堺亮介:生後半年ほどでトランポリンを体感。全日本選手権の予選敗退が東京五輪への発奮材料になるか【アスリートの原点】

小学1年生から全国大会の常連に

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
日本では好結果を残せているのに、国際舞台では通用しない──。小学校卒業を間近に、早くも世界を意識するようになった

2019年10月、大学在学中に全日本トランポリン競技選手権大会で優勝を果たした堺亮介は、人生のほぼすべてをトランポリンに捧げてきたと表現しても過言ではない。トランポリンのクラブに入ったのは2歳の時。小学生時代に早くも世界の壁を知ったからこそ、東京五輪での活躍が期待される。

中学生男子の最高難度記録を更新

生まれて半年後にはトランポリンで跳ねていたという。2019年12月、国際体操連盟が主催する世界トランポリン競技選手権で5位入賞を果たし、東京五輪出場を内定させた堺亮介のキャリアは、ほぼ人生の長さと重なる。

1997年7月24日、神奈川県伊勢原市で生まれた。程なく、母親が産後の運動としてトランポリンのサークルに入ったことが人生を決めた。亮介と名づけられた赤ん坊は生後半年には母親に抱かれ、トランポリンの上を舞っていたという。2歳の誕生日を迎えると、自身も正式に厚木健康体操センターというクラブに加入し、本格的なキャリアを歩み始めた。

才能が開花するまでに、それほど長い時間を必要としなかった。地元の比々多小学校に入学するとすぐに全日本トランポリン競技ジュニア選手権大会へ出場。小学1年生から全国大会の常連となったものの、小学6年生になるとさらに高いレベルの壁に突き当たった。初めて出場した世界大会では、決勝に残れなかった。難しい技を繰り出す同世代の海外選手たちを目の当たりにして、自らの未熟さを実感した。

日本では好結果を残せているのに、国際舞台では通用しない――。小学校卒業を間近に、早くも世界を意識するようになった。

地元の山王中学校に入学後は、さらに練習に力が入った。中学生活の集大成となる3年次にはスイスやカナダで行われた国際大会に出場し、メダルを勝ち取っている。小学生時代に突き当たった壁を越えた堺少年は、直後の全日本ジュニアトランポリン競技選手権大会で最優秀選手賞と最高難度点賞をダブル受賞。中学生男子の最高難度記録を更新するパフォーマンスだった。

大学在学中にワールドカップで2度の金メダル

その才能を見込まれ、高校は石川県の星稜高等学校に進学する。小学生のころに同校トランポリン部の合宿を体験させてもらった縁もあった。寮生活の3年間でトランポリンに打ち込み、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)では個人で2連覇、団体では3連覇という見事な成績を残している。

2016年に金沢星稜大学に入学した。1年次にポルトガルで行われたワールドカップに出場。2年次にはスペイン開催のワールドカップで、シンクロナイズド部門で銀メダルを獲得した。3年次にはポルトガルで実施されたワールドカップのシンクロナイズド部門で金メダルを掲げ、2019年2月にもアゼルバイジャンで行われたワールドカップの同部門で金メダルを勝ち取っている。同年11月に全日本トランポリン競技選手権大会で優勝を果たすと、12月の世界トランポリン競技選手権では5位に食い込み、大学在学中に東京五輪行きを内定させた。

2020年4月からはバンダイナムコアミューズメントに所属し、同社初のトップアスリート採用として注目を集めた。2020年10月31日、11月1日に行われた全日本選手権では予選敗退。自身のインスタグラムで「無観客試合ですが、開催されることに感謝して精一杯演技してきます!」と述べていたが、コロナ禍での調整の難しさを感じさせた。

2021年の東京五輪に向けてはもう、飛躍を続けるしかない。大学時代、トランポリンの魅力について「地上では味わうことのできない、空を飛んでいるような感覚を味わえるところ」と話したことがあるが、人生のほぼすべてでその体感を追求してきた。トランポリンとともに生きてきた男は、力強く、華麗に空を舞う挑戦を続けていく。

選手プロフィール

  • 堺亮介(さかい・りょうすけ)
  • トランポリン選手
  • 生年月日:1997年7月24日
  • 出身地:神奈川県伊勢原市
  • 身長/体重:168センチ/63キロ
  • 出身校:比々多小(神奈川)→山王中(神奈川)→星稜高(石川)→金沢星稜大(石川)
  • 所属:バンダイナムコアミューズメント
  • オリンピックの経験:なし
  • ツイッター(Twitter):堺 亮介 (@ryo_jump0724)
  • インスタグラム(Instagram):堺亮介 (@ryosuke.sakai.52493)

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