【東京オリンピック出場枠争い】サッカー:開催国の日本と6大陸の代表国が世界王座をかけて激突...久保建英の東京五輪出場は? 

男女とも全出場国が決定

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
久保建英は18歳ながらA代表で臨んだコパ・アメリカでも存在感を発揮。ただし、移籍決定が東京五輪出場への障害になりそうだ

オリンピックにおける男子サッカー競技は、ワールドカップ(W杯)の歴史よりも古く、1900年パリ大会から行われている。バルセロナ五輪以降は、23歳以下の若手の登竜門として位置付けられてきた。一方、女子は1996年アトランタ五輪で採用され、年齢制限がないことから、澤穂希らが女子サッカーだけでなく、オリンピック日本選手団の顔役のひとりとして長く活躍した。東京五輪サッカーの出場枠や出場資格などの基本ルールをおさらいしておこう。

男子は16チーム、女子は12チームが出場

年齢制限のあるオリンピックの男子サッカー競技において、東京五輪の出場資格を得られるのは原則的に1997年1月1日以降に生まれた選手に限られる。

1996年のアトランタ五輪以降、男子サッカーの各出場国にのみ、24歳以上の選手が出場できる「オーバーエイジ枠」が3名ずつ設けられている。ただし、必ずしも使用しなければならないわけでなく、判断は各国に委ねられている。本大会に登録できる選手数は18名と定められており、当然、オーバーエイジの3選手もこのなかに含まれる。

出場枠は開催国枠が一つ。そこに世界6大陸の予選を勝ち抜いたチームを加えた計16枠となる。詳しい内訳は以下のとおり

男子サッカー出場枠:計16枠

  • アジアサッカー連盟(AFC):4枠/①開催国:1枠、②AFC U-23選手権:3枠
  • アフリカサッカー連盟(CAF):3枠/U-23アフリカネイションズカップ
  • 北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF):2枠/北中米カリブ海予選
  • 南米サッカー連盟(CONMEBOL):2枠/南米予選
  • オセアニアサッカー連盟(OFC):1枠/オセアニア予選
  • ヨーロッパサッカー連盟(UEFA):4枠/ヨーロッパ予選

男子サッカー東京オリンピック出場国(3月29日確定)

  • 日本(開催国)
  • フランス(ヨーロッパ)
  • ドイツ(ヨーロッパ)
  • ルーマニア(ヨーロッパ)
  • スペイン(ヨーロッパ)
  • ニュージーランド(オセアニア)
  • エジプト(アフリカ)
  • コートジボワール(アフリカ)
  • 南アフリカ(アフリカ)
  • サウジアラビア(アジア)
  • 韓国(アジア)
  • オーストラリア(アジア)
  • アルゼンチン(南米)
  • ブラジル(南米)
  • メキシコ(北中米)
  • ホンジュラス(北中米)

一方の女子は特に年齢制限は定められていない。各国がフルメンバーをそろえて戦うため、W杯に並んで重要視される国際大会となっている。女子も開催国枠が設けられており、出場枠の内訳は下記のとおり。

女子サッカー出場枠:計12枠

  • アジアサッカー連盟(AFC):3枠/①開催国:1枠、②アジア予選:2枠
  • アフリカサッカー連盟(CAF):1.5枠/アフリカ予選(5次予選で1位となったチームが出場権獲得、2位は2018女子コパ・アメリカ準優勝のチリとのプレーオフへ)
  • 北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF):2枠/北中米カリブ海予選
  • 南米サッカー連盟(CONMEBOL):1.5枠/2018女子コパ・アメリカ(優勝国が出場権獲得、準優勝はアフリカ予選2位とのプレーオフへ)
  • オセアニアサッカー連盟(OFC):1枠/2018 OFC女子ネイションズカップ(優勝国が出場権獲得)
  • ヨーロッパサッカー連盟(UEFA):3枠/2019 FIFA女子ワールドカップ(東京五輪にはイギリス女子代表として参加する可能性が高く、その場合はイングランド代表の成績を反映)

女子サッカー東京オリンピック出場国(4月14日確定)

