肩に違和感があるものの、2度目の全豪制覇を狙う大坂
大坂なおみ(WTAシングルスランキング3位、2月1日付け、以下同)が、2月8日に開幕するテニス4大メジャーであるグランドスラムの初戦・オーストラリアンオープン(以下全豪OP)に臨む。
大坂にとって、全豪OPは、2019年大会で日本人として初めて女子シングルスで優勝し、さらにアジア人として初めて世界ランキングナンバーワンに到達した思い出の場所だ。すでにグランドスラムタイトルを3個獲得し、世界ナンバーワンにもなった経験がある大坂は、現在のモチベーションを次のように語っている。
「自分が現役である限り、できるだけいいプレーをしたいです。自分のテニスキャリアがものすごく長いとは思いませんけど。もちろんすべての大会で勝ちたいです。みんながグランドスラムに向けてギアを上げていきますが、自分もそうでありたいです。自分が現役の間は、いい時間を過ごしていきたいですね。それが私のモチベーションと言えるのではないでしょうか」
また、まだ優勝したことのないグランドスラムであるローランギャロス(全仏OP)とウィンブルドンの初優勝にも意欲を見せる。この2つを制することは、大坂のキャリアグランドスラム(テニス4大メジャー全制覇)達成を意味する。キャリアグランドスラムは、女子テニスで過去に10人しか達成したことがないとてつもない偉業だ。
「もちろんフレンチ(全仏OP)とウィンブルドンで優勝したいです。成し遂げていないことは達成したいのです」
コロナ禍で2021年シーズンを迎えた大坂は、まずアデレードでのエキシビションマッチに出場するためオーストラリアへ入国した。全豪OP大会側が、オーストラリア入国者全員に、新型コロナウィルス感染症対策として14日間の検疫期間を課しているため、大坂はアデレードで14日間の隔離生活を送った。「検疫期間で食べ過ぎちゃった」と大坂は、食べることが楽しみだったと笑い、グラノーラやココナッツミルクなど毎日同じものを食べていたという。
隔離生活後、エキシビションマッチを終えた大坂はメルボルンに移動し、全豪OPと同じ会場のメルボルンパークで開催された前哨戦に出場して3試合を勝ち抜きベスト4に進出した。
だが、肩の違和感が急に再発したため準決勝を直前で棄権した。「全豪OPの前まで充分な休養が取れれば」と語る大坂の判断は賢明だろう。今回は、コロナの影響による日程変更で、前哨戦と全豪OPの日程が隙間なく続いてしまっている。大坂の照準はあくまで全豪OPであり、前哨戦で無理をする必要はない。
大坂は、全豪OP2021で、第3シードとなりドローのボトムハーフに入った。1回戦では、アナスタシア・パブリュチェンコワ(39位、ロシア)と大会初日に対戦する。対戦成績は、大坂の1勝1敗で、直近では2019年東レ パンパシフィックテニスの決勝で大坂がストレートで勝っている。
もし、大坂を含めてシード勢が順当に勝ち上がった場合、準々決勝で第8シードのビアンカ・アンドレースク(8位、カナダ)と対戦する可能性があり、大坂にとって優勝への1つのヤマになるかもしれない。前哨戦での3試合でいいプレーを披露してきた大坂は、肩に少し不安を抱えるものの、現在の自分のコンディションを踏まえながら、全豪OPに向けて次のように語った。
「グランドスラムはいつも楽しみにしています。たぶん1回戦は、とてもナーバスになるかな、いつもそうなっているし。ここ数日間試合で自分のプレーができて、大きな自信を得ることができました。私が勝っても負けても、世界は回り続けますから、楽しむべきだし、自分ができる限りのことをトライしなきゃいけない。もちろん自分がプレーするすべての試合でナーバスになるとしてもね」
果たして、大坂の2年ぶり2回目の優勝はなるのか。大会中に彼女の調子が上向いていくようであれば、間違いなく大坂は優勝候補の1人だ。
“大坂世代”が拮抗…どうなる女子の優勝争い
大坂との優勝争いが予想されるライバルは多い。特に“大坂世代”といってもいいような同世代に実力者が揃う。
23歳の大坂の最大のライバルとなるのが、アシュリー・バーティ(1位、オーストラリア、24歳)だ。2019年ローランギャロス優勝者であるバーティは、パワープレーの大坂とは対照的に、スライスを巧みに交ぜて緩急を駆使しながら戦術的なオールラウンドプレーをする。地元ファンからも母国でのグランドスラム初優勝への期待は大きい。
ディフェンディングチャンピオンのソフィア・ケニン(4位、アメリカ、22歳)は2連覇を狙う。2020年ローランギャロスでは準優勝して、グランドスラム2勝目は逃したが、俊足を駆使した読みの良いテニスは、紛れもなく世界トップレベルだ。
2019年にUSオープンで初優勝した20歳のアンドレースクは、2020年シーズンではひざのけがの回復に努めたが、パワフルなグランドストロークが復活すれば、どの選手にとっても脅威だ。
2020年ローランギャロスで、ポーランド人として初めてグランドスラムタイトルを獲得したイガ・シフィオンテク(17位、ポーランド、19歳)はまさに衝撃的だった。伸びのあるサーブで主導権を奪い、懐の深いフォアハンドでウィナーを奪うのは男子テニスを彷彿とさせる。メルボルンでも台風の目になって、優勝争いを面白くしてくれそうだ。
また、2018年ローランギャロスと2019年ウィンブルドンでの優勝経験を持つシモナ・ハレプ(2位、ルーマニア、29歳)や、ウィンブルドンで2回優勝し、2年前の全豪OPで準優勝したペトラ・クビトバ(9位、チェコ、30歳)といったベテラン勢も健在ぶりを見せたいところだ。
そして、忘れてはならないのが23回のグランドスラム優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズ(11位、アメリカ、39歳)だ。母親になって戦列に戻ってからもグランドスラム準優勝4回と素晴らしい活躍を見せており、マーガレット・コートが持つ女子史上最多グランドスラム優勝24回の大記録へ挑む。
大坂のライバルとなる“大坂世代”の選手たち、ベテラン勢、そして、セリーナ。今回の全豪OPは史上稀に見る大混戦が予想され、優勝争いも大いに盛り上がりそうで楽しみは尽きない。