平昌2018オリンピックのフィギュアスケート男子シングルで羽生結弦さんが金メダルに輝くなど、オリンピック史の一部となった会場、江陵アイスアリーナ。
大韓民国の江陵市に位置するこの「憧れの舞台」で2024年1月30日、オリンピックを夢みるひとりの若きフィギュアスケーターが、その夢に一歩近づいたことを実感した。
2008年生まれ15歳の島田麻央である。
「今は素直にこの憧れの舞台で金メダルを取れたことがすごく嬉しいです」
「ひとつ夢が叶った感じがします」
江原2024冬季ユースオリンピックの金メダルを首にかけた直後、島田はOlympics.comのインタビューに応え、「人生一度」として挑んだユースオリンピックで金メダルを獲得した今の思いを語った。
島田麻央「想像より何倍も大きかった」
アジア初開催となった冬季ユースオリンピックのフィギュアスケート競技は江陵アイスアリーナで行われ、1月30日午後2時に女子シングル・フリースケーティング(FS)がスタート。17人の若きアスリートたちがそのリンクに立った。
大きな注目を集めたのは2023年3月に世界ジュニア選手権を制し、12月のジュニアグランプリファイナルでも優勝した島田麻央、そして両大会で準優勝となった大韓民国のシン・ジアだ。28日に実施されたショートプログラムで首位となった島田は、地元期待のシンが演技を行い、会場を盛り上げた直後の16番滑走者として登場した。
「ショートがいい形で終わって良かったんですけど、やっぱりフリーの不安だったり、練習があまり良くなかったので、不安を抱えたまま今日になってしまった」
「すごい大きな声援があって、特にジア・シン選手のときにすごい大きな声援があって、その中で出ていかなきゃいけないっていうことはわかってはいたんですけど、やっぱり想像していた何倍も大きかったので、その中で自分の演技が始まったことがいつもと違うなと感じました」
濱田美栄コーチと両手をつないで互いに頷いた後、島田は「Mao Shimada」のアナウンスと共に笑顔でリンクに滑り出した。しかし、その笑顔の奥ではとてつもない緊張感が彼女を襲っていた。
「『今日は跳べるかな』とかじゃなくて、本当に緊張したので、息を整えるのに精一杯でした」
島田はこれまでにも演技前の緊張感に押しつぶされそうになる感覚を味わってきた。12月の全日本フィギュア選手権では緊張で足が震え、思い通りの演技ができなかった悔しさを味わった。
「悔しい思いをした分、やっぱり練習からしっかりやろうっていう気持ちに変わった」と話す島田は、「失敗したジャンプはやっぱり練習が少ないってことがわかったので、多めに練習したことと、あとは気持ち的に絶対失敗しないっていうことを心がけました」と、対策を練って日々の練習に励んできた。
そして迎えたユースオリンピック女子シングルFS。リンクの中央に立って「精一杯、息を整えた」島田は、序盤の4回転トーループで転倒し、回転不足をとられるジャンプがあったものの、大きなミスなく後半のジャンプをクリーンに決め、スピンでも高評価を得るなどしてFSトップの125.94点で合計を196.99点として優勝。銀メダルのシンに5点以上の差をつけての金メダル獲得となった。
金メダルを首にかけた今の思いを「ひとつ夢が叶った感じがします」と話す島田だが、1ヶ月後にはカナダ・カルガリーで世界ジュニア選手権で連覇に挑む。
「ちょっと今は金メダルの余韻に浸っているんですけど、(日本に)帰ったらしっかり切り替えて、世界ジュニアに向けて練習したいと思います」
そしてその先にはオリンピックも見据えている。次の冬季オリンピックは、2026年にイタリアのミラノとコルティナ・ダンペッツォで開催されるミラノ・コルティナ2026が予定されているが、フィギュアスケートの年齢制限により、島田は参加資格を得ることはできない。そのため、彼女がオリンピックの舞台に立つことができるのは早くて2030年大会となる。
「ユースオリンピックの舞台に立てたので、オリンピックにも出たいって思いが強くなりました」と話す島田が、その夢に向かって成長を遂げる姿をこれから私たちは目にしていくことになるのだろう。