ベスト8が出揃ったラグビーW杯。日本代表は再び南アフリカを撃破できるか

優勝本命は、前人未到のW杯3連覇を狙う「オールブラックス」

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
予選プールを4戦全勝で突破し、初のベスト8進出を果たした日本代表。さらなる高みをめざす

ラグビーワールドカップ2019は、ベスト8が出揃った。準々決勝では、3連覇をめざすニュージーランドがアイルランドと激突。初の決勝トーナメント進出を果たした日本は、前回大会で「史上最大の番狂わせ」を起こした南アフリカと再び相見える。日本の快進撃はどこまで続くか。そして世界王者の称号を手にするのは果たして。

初の準々決勝は南アフリカと激突、4年前の再現へ

自国開催のワールドカップ(以下W杯)で、初のベスト8進出を果たしたラグビー日本代表。予選プールを4戦全勝、1位通過で駆け抜けた勢いはどこまで続くか。10月20日に東京スタジアムで行われる準々決勝では、南アフリカと激突する。

南アフリカはW杯7大会連続出場、過去2度の優勝を誇る強豪で、今大会も優勝候補の一角と目される。予選プールでは王者ニュージーランドに敗れてB組2位通過となったものの、4試合で奪われたトライはわずか3つと堅守が光る。伝統的なフィジカルの強さや正確なセットプレーも健在だ。

一方、日本にとっては、何と言っても「ブラントンの奇跡」と称される前回W杯での対戦が鮮明に記憶されている。当時W杯通算わずか1勝で、世界ランク13位だった日本が、同3位の南アフリカに対して34−32で勝利する大金星をあげた。この一戦は「スポーツ史上最大の番狂わせ」として世界中に驚きを与え、日本国内でのラグビー熱も大いに高まった。

日本と南アフリカは、今大会の開幕直前となる9月6日にテストマッチを行い、日本が7−41と大差をつけられ敗戦を喫している。南アフリカが前回大会の雪辱を果たすか、それとも日本が自国ファンの後押しを受けて2度目の番狂わせを起こすか。因縁の対決に注目が集まる。

日本の勝機は「テンポの速さ」。2人のウイングに注目

予選プールを振り返ると、日本はロシア、アイルランド、サモア、スコットランドと同居し、4戦全勝を収めた。「ティア1」と呼ばれるラグビー伝統国以外のチームが決勝トーナメントに進むのは、2007年大会のフィジー以来、W杯史上4回目のことだ。

準々決勝の南アフリカ戦で勝敗のカギとなるのは、「テンポの速さ」だろう。世界最高クラスのフィジカルを誇り、体を激しく当てるパワーラグビーを展開する南アフリカに対してまともにぶつかり合えば、分が悪くなる。日本勢にとっては予選プールのアイルランド戦、スコットランド戦で見せたような、速いテンポで相手の防御が整うより先に仕掛け続ける組織力とスピード感が重要だ。走力勝負に持ち込むことができれば、日本の勝機は高まる

「走力勝負」のキーマンには、快足自慢のウイング、松島幸太朗と福岡堅樹の名前が挙げられるだろう。今大会の日本はオフロードパスを効果的に用い、2人のスピードを生かして前への推進力を存分に発揮することができている。南アフリカの守備はリアクションや横の動きにルーズな面があるため、2人のスピードスターが切り裂いていく場面が見られる可能性は決して低くない。

仮に日本が南アフリカを撃破すると、準決勝で待ち受けるのはウェールズvsフランスの勝者となる。そしてトーナメントの反対の山には、優勝候補筆頭のニュージーランドをはじめ、イングランド、オーストラリア、アイルランドと強豪国がひしめく。日本はホームの大声援という絶大な後押しを受け、さらに新たな歴史をつくることができるだろうか。

絶対王者「オールブラックス」を阻むチームは現れるか

他国に目を向けてみると、最注目は前人未到の大会3連覇を狙う「オールブラックス」ことニュージーランド代表だ。チームスタイルとしては、身体能力、運動量、スピードを兼ね備え、ポジションに関係なく多くの選手がボールに関わって攻撃を行う。高いパススキルを生かしたスピーディーな展開は、日本が手本にしているスタイルでもある。

予選プールB組でオールブラックスは、プール戦随一の好カードとなった南アフリカとの初戦のみにベストメンバーを起用し、23−13で危なげなく勝利。続く2試合は選手を入れ替え、さまざまな布陣をテストする余裕を見せた。第4戦のイタリア戦が台風19号の影響で中止となったため、準々決勝は17日ぶりの試合となる点が試合勘の面で懸念材料ではある。それでも、2009年11月から2019年8月まで、10年近く世界ランク1位の座を守り続けてきた絶対王者が優位という見方は揺るがない。

準々決勝で実現することとなったオールブラックスとアイルランドとの一戦は、決勝カードに推す声も多かったビッグマッチだ。強豪アイルランドはプールAの第2戦で日本に苦杯を喫し、まさかの2位通過となった。だがその後、ロシアとサモアに連勝して立て直し、上り調子で王者に挑む。ニュージーランドは2016年から今大会前までに行った47のテストマッチでわずか6敗しかしていない。ただし、そのうちの2敗がアイルランドに喫したものというデータもあり、激戦が予想される。

イングランドは、4年前の大舞台で日本代表を指揮して歴史をつくった名将エディー・ジョーンズが率いる。綿密な戦略のもと「死の組」と評されたプールCを1位通過。3試合で17トライを決めた一方、相手に許したトライはわずか2本と攻守の安定感が際立ち、表彰台に食い込む力を十分に備えている。

ベスト8はいずれも強者揃い。初めてアジア、日本の地で繰り広げられる世界最高峰の戦いから最後まで目が離せない。

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