【東京オリンピック出場枠争い】サーフィン五輪代表入りへ、男子は五十嵐カノアが1歩リード。女子は脇田紗良か、前田マヒナか、それとも…

1 執筆者 渡辺文重
五十嵐カノアは、チャンピオンシップツアー・バリ大会で初優勝を飾るなど、代表入りが濃厚

東京五輪から正式種目となるサーフィン。日本は開催国枠として男女1名ずつを確保している。ただ、男子は開催国枠を返上、実力で出場枠を確保できる見込みだ。女子も若手が台頭しており、出場権争いは激しさを増している。

世界中のサーファーに五輪出場のチャンス

サーフィンは、2020年の東京五輪で新たに採用される競技だ。男女ショートボードの2種目。男女ともに20名の選手で争われる。

日本は開催国枠として、すでに男女1枠ずつを確保。ただし、日本が**チャンピオンシップツアー(以下、CT)ワールド・サーフィン・ゲーム(以下、WSG)**の結果により、出場枠を確保した場合、開催国枠は返上される。また、アジア大陸、アフリカ大陸、ヨーロッパ大陸、オセアニア大陸の中で、最上位の選手がオリンピックに出場できることも決まっている。なお国別の出場枠は、男女ともに原則最大2名までとなっている。

これらの要件を踏まえて、開催国枠を除く残り38の出場権は、まず、ワールド・サーフ・リーグ(WSL)が主催するCTの上位選手が獲得することになる。男子は上位10選手、女子は上位8選手に、東京五輪の出場権が与えられる。次に優先されるのが、国際サーフィン連盟(ISA)が主催する2020年WSGの結果だ。男子は上位4名、女子は上位6名が出場権を獲得する。3番目に2019年のWSGの結果が重視される。なお、オリンピックへの出場を望む選手は、WSGに出場することが求められている。

さらに2019年7〜8月にペルーのリマで開催されるパンアメリカンゲームの優勝者、男女1名に出場権が与えられる。ただし「国別の出場枠は男女ともに最大2名」で、CTの上位者が優先されるため、WSGやパンアメリカンゲームで優勝しても、出場権を獲得できるとは限らない。

東京五輪“波乗りジャパン”の有力候補は?

CTランキング上位者が優先的に出場権を得るものの、東京五輪のサーフィン競技への出場を希望する選手は、前提条件として、WSG出場が求められる。2019年のWSGは、9月に宮崎県の木崎浜で開催。まず、この大会に出場することが、東京五輪出場に向けた第1歩だ。日本サーフィン連盟(NSA)は日本代表選考基準として、以下の3つを定めた。

  1. 2018年ワールドランキングにおける日本人最高位
  2. 第1回ジャパンオープンオブサーフィン優勝者
  3. NSA強化部による推薦

2018年ワールドランキング日本人最高位は、男子が五十嵐カノア(CT10位/QS1位)で、女子は前田マヒナ(QS14位)。クオリファイシリーズ(QS)はCTの2部リーグ的な扱いとなっている。第1回ジャパンオープンオブサーフィンは5月6、7日に千葉県の釣ヶ崎海岸で行われて、男子は村上舜、女子は松田詩野が優勝。NSA強化部による推薦では、2019年6月2日時点で男子QS8位の大原洋人、女子QS6位の脇田紗良が選出された。

この男女3選手ずつが、東京五輪における“波乗りジャパン”の有力候補となる。ただし、この中でも五十嵐カノアは別格だ。5月25日に最終日を迎えたCT第3戦(インドネシア・バリ島)で初優勝を飾り、世界ランキングを2位まで上昇させている。男子は開催国枠を返上することになるだろう。

CTに出場している日本の女子はいないが、その下にあたるQSに参加している選手は少なくない。6月2日時点のランキングで、上位50位以内に8選手がランクイン。6位に脇田紗良、12位に前田マヒナのほか、西元エミリ(38位)、ジュリ(37位)姉妹や、都筑有夢路(41位)など、伸び盛りの若手が名を連ねている。現時点では脇田紗良と前田マヒナが1歩リードしているが、WSGの日本代表に選出された松田詩野が46位であることを考えれば、まだ誰が東京五輪に出場してもおかしくない状況だ。

東京オリンピック日本代表内定選手

男子

  • 大原洋人
  • 五十嵐カノア

女子

  • 前田マヒナ
  • 都筑有夢路

※今後の選考対象大会の結果次第で変わる可能性がある

五輪のジレンマ…海外有力選手が出場できない可能性も

サーフィンは東京五輪より正式種目となるが、サーフィンの権威たちは、現在、WSLが主催するCTに集中している。2019年のCTは男子が34名。前年度CT上位22名と同QS上位10名、そしてワイルドカード2名で構成される。女子は前年度CT上位10名、同QS上位6名、ワイルドカード1名の17名となっている。CTは男女ともに4月から12月に掛けて11戦行われ、そのポイントでチャンピオンやランキングが決定する。

一方、東京五輪では、国別の出場枠を男女ともに最大2とし、開催国や4大陸の最高位選手、ISAが主催するWSGの上位者など、数多くの国から参加できるように配慮されている。ここで問題となるのが、サーフィン強豪国内での争いだ。

2018年のCT男子トップ10をみてみると、1位ガブリエル・メディナ、3位フィリペ・トレド、4位イタロ・フェレイラがブラジル、2位ジュリアン・ウィルソン、6位オーウェン・ライト、9位ウェイド・カーマイケルがオーストラリアと、同じ国の選手がランクインしている。つまり、国籍に偏りがあるのだ。女子の場合は、上位10人中6名がアメリカの選手となっている。言い換えると、世界トップレベルの選手でも、種目が男女1種目かつ国別出場枠が各2枠のみというルールから、選手層が厚い国ほど競争がシビアになり、世界的な実力を持つサーファーが東京五輪に出場できないということが起こりうるのだ。

東京五輪に向けて、ブラジル、アメリカ、オーストラリアなど、強豪国の代表争いも注目となる。

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