7人制ラグビー「セブンズ」では2016年リオ五輪で男子日本代表が大金星。女子代表は平野優芽ら若手が躍動中

1試合20分ほどで決着がつく短期決戦

男子代表のキャプテンを務める小澤大は前回五輪では最終メンバーから落選。その悔しさを発奮材料に変えてきた

7人制ラグビーの「セブンズ」はまだまだ日本ではマイナーなスポーツという認識があるかもしれない。ただ、2016年のリオデジャネイロ五輪では日本代表が強豪ニュージーランドを破る歴史的快挙を成し遂げるなど、日本勢の実力は確実に伸びてきている。女子代表の「サクラセブンズ」も2020年を見据えて奮闘中。楕円球をめぐるスポーツの歴史や見どころなどを紹介する。

2016年五輪で7人制ラグビーが正式種目に

1924年のパリ五輪以来、実に92年ぶりに2016年のリオデジャネイロ五輪でラグビーがオリンピック正式種目として復活した。

ラグビーと言えば、1チーム15人で行われるスタイルが一般的だが、同大会で採用されたのは7人対7人で行われるラグビー「セブンズ」だ。フィジーの男子代表が同国史上初となる金メダルを獲得し、女子の金メダルはオーストラリアが手中に収めた。

セブンズにはオリンピックの他、大きな国際大会が2つある。世界を転戦し、合計ポイントでシーズン優勝を決める「ワールドラグビーセブンズシリーズ」と、4年に一度、世界の頂点を決める「ラグビーワールドカップ・セブンズ」だ。

過去の成績を振り返ると、15人制同様、男子ではニュージーランドが圧倒的な強さを誇る。ワールドラグビーセブンズシリーズでは12回の優勝、ラグビーワールドカップ・セブンズでは3度の世界一に輝いてきた。

ただし、近年は他国も健闘している。ワールドラグビーセブンズシリーズでは、2014−15シーズンからフィジーが2連覇、2016−17シーズンから南アフリカが2連覇と、ニュージーランド一強の構図は崩れ始めている。日本代表も2016年のリオ五輪で、ニュージーランドを14-12で下す大金星を挙げている。

15人制と同じ広さのフィールドを使用

ここ数年で一気に注目され出したセブンズだが、歴史は意外と古い。

誕生したのは1883年。ネッド・ヘイグというスコットランド人のアイデアがきっかけだった。肉屋で働く一方、自身もプレーヤーだったヘイグは、当時財政難に頭を抱えていたスコットランド・メルローズのクラブチームを救おうと、資金調達のためラグビーの大会を提案。15人制よりも開催しやすい7人制ラグビーを思いつくと、これが大成功を収めた。展開の早いゲームとシンプルな競技スタイルが受け、瞬く間にイングランド全域に広がっていった。

今やワールドシリーズが開催されるほどの人気を博すセブンズの基本的なルールは15人制ラグビーとほぼ変わらない。得点形式は同じだし、68メートル~70メートル×94メートル~100メートルというフィールドの大きさも同じだ。サッカーグラウンドと同程度の広さを7人でカバーするため、15人制以上に個々の運動量やスピードが求められる。全員攻撃、全員守備が戦術の基本で、だからこそ15人制ラグビーでは見られないようなスピード感あふれるアグレッシブなプレーが飛び出す。

一方、試合時間は短い。40分ハーフで行われる15人制に対し、セブンズはわずか7分ハーフで、決勝戦のみ10分ハーフで行われる。1試合20分ほどで決着がつくため、よりスピーディーな展開となる。息つく暇もなく、一瞬たりとも目が離せないのがセブンズの特徴だ。

日本代表は男女ともに着実に成長

日本でセブンズの活躍が大きな話題になったのは、2016年のリオデジャネイロ五輪だ。前述したとおり、強豪ニュージーランドを倒す「ジャイアントキリング」をやってのけた。

ニュージーランドはまさにタレント集団だった。15人制ラグビーでワールドカップ2連覇に貢献したソニー・ビル・ウィリアムズをはじめ、セブンズの国際ラグビー界の年間MVPを受賞したことのあるティム・ミケルソン、オールブラックスでの経験を持つイオアネ兄弟。リオデジャネイロ五輪でも当然優勝候補に挙がっていたが、桑水流裕策(くわずる・ゆうさく)を中心とした男子日本代表が歴史的快挙を成し遂げる。男子1次リーグC組で対戦すると、14−12で接戦を制してみせた。

この歴史的な番狂わせはたちまち世界中を駆けめぐった。リオデジャネイロ五輪の前年に行われた15人制のラグビーワールドカップで日本代表が強豪の南アフリカを破る快挙を達成したことも手伝って、セブンズの男子日本代表は一躍世界中から脚光を浴びる存在となった。メダルにこそあと一歩届かなかったものの、強豪国を抑え、見事4位という好成績を残している。

実際、日本代表は男女ともに着実に実力をつけてきている。2018年9月に開催されたアジアラグビーセブンズシリーズ2018では男女ともに総合優勝を果たし、来る2020年の東京五輪に向けて順調に歩みを進めている。

日本代表の注目選手の筆頭は、リオデジャネイロ五輪では最終メンバーに落選し、その悔しさをバネに這い上がってきた現キャプテンの小澤大だろう。リオデジャネイロ五輪のニュージーランド戦で逆転ののろしを上げるトライを決め、一躍時の人となった副島亀里ララボウラティアナラや経験豊かな坂井克行、「スピードスター」の異名を持つ松井千士(ちひと)などが中軸を担う。

一方、「サクラセブンズ」の愛称を持つ女子代表は、「アニキ」の愛称で親しまれるキャプテン中村知春がチームをたばねる。ナイジェリア人の父を持ち、驚異的なフィジカルを持ち味とする大竹風美子は陸上からラグビーに転向して2年もたたずに日本代表で活躍するようになった異才だ。1999年9月30日生まれの田中笑伊(えみ)と2000年3月15日生まれの平野優芽(ゆめ)といったヤングスターの躍動にも期待がかかる。

東京五輪は男女ともに12カ国が参加

東京五輪の7人制ラグビーのセブンズは、東京都調布市にある東京スタジアムが会場となる。男子は7月27日(月)からの3日間、女子は7月30日(木)からの3日間で世界王者が決まる。

参加チームは男女ともに12カ国。日本は開催国枠での出場が決まっている。その他は、ワールドラグビーセブンズシリーズの上位4チーム、2019年6月から12月にかけてアジア、アフリカ、オセアニア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカで開催される地域予選を勝ち抜いた6チーム、敗者復活戦から1チームが参加資格を得る。

男女ともにワールドカップ・セブンズ2018を制覇したニュージーランドが東京五輪でも主役を演じる可能性が高い。男子代表に至っては、リオデジャネイロ五輪で日本に破れ、そのうえ期待されたメダルも獲得できなかっただけに、東京五輪にかける思いは強いだろう。男子では、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得したフィジーや、同大会で日本から銅メダルを奪った南アフリカ、セブンズ発祥の国イギリスといった強豪国の出場も見込まれる。

20分足らずの間に目まぐるしく攻守の展開が変わるセブンズ。息つく暇もなく、一瞬たりとも目が離せない7人同士の戦いが、東京五輪を盛り上げる。

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