オリンピックにもたらされる新たな魅力。スケートボードの「ストリート」は若手が躍動する「お祭り」に

冬季オリンピックメダリストの挑戦にも注目

「ストリート」はその名のとおり街中を思わせるコースで行われる

若者文化の一つとしてアメリカで誕生したスケートボードが、東京五輪で新競技に採用された。出場選手は十代が大半を占め、会場も「お祭り」さながらの活気あふれる雰囲気となることが予想される。オリンピックの歴史に新風を吹き込むスケートボードの「ストリート」の魅力を紹介する。

「ストリート」では高難度の回転技を競い合う

2020年の東京五輪では新たに5競技18種目が追加種目として採用される。野球とソフトボールのように復活を果たした種目もある一方で、新たに採用された競技もある。その一つがスケートボードだ。

スケートボードには街中を滑るようなコースで行われる「ストリート」と、くぼ地状の複雑なコースで技を競う「パーク」の2種目がある。前者はその名のとおり、ストリートカルチャーが色濃く反映され、会場がフェスティバルのような雰囲気に包まれることも注目点の一つとなっている。

ストリートは街中にあるような階段や手すり、ベンチなどを模した「セクション」と呼ばれる構造物が設置されたコースで行われる。選手たちは縁石の上などに自分のボードの「デッキ」という板の部分を当てて滑る「スライド」や、デッキを回転させる「フリップ」、手を使わずにボードとともにジャンプを繰り出す「オーリー」など、バランスコントロールが不可欠となる高度な回転技を次々と披露する。技の難易度やルーティン、スピード、オリジナリティなどが総合的に採点され、その得点を競うことになる。

記念すべき初となるオリンピックへの出場権を獲得するためには、国際舞台で存在感を示す必要がある。2019年の6月から7月にバルセロナで開催予定の世界選手権で上位3名、そして2019年1月から2020年5月末までに実施される5つの大会における結果を反映した世界ランキングの上位16名に食い込めば、東京五輪の出場が内定。開催国である日本の場合、日本人のうち世界ランキングで最上位の選手が開催国枠として出場権を手にできる予定だ。

堀米雄斗と池田大亮、強豪アメリカに挑む若き2人のサムライ

スケートボードの強豪国として知られるのは、やはり発祥の地であるアメリカだ。BMXなどのスポーツとともに文化として根づき、数多くのプロ選手も活躍している。

東京五輪をめざすアメリカ勢として大きな注目を集めているのは、冬季オリンピックで3つの金メダルを獲得してきたショーン・ホワイトだ。プロスノーボーダーであり、ハーフパイプ界のレジェンドとしてその名をとどろかせたが、十代のころからスケートボードにも親しんでいた。スノーボードとスケードボードは求められるスキルに似た部分がある。東京五輪での採用を受けて、今度はスケーターとして夏季オリンピック出場を狙う、と自身のSNSで発表して世界中の話題をさらってみせた。

アメリカ以外では、スペインやフランス、ブラジルやオーストラリアの選手たちが近年躍進を見せているが、選手は二十歳前後が多い。日本の競技年齢も世界各国と同様に非常に若く、しかもプロとして活躍する選手もいる。2018年5月、世界最高峰のプロリーグ「ストリートリーグ(SLS)」で日本人初優勝を成し遂げた堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと)はその筆頭で、2019年1月7日に二十歳になったばかりの実力者だ。その堀米とライバルとして幼いころから切磋琢磨してきた池田大亮(だいすけ)も2000年8月4日生まれのヤングスターとして注目を集めている。「出るからには金メダルを取りたい」と闘志を燃やす池田は堀米に続き、2018年11月にSLSへの挑戦権を獲得してオリンピック出場に大きく前進した。

2018年夏にインドネシアで行われたアジア競技大会で金メダルを獲得した池慧野巨(いけ・けやき)も注目株だ。2001年4月29日生まれの17歳は、2019年1月開催の世界選手権代表に選出されており、オリンピック出場を手繰り寄せる可能性が高い。冬季オリンピックで2大会連続銀メダリストとなった平野歩夢(あゆむ)も話題を呼んでいる。前述のホワイトのように、スノーボードをスケートボードに変えての夏季オリンピック出場を狙っている。

日本の女子勢で指折りの存在感を見せているのは伊佐風椰(いさ・かや)だ。2001年5月23日生まれの現役高校生ながら、2018年5月の日本選手権で優勝を果たすと、3カ月後のアジア競技大会では銀メダルを獲得した。2019年1月開催の世界選手権代表にも選出。ストリートもパークも高いレベルでこなす技巧派スケートボーダーとして高い評価を得ている。

「音楽フェス」のような心地よい一体感が会場を包む

2020年東京五輪に置けるスケートボードのストリートは、東京都江東区の有明アーバンスポーツパークにて、2020年7月26日(金)の9時から男子決勝、翌27日(土)の9時から女子決勝が行われる。

スケートボードがオリンピックに初採用された背景には、国際オリンピック連盟の「若者をより多く取り込みたい」という狙いがある。先述のとおり、スケートボードは現在進行形のカルチャー的な要素が強い。BGMが流れる開放的な空気感のなかで競技が行われることがほとんどで、これまでのオリンピックにはなかった新たな雰囲気が生まれると見込まれる。

軽快な音楽とともに、舞うように選手たちは華麗な技の数々を披露する。それに呼応するように、観客も音に身を任せながら一つひとつのプレーに歓声をあげたり、声援を送ったりする。「音楽フェス」や「野外フェス」のような心地よい一体感や熱狂が会場を包むと予想される。流行のファッションやカルチャーを取り込んだスケートボードが、オリンピックという由緒ある伝統の舞台に新しい風を吹き込む。

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