められるであろうショットが決まらない。そんなシーンが多く見られた。

原因はファイナル独特の環境にあった。試合後に語られたロコ・ソラーレのサード吉田知那美の言葉が、勝敗の分岐点を端的に示している。

「今までオリンピックのファイナルであったり、色んなファイナルのステージを戦ってきて、1シートだけでやるファイナル独特のアイスコンディションのゲームをうまく制せれずに銀メダルということも多かったので、チームとしてファイナルで1シートだけでやるアイスを制したいという気持ちが強かった。それが達成できてよかったなと思います」

実際のところ、ロコ・ソラーレも序盤はアイスコンディションをつかめずに苦労していた。第1エンドではブランクを狙ったピールショットを決められずに1点を"取ってしまう"といった場面も見られた。

しかし、持ち前のコミュニケーションで細かな情報交換を繰り返し、徐々に安定したショットを取り戻していった。オリンピック決勝で涙した経験が、この舞台で生きたわけだ。

実際のところ、実績ほどロコ・ソラーレと他の強豪チームに力の差はない。ロコ・ソラーレも予選で1敗を喫している。国内に敵なし、常に全勝、というわけではない。

だがそれでも最終的には決勝に駒を進め、大会を勝ち切るだけの実力と経験をもっている。それが他のチームにはないロコ・ソラーレの強さだ。近そうであまりに遠い――。それが女子カーリング界におけるロコ・ソラーレの立ち位置と言えるかもしれない。

■ミラノ・コルティナ2026への4年間

ロコ・ソラーレの優勝で幕を閉じた2022年の日本選手権。ここから休息期間を経て、また新たなシーズンが始まっていく。

力を示したロコ・ソラーレ。それを追う中部電力。“4強”だけでなく、

新たな勢力が台頭してくることも間違いなさそうだ。

また、今大会では思うような結果を残せなかったフォルティウスと富士急も巻き返しを狙ってくるはず。フォルティウスは北海道銀行とのスポンサー契約終了があり、環境の変化が著しいシーズンだった。少なからず競技に影響した可能性は想像に難くない。競技に集中できる環境が整えば、2021年日本選手権優勝の実力をまた見せてくれるはずだ。

そして富士急は絶対的スキップの小穴桃里が妊娠中のためリザーブに回ったという背景があった。小穴は発表の際、出産後に競技復帰を目指していくことを明らかにしている。絶対的司令塔の不在中に各メンバーが経験を積んで、小穴が復帰を果たせば、今大会とは違った姿が見られるはずだ。

北京2022でのロコ・ソラーレの銀メダル、日本選手権で見られた全体的な競技レベルの向上――。

ミラノ・コルティナへ続く4年間へ向けて胸が膨らむ形で、2021-22年シーズンが閉幕した。

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