男子バレーW杯日本代表レビュー:メダル獲得はならずも、28年ぶり4位で東京五輪に向け手ごたえ

石川祐希と西田有志が決定力の高さを披露

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
男子日本代表はバレーボールワールドカップで4位の好成績を収めた。東京五輪に向けて視界は決して悪くない

4年に一度、オリンピックの前年に開催されるFIVBバレーボールワールドカップ。世界ランク11位の男子バレーボール日本代表は中垣内祐一監督のもと、強豪国と熱戦を繰り広げ、価値ある勝利を積み重ねた。新たな歴史をつくったチームに対し、さらなる飛躍を期待せずにはいられない。

「龍神NIPPON」は強豪ロシアに歴史的勝利

バレーボールワールドカップ(以下W杯)の出場国は12カ国。14大会連続14回目の出場となった開催国の日本のほか、世界ランク1位のブラジルを筆頭に、アメリカ、イタリア、ポーランド、ロシア、カナダ、アルゼンチン、イラン、エジプト、オーストラリア、チュニジアが福岡、広島、長野で火花を散らした。これまでのW杯では優勝国に翌年のオリンピック出場権が与えられたが、今大会では同ルールは採用されなかった。

10月1日、「龍神NIPPON」の異名を持つ日本はリオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得したイタリアとの初戦を迎えた。日本は持ち前のチームワークの良さでスピード感あるプレーを見せつけ、格上相手にストレート勝ち。最高の形でスタートを切った。

ただし、翌日のポーランドとの第2戦では敗れ、連勝ならず。世界選手権2連覇中の相手に対して、日本は前日の疲れからかサーブなどのミスを連発し悔しい敗戦となった。

1勝1敗の日本は、中1日で迎えた第3戦のチュニジア戦で見事立て直しに成功する。速攻やバックアタックで得点を重ねて快勝した。その後第4戦のアメリカ戦では主力を温存したこともあって惨敗したものの、第5戦アルゼンチン戦で白星を飾ると、その勢いのまま第6戦でオーストラリアを下した。第7戦のロシア戦では19歳の新星、西田有志が持ち前の強打で決定力を発揮。25−22、21−25、25−22、25−16のスコアで、オリンピックで4度の金メダルを獲得してきたロシアに10年ぶりの大金星をあげた。

続くエジプト戦とイラン戦でも勝利するなど絶好調のチームだったが、王者ブラジルにはセットカウント1-3で敗れ、惜しくもメダルは逃してしまった。しかし最終戦では意地を見せカナダに競り勝ち、通算成績は8勝3敗。最終的に1991年大会以来28年ぶりとなる4位で大会を終えた。「龍神NIPPON」は間違いなく、新たに輝かしい歴史を刻んだと言っていい。

日本の決定力の高さは目を見張るものがあった。「日本最高の逸材」と称される石川祐希、前述の西田、そして柳田将洋のジャンプサーブを筆頭に、攻撃への意識の高さが目立った。

2018年9月の世界選手権で1次リーグ敗退に終わった際には解任騒動が巻き起こるなど、苦しい一年を過ごしてきた中垣内祐一監督にとっても、見事な復活劇となった。選手たちが絶大な信頼を寄せる、元フランス代表監督フィリップ・ブランコーチの存在も大きい。ブランコーチは「日本人らしいバレー」を掲げ、日本人の特性を生かしたプレーをチームに根づかせた。

全勝で3度目のW杯制覇を成し遂げたブラジル

11戦全勝。圧倒的な成績を残し、文句なしの優勝国となったのがブラジル代表だ。2位には勝ち点4差でポーランド、3位は勝ち点5差のアメリカとなった。

優勝したブラジルは男子バレーボールがオリンピックの正式種目となった1964年東京五輪に南米初の代表として出場して以来、強豪国として安定した力を発揮してきた。その実力は、ここ数年でさらに進化している。これまでにオリンピックではリオデジャネイロ五輪を含めた3つの金メダルと3つの銀メダルを獲得。南米選手権では驚異の26連覇中、そしてW杯では今大会の優勝を含めて3度目の制覇となった。

現在のブラジル代表を率いるレナン・ダル・ゾット監督は、自身も選手として1984年のロサンゼルス五輪で銀メダルを獲得した経験を持つ。さらに全選手が注目選手と言えるほど、黄金世代がそろっている。とりわけ、202センチの上背のあるアラン・ソウザと、そのソウザよりもさらに5センチ背の高いエバンドロ・グエッラの存在は大きい。長身から繰り出されるブロックとアタックは、ブラジルの最大の武器になっている。

ブラジルは今大会で11戦のうち7試合でストレート勝ちを収めている。その中にはイタリア、ロシア、アメリカなどのが含まれるなど、強豪国相手にもしっかりと勝ち切る勝負強さも見せつけた。

日本男子バレー復活は東京五輪での戦いにかかる

中垣内ジャパンの堂々たる戦いぶりを見れば、「日本男子バレーボール復活」への期待を抱かざるを得ない。1964年の東京五輪で銅、1968年のメキシコ五輪で銀、そして1972年のミュンヘン五輪で金と一時は黄金期を迎えながらも、その後は16年間オリンピック出場を逃していた。だが、2度目となる母国開催での復活劇に向けて着々と進めてきた準備の成果の一片が今大会で見えたと言っていい。

前述の柳田と石川は、日本男子バレー界の未来を担う「NEXT4」と呼ばれ、かねてから注目を集めていた。1992年の柳田は豊富な海外経験を生かし、今大会では確実にチームの中心的存在として躍動。さらに、当時はまだ高校3年生だった2017年、Vプレミアリーグ男子のジェイテクトSTINGSに高卒選手として入団を内定させ、翌年には日本代表入りを果たした「怪物」西田も最年少とは思えない落ち着いたプレーを見せた。本番の東京五輪までに、現有戦力のさらなる底上げを徹底し、そして新戦力の台頭によってメンバーによるプレーのムラがなくなれば表彰台を十分に狙える。

絶好調を誇るブラジルは今大会の自信を糧に、より一層の進化を遂げてくるはずだ。高い得点力を誇るアタッカー陣、そして分厚い選手層を武器とし、東京五輪でも順当に勝利を積み重ねてくるだろう。ブラジルの連覇を阻止し、表彰台に割って入るのはどの国になるのか。

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