■4選手が代表デビュー、清水梨紗はMVPに
7月19日から26日にかけて行われたEAFF E-1 サッカー選手権2022決勝大会女子の最終戦で、日本代表・なでしこジャパンは2019年大会に続く2連覇を達成。初の男女ダブル優勝が実現した。
初戦の韓国戦は、MF宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)のゴールで先制した後、韓国のエース、MFチ・ソヨンのゴールで追いつかれたが、MF長野風花(ノースカロライナ・カレッジ/アメリカ)のゴールで2-1の逆転勝利。シンプルにロングボールを入れてくる韓国に対してセカンドボールの回収率が低く、ゲームコントロールに課題を残したが、少ないチャンスで仕留める勝負強さを見せた。
2試合目のチャイニーズ・タイペイ戦は初戦から9名を入れ替えた日本。先発メンバーの平均キャップ数が一桁という初々しいメンバーで臨み、4-1で勝利した。FW井上綾香(大宮アルディージャVENTUS)、MF中嶋淑乃(サンフレッチェ広島レジーナ)、DF林香奈絵(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)、DF高平美憂(マイナビ仙台レディース)の4選手が代表デビュー。力の差がある相手に対し、硬い立ち上がりで失点を許したが、前半のうちにFW千葉玲海菜(千葉L)とFW上野真実(S広島R)のゴールで逆転。後半は交代枠を活用しつつ、DF清家貴子とFW菅澤優衣香(ともに三菱重工浦和レッズレディース)のゴールで突き放した。
中国戦は引き分けでも優勝が決まる状況だったが、2022年1月のアジアカップでは2-2の末にPK戦で敗れており、「決着をつけたかった」(池田太監督)相手。攻撃と守備の切り替えを速くして試合を優勢に進め、結果的に中国の3倍以上の13本のシュートを放ったが、決定力を欠いた。一方、粘り強い守備でゴールを死守。DF清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は「苦しい時間帯でも失点しないというのは、この大会ですごく力がついたと思います」と、手応えを口にした。
最優秀GKに山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)、大会MVPには清水が選出。キャプテンを務めた清水が金の紙吹雪の中でカップを掲げた。
■個人、組織の両面で収穫
半年前のアジアカップと比べると、3試合を通じてチームの確かな成長が見られた大会だった。
センターバックのDF熊谷紗希(FCバイエルン・ミュンヘン/ドイツ)とDF南萌華(ASローマ/イタリア)、攻撃の起点となるFW岩渕真奈(アーセナル/イングランド)やMF長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)ら、海外組を欠いた中でアジアカップ王者の中国に互角以上の戦いを見せたことは、チーム力の底上げの証明とも言える。
池田監督が大会前に掲げていたテーマは「相手の変化に対する対応力」。そのために各国のスカウティングにも力を入れ、「大会初戦の入り方や相手のロングボールへの対策」(韓国戦)、「相手の守備のプレスへの対応」(チャイニーズ・タイペイ戦)、「ダイナミックに攻めてくるところやカウンターへの対応」(中国戦)と、それぞれテーマを設定して臨んでいた。
それらについて、池田監督は「短い時間でしたがしっかり選手と共有して、選手の取り組む姿勢や理解力もあったことは成果として挙げられます」と総括。一方、課題としては「コンタクトスキルやセカンドボールへの対応」(韓国戦)、「守備の連動性」(チャイニーズ・タイペイ戦)、「フィニッシュに至る精度」(中国戦)などを挙げた。
個人に目を向けると、最終ラインではDF高橋はな(浦和)やDF乗松瑠華(大宮V)、DF宝田沙織(リンシェーピングFC/スウェーデン)らがセンターバックで経験を積んだ。中盤も激戦区だが、現段階でファーストチョイスとなっている長野とMF林穂之香(AIKフットボール/スウェーデン)のダブルボランチは年代別からコンビ歴が長いだけに安定している。前線では、千葉が3試合を通じて存在感を示した。スピードやゴールへの鋭い嗅覚に加え、「スプリントを何回も発揮して繰り返せることが自分の良さ」という千葉の良さは、献身的な守備にも表れており、更なる飛躍が期待できる。
一方、ここまで池田ジャパンで最多7ゴールを挙げているFW植木理子(東京NB)は、攻守で相手の脅威となり、アシストこそ記録したもののゴールはゼロ。「個人としては悔しいですが、まず日本がE-1という大会で優勝したことが一番です」と語った。
次の代表戦は、10月に行われる国際親善試合。10月6日にナイジェリア(ノエビアスタジアム神戸)、9日にニュージーランド(長野Uスタジアム)と対戦する。来夏のワールドカップで対戦する強豪国との対戦を想定し、強度と精度を高めつつ、攻守のバリエーションを増やしていきたい。
8月にコスタリカで行われるU-20女子W杯や、10月に開幕するWEリーグ(カップ戦は8月に開幕)からも戦力の台頭が期待されており、メンバー入りのサバイバルからも目が離せない。