  • 日本(開催国)
  • ブラジル(南米)
  • チリ(南米)
  • 中国(アジア)
  • オーストラリア(アジア)
  • ニュージーランド(オセアニア)
  • イギリス(ヨーロッパ)
  • オランダ(ヨーロッパ)
  • スウェーデン(ヨーロッパ)
  • アメリカ(北中米カリブ)
  • カナダ(北中米カリブ)

サッカー日本の「東京五輪世代」は久保建英などタレントが豊富

日本は男女ともに開催国枠で出場権を得ており、強化のために十分な期間を与えられている。とりわけ「東京五輪世代」と呼ばれる男子U−23代表は、かつてない豪華メンバーでかねてから注目を浴びてきた。

なかでも圧倒的な存在感を誇るのが2019年6月にスペインの名門レアル・マドリードへの加入を発表した久保建英(たけふさ)だ。

2001年生まれで2019年6月4日に18歳になったばかりの久保は本来、世代としては一つ下ながら、若さゆえの青さを全く感じさせることなく、A代表として招集されたブラジル開催のコパ・アメリカでも堂々としたプレーを披露。東京五輪での活躍が期待される。

ただし、その久保の本大会出場に暗雲が立ち込めている。久保を獲得したレアル・マドリードが招集を拒否する可能性も浮上しているという報道もあるからだ。

オリンピック・サッカー競技の代表招集には強制力がなく、最終的な決断は日本サッカー協会とクラブの交渉に委ねられる。事実、リオ五輪では、当時スイスのヤングボーイズに所属していた久保裕也が、クラブ側の派遣拒否によって、大会直前に出場できなくなった例もあるだけに、最後まで油断はできない。

もっとも、「東京五輪世代」には久保建英のほかにもタレントがそろっている。この世代の背番号10を背負うMF三好康児(横浜F・マリノス)のほか、海外で頭角を現し、A代表でも中心選手となっているアタッカーの堂安律(フローニンゲン/オランダ)、DF冨安健洋(シント・トロイデン/ベルギー)、2016年からヨーロッパでプレーするチャンスメーカーの伊藤達哉(ハンブルガー/ドイツ)など、すでに日本トップレベルの能力を誇る選手も多い。

女子は、2019年6月の女子W杯フランス大会でのプレー次第となるものの、おそらくW杯のメンバーを中心としたチーム構成となっていくと見られる。

チームをけん引する岩渕真奈(INAC神戸)は、2011年のW杯優勝で巻き起こった「なでしこブーム」の再来をめざす意味でも、地元開催の東京五輪に懸ける思いが強いと明かしたことがある。2020年3月には海外遠征で強豪国と戦うプランも検討されており、万全の準備を整えたうえで本番に臨む意向だ。

ムバッペやドンナルンマら若手スターの出場に期待

2016年リオデジャネイロでの戦いは、男子が開催国ブラジル、女子はドイツの優勝で幕を閉じた。2020年の東京五輪でも、これらの強豪国が力を発揮する可能性は高い。

男子は6月24日時点で日本以外の出場国は決定していないものの、世界には23歳以下でもすでにビッグクラブの中心としてプレーするスターも多く、東京で彼らのプレーを見たいと願うサッカーファンも多いはずだ。2018年のロシアW杯で驚異の活躍を見せた「フランスの至宝」キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)、弱冠20歳ながらミランのゴールマウスに君臨するジャンルイジ・ドンナルンマ、レアル・マドリードが約56億円もの大金を投じて獲得したブラジルのヴィニシウス・ジュニオールなど、枚挙にいとまがない。

一方の女子では前述のとおり、ブラジルとニュージーランドが本大会への切符を手にしている。

2019年3月発表のFIFA女子ランクで10位につけるブラジルは、ベスト4以上を5回経験。一足早く出場を決められたアドバンテージを生かせば、メダル獲得も十分に狙えるだろう。FIFAランク19位のニュージーランドは2008年北京五輪以降、4大会連続の出場を決めた。2018年5月には、ニュージーランドサッカー協会が「女子代表の賞金、報酬を男子と同等にした」ことも発表しており、国内における女子サッカーの地位向上という後押しが、本大会での勢いにつながる可能性も高い。

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