レスリング女子W杯は日本が5連覇...選手層の厚さ示すも、課題も残す大会に

軽量級の「元世界女王コンビ」須﨑優衣と奥野春菜が躍動

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
大会5連覇を果たしたレスリング女子日本代表/時事

レスリング女子ワールドカップが2019年11月16日、17日に千葉県成田市で開催された。日本は東京五輪代表が内定している川井梨紗子&友香子姉妹や元世界女王の須﨑優衣らの活躍により、5大会連続11回目の優勝を果たし、「全階級で金メダル」を目標に掲げる東京五輪に向けて弾みをつけた。

日本女子は選手層の厚さを示しながら5連覇達成

国別対抗のレスリング女子ワールドカップ(以下、W杯)で、日本がレスリング大国の貫録を示した。同大会は各チーム10階級で対戦する団体戦で行われる。日本はウクライナと中国との予選Aグループを2連勝で1位通過すると、B組1位のアメリカとの決勝戦を7-3で制し、5年連続11回目の優勝を果たした。

予選グループでは、選手層の厚さを見せた。ウクライナとの初戦は全階級で大学生の選手を起用。若手中心のメンバーで臨むも、50キロ級の加賀田葵夏(かがた・きか)から順調に勝ち進んでいく。62キロ級の森川美和が勝利を収めた時点で6勝目をマークし、勝利を決定づけた。この試合、最終的に落としたのは72キロ級のみで、9−1とウクライナを寄せつけなかった。

続く2戦目の相手は中国。過去6度の優勝を誇る難敵との対戦はまず、50キロ級で須﨑優衣が勢いをもたらした。今年の世界選手権で5位に入り東京五輪出場枠を獲得している孫亜楠(スン・ヤナン)を相手に、須崎が3−2で勝利。続く53キロ級の奥野春菜も世界選手権3位の龐倩玉(パン・キアンユ)を4−3で破り、流れを手繰り寄せる。さらに、東京五輪代表内定の川井梨紗子&友香子姉妹がそろって白星を挙げるなど前半の6階級を制すると、6-4で中国を下し、2連勝を果たした。

大会2日目、アメリカとの優勝決定戦でも、軽量級の「元世界女王コンビ」須﨑と奥野がともにテクニカルフォール勝ちを収めて流れを引き寄せた。これに続いて川井梨紗子と稲垣柚香も同じくテクニカルフォールで快勝するなど白星を重ね、65キロ級の類家直美の勝利でチームとして6勝目を挙げ、7−3という結果で大会5連覇を決めた。

東京五輪をめざす須﨑優衣が存在感を発揮

今大会で大きな存在感を示したのは、50キロ級の須﨑だ。

1999年生まれの須﨑は世界選手権代表争いで入江ゆきに敗れ、一時は東京五輪出場が遠のいた。しかし、入江が世界選手権でメダルを逃したため、再びチャンスがめぐってきた。2019年12月の全日本選手権で優勝すれば、2020年3月に行われる東京五輪アジア予選の出場資格を得ることができる。入江が負傷で不在だった今大会は、中国戦、アメリカ戦に先陣を切って登場し、2連勝。「団体戦の役割をしっかりと果たせた」と手応えを口にし、逆転での東京五輪出場へ向けて好調をアピールした。

今大会で日本代表のキャプテンを務めた川井梨紗子は、得意の高速タックルで勝利を手繰り寄せた。アメリカとの決勝では、前半1分半過ぎに低姿勢のタックルで相手選手の右足を捉えて3−0とリードを奪う。後半も片足タックルから2連続のローリングで一気に点差を広げ、約2分を残して勝負を決めてみせたが、日本のエースに相応しい圧勝だった。自らの試合以外でも、ベンチからチームメイトを大きな声で鼓舞するなど、プレー以外でもチームをけん引した。東京五輪でも日本代表の大黒柱となることが期待されるなか、頼もしい姿を見せた大会となった。

姉妹での東京五輪金メダルが期待される川井梨紗子の妹、友香子も、盤石の戦いぶりだった。中国戦でフォール勝ちを収めると、アメリカ戦では7−0と相手に1ポイントも与えず、調子の良さをうかがわせている。

不安が浮き彫りとなった重量級

今大会の結果により、日本はカデット、ジュニア、U23、シニアの世界選手権、そしてW杯と団体戦の世界大会すべてで優勝となり、「世界団体戦グランドスラム」を2014年以来、6年連続で達成した。

だが、メダル量産が期待される東京五輪に向けて重量級の戦いぶりには不安が残る。中国戦では65キロ級から上の4階級すべてで敗戦。65キロ級の榎本美鈴、68キロ級の松雪成葉はともに0−2で敗れ、東京五輪代表が内定している76キロ級の皆川博恵は、0−7と完敗を喫した。アメリカ戦でも68キロ級と76キロ級を落としており、強化本部長の西口茂樹氏は「問題は68キロ級と76キロ級」と口にしている。

ただ、76キロ級の皆川に関しては、すでに東京五輪代表が決まっていることで、今大会を「いろいろな攻めを試す」場として捉えて臨んでいたという。女子強化委員長の笹山秀雄氏も「深刻な状況とは思っていない」と総括した。

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