村瀬心椛:「本当に重たい」銅メダル

北京2022スノーボード女子ビッグエアで、日本初のメダルをもたらし、冬季オリンピック女子日本代表メダリストでは、最年少記録を塗りかえた村瀬心椛が、競技終了から一夜明けてTEAM JAPANメダリスト会見に臨み、飾り気のない等身大の言葉で将来を語った

1 執筆者 Yukifumi Tanaka/田中幸文
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(2022 Getty Images)

北京2022スノーボード女子ビッグエアで、銅メダルに輝いた**村瀬心椛**は、ふたつの快挙を成し遂げた。

ひとつは、スノーボードのビッグエアで日本初のメダルを獲得したこと。もうひとつは、冬季オリンピック女子日本代表のメダリストとしては、17歳という最年少記録を更新したことだ。

「怪我とかしたけど、諦めずここまで来れてよかった」

昨日(2月15日)の晩に実施されたメダルセレモニーでは、満面の笑顔で表彰台に上り、その誇らしい銅メダルを首にかけた。

「本当に重たい。このメダル取れて、よかったなってすごく思いました」

一夜明けた今日(2月16日)の午前、TEAM JAPANメダリスト会見に臨み、今後の目標などを語った。

家族と、たこ焼きパーテイー

会見は、終始和やかな雰囲気で進んだ。

ビッグエアの高所に位置するスタート地点から急勾配の斜面を一気に滑り降りて、舞い上がった空中でアクロバティックなパフォーマンスを披露するアグレシッブな空気感を露にも感じさせない、村瀬の穏やかなパーソナリティと語調のギャップが印象的だった。それから、あどけなさの残る笑顔で、ハキハキと受け答えする17歳の飾り気のない等身大の言葉にも、彼女の魅力を感じられた。

「地元に帰って、岐阜の空気を吸いたいです」

「たこ焼きが好きなので、たこ焼きパーティーとか、家族とできていないことを一緒に楽しんで。そういう普通のことを、もっと楽しく過ごせたらいいなって思ってます」

「(自分へのご褒美には)アイスも好きなんで、アイスとか(笑)梅干しとか、イカの天ぷらとか(笑)」

でも、やっぱり、17歳の村瀬には、北京2022に向けた海外遠征のために、なかなか一緒に過ごすことのできなかった家族との時間を一番大切にしたいようだ。

「さっきも言ったんですけど、たこ焼きとか家族みんなで一緒に食べれたらいいなって思っています」

大先輩と大スターと #StrongerTogether

先のコメントの通り、村瀬は岐阜県岐阜市出身。

現在在学中の村瀬の高校の卒業生には、北京2022においてTEAM JAPANの初メダルを獲得したフリースタイルスキー男子モーグル銅メダリストの堀島行真がいる。

「高校の大先輩として、一番最初に北京オリンピックでメダル獲得されて。 本当にカッコいい大先輩です」

「行真くんと一緒にメダル取りたいって」

先輩の活躍が、後輩をより強くする。

「ビッグエアでは、絶対メダルをとって、笑顔で帰るっていうのを意識しながら挑めて。(北京2022で)行真君と一緒に取れたメダルで、本当によかった」

村瀬にとって、北京2022の表彰台は、特別なものになったようだ。なぜなら、小さい頃からの憧れの大スターで、かつこのビッグエアでは、逆転勝利で金メダル2連覇を達成したアンナ・ガッサー(オーストリア)とともに、肩を並べることができたのだから。

「本当に、すごく、夢のようでした」

「小さい頃から憧れていた選手で、(ガッサーが)日本に練習しに来てたんですけどその時に(初めて)見て。海外の選手のレベルは、本当に高いんだなって」

30歳でオリンピック2連覇を達成したガッサーは、村瀬の現在の年齢よりひとつ上の18歳から、スノーボードを始めたというから驚きだ。ビッグエア女子メダリストのオフィシャル記者会見で、ガッサーは進化を続ける女性スノーボーダーの活躍を誇らしく感じていると発言。

「本当に普通じゃない人生ですよね。18歳からスノーボードを始めたんですもの。だからこそ、まだまだいけるって感じるんです」

「今日の(決勝の)女性選手はみんな素晴らしい滑りでした。全員がメダルを取れる可能性をもっていた。だからこそ、みんなでレベルアップしているのだと感じます」

ガッサーは、果敢に挑んだ4位入賞の岩渕麗楽を称えた。

「彼女の挑戦に、誇りを感じています。レイラは、ビッグエアの更なる進化のために、(難しいトリックへ)挑戦することを選んだ。彼女を称えたいです」

村瀬にとって憧れの大スターも、共に戦う仲間がいるから、もっと強くなれるのだ。

姉と妹と #StrongerTogether

村瀬は、もう4年先のことも考えているようだ。

「銅メダルじゃ終われないと思ってるので」

「1番てっぺんを目指して、金メダルを取って、(次は)妹と一緒にオリンピック出場したいなって思います」

村瀬の妹、由徠(ゆら)は、姉と同じく、スロープスタイル/ビッグエアの強化指定選手に認定されている。

現在15歳の由徠は、4年後のミラノ・コルティナ2026はもちろん、2年後に控えた江原道2024冬季ユースオリンピックの機会もある。

「(北京2022会場へ)来る前にも、(妹と)たくさん電話してたんです。『一緒にオリンピックに出たいね。由徠ならいけるよ、一緒に行こうね』っていうのを話しました」

「(妹が)一生懸命がんばってる姿を、一番近くで見ているのが私だと思う」

姉と妹は、ふたりで共に、強くなる。

その前に、地元の空気をたくさん吸って、妹と家族とゆっくり、"たこパー" を楽しんでほしい。

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