堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと)は、世界最高峰のコンペティションであるストリートリーグスケートボーディングにおいて、アジア人初となる大会制覇を成し遂げた若き天才スケートボーダーだ。二十歳にしてワールドクラスの実力を身につけた彼は、当然ながら2020年東京五輪でも金メダルの最有力候補に挙げられている。
世界最高峰の大会を転戦する時代の寵児
現在、日本のスケートボードシーンでは、10代から20代前半の有望選手が続々と現れ、群雄割拠の様相を呈しつつある。彼らは世界の舞台で活躍することをめざし、日本国内の大会でしのぎを削っている。
しかし、2019年1月7日に二十歳になったばかりの堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと)は、すでに別次元の戦いに身を投じている。彼が今、戦っている相手は「世界」だ。本人は「まだまだ(世界トップクラスのスケートボーダーを)追いかける立場」と謙遜するが、実は「追われる存在」にもなっており、2020年東京五輪では金メダル獲得の有力候補に挙げられている。
堀米は現在、世界最高峰のプロリーグであるストリートリーグスケートボーディング(以下SLS)を転戦している。この大会に出場できるのは、リーグに登録された30名程度のプロスケートボーダーのみ。堀米自身をはじめ、世界中のスケートボーダーが憧れる大会であり、過去4度の年間王者経験を持つナイジャ・ヒューストン(アメリカ)やオーストラリア出身のシェーン・オニールなど、トップレベルのスケーターは数億円から数十億円の年収を得ていると言われている。
2017年5月、バルセロナで行われたSLSのプロオープン大会に、堀米はそれまでの実績が評価され、招待選手として出場した。日本人スケートボーダーにとっては出場するだけでも快挙であり、堀米自身も「憧れのスケーターたちとコンテストに出られてすごくうれしかった!」と興奮を隠せない様子だった。そして彼はこの大会で並みいるトップスケートボーダーたちと互角に渡り合い、ヒューストン、オニールに次いで3位に入賞するという大快挙を成し遂げた。
2018年にはSLSで3連覇の快挙を果たす
これでSLS認定プロとなった堀米は、続くパリ大会でも3位に入賞し、瞬く間にトップスケートボーダーの仲間入りを果たした。そして2018年、彼はさらなる快挙を成し遂げ、世界中に衝撃を与える。3月のタンパプロという大会こそ10位に終わったが、5月のSLSロンドン大会では「ナインクラブ」と呼ばれる9点台のスケートを連発し、日本人としてはもちろん、アジア人としても史上初めてとなる大会制覇を成し遂げた。
2018年、堀米の快進撃はこれだけにとどまらず、7月のロサンゼルス大会、12月のハンティントンビーチ大会でも優勝し、3連覇を達成。2019年1月にリオデジャネイロで行われた世界選手権(スーパークラウン)のファイナル進出の権利も手にした。
世界選手権ファイナルでは残念ながら本来の実力を出し切れず、8位に終わったが、新たなモチベーションにつながると考えれば、この結果もポジティブにとらえることができるだろう。
優雅なスケーティングでファンを魅了
世界最高クラスのスケートボーダーへと成長を遂げた堀米が競技を始めたのは、彼が6歳の時だった。同じくスケートボーダーだった父親の影響で、最初はバーチカルと呼ばれるハーフパイプを滑走する競技で技を磨いていった。
国内大会で優秀な成績を残し、10歳の時にはスポンサーがつき、その後、現在の種目であるストリートへと移行。2014年にはAJSA(日本スケートボード協会)年間総合王者になるなど、日本国内で圧倒的な強さを見せつけていった。
2016年にはスケートボードの本場とも言えるカリフォルニアに拠点を移し、有名デッキカンパニーである「BLIND SKATEBOARDS」のオフィシャルチームに加入。現地のプロスケートボーダーと共同生活を送りながら、スキルを磨く日々を送っている。コーチをつけないことが一般的なスケートボード界は、環境がモノを言う世界でもある。スケートボードが文化として確立されており、街のいたるところにスケートボードパークがあって自由に練習ができ、ハイレベルな仲間と切磋琢磨し合える環境で、堀米は飛躍的に実力を伸ばしてきた。
堀米はオリジナリティーあふれる難しいトリックを難なく決めてみせる。海外の選手の場合、身体能力の高さや全身のバネ、ボードを蹴る足首の強さを生かし、スピードやパワーを感じられるスケーティングをする選手が多い。一方、優れたボディバランスの持ち主である堀米のスケーティングは軽やかで空中姿勢がよく、優雅な印象を受ける。新技の開発にも余念がなく、大舞台で難しいトリックにチャレンジし、難なく成功させる度胸と勝負強さも持ち味だ。ハンドレール(手すり)を使ったトリックを得意としており、「ノーリー フロントサイド270リップスライド」という、体を270度旋回させながらハンドレールに飛び乗り、着地するトリックが十八番だ。
SLSで3連覇を飾ったことによって、堀米は世界トップクラスのスケートボーダーの仲間入りを果たした。2019年のSLSでは、当然ながら年間王者をめざして戦うことになる。東京五輪についても「すごく大きなイベントなので出てみたい。金メダルも狙えると思う」と意欲を見せる。もしかしたら、2020年の東京五輪には「スケートボード世界王者」として参戦することになるかもしれない。