eスポーツコーチのミア・シュテルベリが、ミスクリック時の心理を解析

最高のパフォーマンスを発揮するには、頭が冴えている状態であることが重要だ。これは事実であり、ゲーマーがチャンピオンたる精神を備えるためには、メンタル面の鍛錬が必要なのだ。

メンタルが強い人というのは、決まって成績も悪くない。彼らは自分自身をきちんとケアしていない相手よりも巧みで要領がよく、圧倒的な強さを持っている。しかし、どんなに経験豊富なプレイヤーでも、ゲームに必要なメンタル状態をマスターしているとは限らない。

私はこれまで、何度も大会で優勝しているチームなど、世界でもトップクラスのチームや選手と一緒に仕事をする機会に恵まれた。そうしたプロとの関わりから得た多くの学びや教訓を、今日はご紹介したいと思う。

eスポーツの落とし穴を知ること

競技の世界は、とかく没頭し、のめりこみがちだ。しかし精神面の強さは純粋なスキルと同じくらい重要で、とりわけ試合が1時間以上に及ぶこともあるeスポーツの世界では、それが顕著だといえる。Dota 2 の Cloud9 対 ScaryFaceZ のプロフェッショナルマッチは 3 時間以上続いたし、Counter-Strike の試合も数時間に及ぶことが多い。自分自身をコントロールできなければ、ゲームをコントロールすることはできない。

長時間にわたって集中力を持続させるためには、精神的な持久力が不可欠なのだ。

私がチームと一緒に仕事をするときの目標は、常にトロフィーを持ち帰ることにある。そのためには、まずクライアントに自覚してもらうことから始める。自分の気分の流れを全体的に把握するのだ。ゲームプレイ中の気分をコントロールするには、自分を知ることが必要だ。それが精神を健康に保つ上での基本であり、パフォーマンスに影響を与える部分でもある。自分自身をじっくり分析して、ある特定の思考やリアクションに対して自分の感情がどのように動かされるかを学習してみてほしい。チームメイトやコーチからのフィードバックも吸収しよう。特定の状況下において、彼らはあなたに何を言い、どう反応するのか？その中で、自分の長所と短所を見つけるのだ。自分の気分や感情を高めてくれるものが何なのかを見つけ、それを活用する。

安定した気分でいるほど、良いレベルのパフォーマンスを長く持続させることができる。

最後に、何かに熱中しているとき、なぜその情熱を追い求めるためにあまり多くの時間を費やすべきではないのか？

それは、かえってマイナスになることがあるからだ。燃え尽き症候群はeスポーツにおける最大のジレンマの1つであり、以前はそのためにキャリアが短命に終わった例は多々あった。トーナメントのために何週間も何ヶ月も移動したり、厳しい練習スケジュールといったストレスの多い期間が長く続くと、そのような状態に陥ることがある。

志の高いゲーマーが気をつけるべきこと、それは、ゲーマーをストレス要因から守り、パフォーマンスを向上させるために精神的な健康を保つ、ということの重要性だ。

落とし穴への対処

メンタルフィットネスを向上させるには、より健康に、より幸せに、より自分らしくいられるための習慣を取り入れることが必要だ。脳は上腕二頭筋のようなもので、より強く、そしてその状態を維持するためには定期的な鍛錬が必要なのだ。

今日から始められる簡単なメンタルヘルスの向上方法をいくつかご紹介しよう。

• 毎晩の十分な質の高い睡眠
• 健康的な食事 - 悪い食習慣が精神的な健康にどれほど影響するかは驚きだ。
• 体を動かすと、幸せホルモンと呼ばれるドーパミンが分泌され、気分が上向きになる。
• 社会的な活動 - ゲームも健康的な発散の場となりえるが、練習環境以外での活動も必要だ。

これらを実現するために、まずは自分自身に問いかけてみよう。

• 睡眠の質はどうか？
• 集中力を維持できていると感じるか？
• 心身の健康状態はどうか？
• イライラしたり、すぐにあきらめたりすることが多いか？
• ストレスを感じることが多いか？

もし、2つ以上の質問で答えがネガティブだった人は、自分の状況を分析してより良いバランスを見つける必要がある。この先より良い状態を保つために、思い切ってルーティンを変えてみよう。成績不振が続くバランスの悪いプレイヤーは、さらにストレスを溜め込んで、負のスパイラルに陥ることになりかねない。

ゲームにおけるメンタル面を認識し、自分自身をより理解することで、自分の思考との付き合い方を学ぶことができる。そうすることで、プレッシャ−との付き合い方を知り、それがゲームのパフォーマンスを向上させることにもつながるのだ。

ミアは心理学者としてのその先駆的な仕事と、多くのチームのタイトル獲得に貢献したことで、いまやプロゲーミング界の伝説的存在となっている。彼女の功績には、CS:GOのMajor選手権での「Astralis」の 優勝や、Dota 2 で「OG」を史上初のThe International連覇に導いたことなどが挙げられる。また、League of Legendsやモバイルゲームでもチームを指導し、タイトル獲得に導いた。オリンピック選手や多くのプロスポーツ選手のサポートにも数多く携わっている。ヘルシンキ大学卒業、フィンランド在住。