オリンピック出場を逃したエラッジ・バルデが、己の内側に見つけた勝利「自分の中に充足感を見出すこと」

冬季オリンピックの出場権獲得に2度挑んだフィギュアスケーター、エラッジ・バルデは、その過程で、自分のスケートに対する満足感は、己の内側からくるものでなければならないことを学んだ。

1 執筆者 Nick McCarvel
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(2016 Getty Images)

カナダのフィギュアスケーター、**エラッジ・バルデ**は、頭の中ですべてを計画していた。いや実際には、心の中でだ。

**ソチ2014**冬季オリンピックで、彼は自身初のオリンピック出場権を獲得し、生まれた国に戻ってオリンピック・リングの入ったスケートリンクの上を滑走するはずだった。

しかし、その年のカナダ選手権で4位に終わり、ソチ2014の出場枠男子3人に入ることができなかった。

2008年のジュニアナショナルチャンピオンのバルデにとって、それは失望に終わった3度のオリンピックへの挑戦のうちのひとつとなった。

「オリンピック出場が必ずしも自分の道ではないと気づいたとき、自分が何者であるかを完全に見失ってしまいました。なぜなら、『オリンピアンになる』ということこそが、自分のアイデンティティだったから。それが自分にとっての旅路ではないとわかったとき、『私は何者だったのだろう?』『なぜ私はスケートをしていたんだろう?』という考えに至りました」2月2日(水)北京での Olympic.com 独占インタビューで、バルデはそう話してくれた。

彼は続けた。「そこから、『スケートを続けるためには、自分の中にある理由を見つけなければならない』という、自分自身を内省する旅が始まりました。なぜならその時点では、すべての理由が外側にあったからです。そのため、何ヶ月もかけて自分自身を深く掘り下げていきました。そしてその過程で、私はアーティストとしての自分を見つけ、自分が本当に好きなこと、自分を最も満足させてくれることに取り組むことに目覚めたのです。それは、観客とつながって、自分のストーリーや、氷上で人々に何かを感じさせることができるという自分の才能を、彼らと共有することです」

そこから自分の旅路を歩むための方法をバルデが完全に理解し始めたのは、さらに1年後のことだった。2015年のカナダ選手権では6位という残念な結果に終わったが、この年はシニアで初の国内タイトル獲得を目指していたと彼は語った。

しかしその後の数週間、父親と一緒にアフリカを訪れたことで、自分の中の探究心が高まり、彼は自分がずっと探し求めていたものを見つけることができた。

それは一体何か? 彼自身の幸せのためにスケートを滑ることだ。

エラッジ・バルデ「このことをどのように記憶に留めておきたいか?」

スポーツとは、定義上、達成することだ。そしてオリンピックは、メダルを得ることでその成果を具体的に測ることができる。金、銀、銅...。しかしソチ2014の出場を逃した後、スケートを続けながら深い自分探しの旅を始めたバルデは、競技に新たな目的を見出し、**平昌2018**のオリンピック出場権獲得も視野に入れていた。

「とくに最後の年(2017/2018)は、『このすべてをどのように自分の記憶に刻んでおきたいか?あるひとつの瞬間だけでなく、この旅路をどのように覚えておきたいか?』という感じでした」と、Olympics.com のコントリビューターとしても活躍するバルデは振り返る。

「私にとってこのことは、自分自身や自分の人生、自分らしさに充実感を見出す上で、あるひとつの瞬間を基準にするよりもはるかに大きな力を持っています」

スケートへの情熱を、氷上で芸術作品を生み出すことに注いでいるバルデは、ソーシャルメディアで最もフォローされているスケーターのひとりだ。TikTokでは120万人以上、Instagramでは50万人以上のフォロワーを誇る彼は、自身のプラットフォームや動画を活用して、マイノリティのスケーターにチャンスを与えたり、スポーツへの参加を促し、バックグラウンドを問わず若い人たちにスポーツに挑戦してもらうことを目指している。

バルデ自身はロシアとギニアにルーツをもつカナダ人だ。

オリンピックでスケートをするという夢は叶わなかったが、今月の**北京2022**ではCBC(カナダ放送協会)の現地レポーターとして、かつての競技仲間のインタビューや、トップレベルで切磋琢磨しあう友人たちの様子を、彼独自の視点で伝えてくれる。

また、彼はそれらの取材を通じて、異なる視点への気づきをくれる。

「私たちは成功や成果を得ることで、幸せになれると言われています」と彼は言う。「しかし、これをひとつの旅と考えると、すべての瞬間をあるべき方法で経験することで、信念を学び、アスリートとして、そして人として、ひとつの方向に成長していくことができるのです。それらは一生の財産であり、自分の中でいつまでも生き続け、心に平和な時間をもたらしてくれるものなのです」

「そして、誰もあなたからそれを奪うことはできません」

エラッジ・バルデ : スケート界に新たな道を切り開く

バルデは、自分のこうした旅が、他者への指針となることを望んでいる。世界大会でメダルを獲得したり、オリンピックに出場したり、トロフィーや称賛を得て、最高レベルの成果を上げることはできるかもしれない。

しかし、このスポーツは特別なものだと彼は言う。競うスケーターの数だけ、さまざまな角度から創造の余地があるのだと。

「今回、より多くのスケーターに、自分が何者であるかだけでなく、それをどうやって氷上に持ち込むかを考えることに時間を費やしてほしいと思っています。単にテクニックを披露したり、演技として滑るのではなく」とバルデは言う。

「スケートは非常に奥深い、とても美しいスポーツです。そして、芸術でもあります。それを使って、最も美しい方法で自分自身を表現することができるのです」

「もっと創造性を発揮する余地があると私は思っています」と彼は締めくくった。「それがどのように作用するのか、どのように進化していくのかはわかりませんが、とても美しいものになることでしょう」

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