チェスとeスポーツ : シュレヤスに10の質問
14歳のチェスマスターが、Olympic Channel のオリジナルシリーズ『Outside The Game』放送開始を記念したQ&Aセッションで、対戦相手を追い込むための戦略を明かす。
14歳のとき、あなたは何をしていただろうか?
もし、あなたがチェスの世界チャンピオンへの道を順調に進んでいると答えたなら、シュレヤス・ロイヤルと共通点がある。
彼は6歳からチェスを始め、そのあまりの優秀さに、イギリスは彼と彼の家族にチェスを続けるための滞在ビザを与えた。12歳で初めてグランドマスターを倒し、イギリス史上最年少のFIDEマスターになった(現在はその上のインターナショナルマスターにランクされている)。
彼はいま、21歳までに世界チャンピオンになる、という究極の目標に向かって突き進んでいる。
「もし実現しなかったとしても、トップ10のチェスプレーヤーであることに満足しています」と彼は言う。
そんなシュレヤスについて、もっと探ってみよう。オリンピックeスポーツのオリジナルシリーズ、『Outside The Game』の第2話には、シュレヤスと彼の父親が登場する。
シュレヤス・ロイヤルが、チェスへの思いや夢の対戦相手について語る
チェスのどんなところが、あなたをボードに向かわせるのでしょう?
まだまだ学ぶべきことがたくさんあると感じる、とても魅力的なゲームであるところです。チェスを楽しむことにあまりに慣れすぎて、なぜ楽しいのかさえわからなくなっているくらいです!
21歳までにチェスの世界チャンピオンになるという目標を達成すれば、史上最年少の世界チャンピオンとなります。この目標を立てた時期やきっかけを覚えていますか?
7歳くらいのときだったと記憶しています。正直言って、僕はとても楽観的でした。でも、チェスがもっとうまくなるように、そしてそのために努力するハングリー精神をキープするための出発点として設定した目標でした。より現実的で成熟したいまの僕にとっては、将来的に常にトップ10に入るチェスプレーヤーになることができれば満足です。
一番最初のチェスの思い出を聞かせてください。
父と対局したときのことです。それが初めての対局だったのですが、キングとクイーンを間違ったマスに置いてしまい、父もそれに気づかなかったんです。チェックメイトになって彼のキングを取ったのですが、実際はとることはできないキングでした。
レベルの高い相手と対戦するときは、どのような準備をするのでしょうか?
相手がどのようなポジションを苦手としているのか、得意不得意を見極めるようにしています。過去にどんなオープニングに苦戦してきたか、弱い相手とどれくらい戦ってきたかといった統計データも見ます。それからオープニングで白が少しでも有利になるように、それと黒と対等になるようにすることも重要なポイントです。
印象に残っている対局はありますか?勝利の瞬間や、もう一度やりたいと思った試合など?
最も鮮明に記憶に残っているのは、2017年のヨーロッパユースU8チェス選手権です。僕は同点で1位になって、それ自体もものすごく感動しましたが、片手に巨大なトロフィー、もう片方の手には大量の文房具や賞金を持って、大きなステージに立っていたことを思い出します。大歓声と興奮の中、イギリスの国旗に包まれていました。夜が終わる頃には腕は筋肉痛になっていましたが、1000ユーロ以上の価値のある品物だったはずなので、その甲斐があったというものです。
チェスの腕前を買われて、イギリスからあなたとご家族の滞在ビザが発給されましたね。その時のお気持ちや、ご自身のキャリアに与えた影響についてお聞かせください。
イギリスを出国することになっていた1カ月前の2018年8月10日の朝早く、父に電話がかかってきました。電話が終わったとき、父の顔には満面の笑みが広がっていて、内務省から伝えられた、きらめくようなニュースを僕たちに聞かせてくれました。希望を失っていた僕たちにとって、これは本当に嬉しい驚きでした。今までお世話になった人たちの努力が報われた感じがしました。これで、自分のチェスの才能を見出し、伸ばしてくれた国で、キャリアを続けられることになった。それに、この国で教育を受けてきて、環境や人々にも慣れていたので、それらを変えずにすんでよかったと感謝しました。
10代の若者でチェスをマスターしている人は多くはないと思いますが、チェス以外の趣味や興味はありますか?ハマっている番組や本、ビデオゲームなどは?
スポーツ、とくにフットボールとクリケットをするのが好きです。移動のときにはよく本を読みますが、お気に入りは「アレックス・ライダー」シリーズです。ビデオゲームはあまり好きではありませんが、YouTubeの動画や映画を見るのは好きです。
試合中、自分が優位に立てる、あるいは相手が優位に立てると感じる瞬間はありますか?その場合、どのようにアドバンテージを広げ、あるいはミスを挽回しますか?
よくあることです。自分に決定的なアドバンテージがあるときは、できるだけ冷静になって、できる限り冷酷に相手を仕留める暗殺者になることを心がけています。相手が有利なときは、相手に問題になるようなことを与えて、リスクやジレンマを誘発するように仕向けます。
あなたが敬愛するマグナス・カールソンとの対局では、オープニングムーブを決めました。ポーンをd4に動かすムーブで、これはあなたの好きな手だと言っていましたが、それはなぜですか?
マグナスとの対戦で2回、最初のムーブを決めることができたのは感激でした。1回目は権威あるロンドン・チェス・クラシックで、2回目は同じくロンドンでの2018年の世界チェス選手権の試合でした。2回とも、彼は1.d4を要求しました。1.d4は、僕が6歳の時に白の打ち手として初めて習ったオープニングで、今でも頻繁に使っているものです。子供のころは、教わったとおりに1.d4を使っていましたが、様々なタイプのポジションやポーンの構成を導き出すので、チェスプレイヤーの理解にとって非常に勉強になるので、今もずっと続けています。
マグヌス・カールセンの名前が出たところで、世界のどのプレーヤーとも対戦できるとしたら、誰と対戦しますか?またその理由は?
ガルリ・カスパロフ、ボビー・フィッシャー、アナトリー・カルポフといったかつての名プレーヤーと対局できたら光栄ですね。現役のプレーヤーでは、強力な2700GMと対戦できたらうれしいです。